旧駒寮生が教授会妨害

1時間余にわたり居座り

 旧駒場寮生ら数人が十九日午後三時半頃、定例教授会の開催を準備していた教養学部一〇二号館教授会室に押しかけた。これらの学生は教授会での発言を求めて、学生自治委員長の説得にもかかわらず、一時間余にわたって居座りを続け、教授会の準備作業を妨害した。これに対し、学部側も「容認されない」とする掲示を出し、断固とした態度で臨んでいる。

 すでに廃寮が決定した駒場寮だが、依然として旧駒場寮生を中心とする廃寮反対の運動が続けられている。教養学部側の幾度にもわたる警告にもかかわらず続けられているこの動きは、何度も学部との衝突を引き起こしてきた。

教授会妨害が行われた102号館

 過去にも一度、旧駒場寮生によって教授会の妨害が行われ問題となっている。今回の妨害行為はそれに引き続くもの。旧駒場寮生を学生自治委員長が説得しようとしたが、それに応えようとしなかったため、教授会の準備作業を妨害する形となった。

 これに対し、教養学部としても断固とした態度で臨もうとしており、二十日付で、「これは学部の議決機関の正常な運営を力により妨害するものであり、容認されない」との掲示文章を出した。最近、教養学部は、執拗に続けられる廃寮反対の動きに対して、東京地裁の執行官に駒場寮を視察させるなど、法的手段をも辞さない態度でその収拾を目指している。

<視点>

薬害エイズを考える(上)

あまりに不条理な事件

 「こんなことが世の中にあっていいのか…」「私たちが一体何をしたというのでしょうか…」。あまりの不条理さに、被害者やその家族の方々にいうべき言葉も見つからない「薬害エイズ」事件。HIV感染者に対する差別や偏見も強い中、どれだけの痛みや苦しみを味わってきただろうか。本稿では、こういった痛みを自分の痛みとしながら、今回の事件の経緯、問題を引き起こした原因、私たちのとるべき姿勢などについて考えていきたい。

一旦は検討さ れた緊急措置

 戦後最悪の薬害事件と言われる「薬害エイズ」。約千二百人もの被害者を出した六十年代の「サリドマイド薬害」を大きく上回り、千八百人にものぼる被害者を出すに至った。

 ここで、少し遡って事件の経過をたどってみよう。

 八二年七月、アメリカで血友病患者の免疫不全症例が報告され、翌八三年二月、CDC(米国防疫センター)が「血液製剤の危険性」を警告した。

 八三年五月、トラベノール社(現・バクスター社)より、厚生省の郡司篤晃氏のもとに、日本に出荷した製剤千本を回収するむね通達が届いた。非加熱製剤の原料血漿の供給者にエイズ感染者がいたことがわかったためである。

 その翌月に厚生省は「エイズ研究班」を設置。厚生省としては、危険性のある非加熱製剤の回収と、その代替品となる血液製剤の普及に向けて、迅速な対応が迫られていた。したがって、この「研究班」は、当然のことながら、血液製剤によるHIV感染の危険性を早急に確認し、厚生省がしかるべき対応をとるよう後押しするためのものだったはずである。

 事実、同年七月四日に「加熱製剤の輸入促進」が一旦検討されていたことがわかった。危険性のある非加熱製剤を、米国産の安全な加熱製剤と迅速に切り替えるために、一年以上かかる臨床試験(治験)期間を経ずに国内で出荷するという臨時措置が検討されていたのである。

不可解な突然 の方針転換

 ところが、わずか一週間後の七月十一日、「加熱製剤の超法規的措置による承認は好ましくない」という不可解な方針転換がなされた。新たに加熱製剤を国内で開発し、治験期間を経てから用いるというのである。これでは明らかに対応が遅過ぎる。

 この時、方針転換を強行させた厚生省エイズ研究班班長が、安部英氏であった。急速な加熱製剤への切り替えは、ミドリ十字社(当時・松下簾蔵社長)をはじめとする当時の製薬会社にとって大きな損益であった。また、安部氏は、自らが設立しようとしていた財団法人「血友病総合治療普及会」に、ミドリ十字社のほか、いくつかの製薬会社から多額の寄付金を集めていたことが明らかにされている。こうした調べを元に、安部氏やミドリ十字社の松下氏らが、自分たちの利益のために、HIV感染の危険への対応をわざと遅らせたのではないかという疑惑が持たれた。

 結局、国内で加熱製剤が承認されたのは二年後の八五年七月だった。その間、安全な「加熱製剤」の国内使用の承認や、製法が古く不便な面もあるが格段に安全な「クリオ製剤」の使用を求める声が厚生省に相次いでいたという。しかし、それらはすべて一蹴された。その一方、非加熱製剤の販売はむしろ促進される方向にあり、被害の拡大を大きくしたのである。

 こうして、悲惨な薬害は戦後最悪の規模に拡大するに至った。

被害者のやる せない思い

 薬害の被害者やその家族の方々に対しては、どんな慰めの言葉も空しく感じられるほど、あまりに不条理な今回の事件である。被害者や家族の方たちは一様に、「こんなことが世の中にあっていいのか…」「私たちが一体何をしたというのでしょうか…」と、絶望や激しい怒りを胸に、やるせない日々を送っていることだろう。

 さらには、HIV感染者に対する差別や偏見も、こうした人々の苦しみを増し加えた。怒りや恨みを表したくても、表すことすらできない苦しみ…。この世の中の不条理さを讒訴し呪いたい心境だろう。

 人類の歴史には、こういった憤まんやる方ない不条理の中、亡くなっていった数多くの方々がいる。戦時中に日本によって苦い思いを味わされたアジア諸国の方々の多くもそうであった。中でも、「従軍慰安婦」として強制的に貞操を奪われた韓国の十代の女性たちの心境は察するにあまりある。その数は十数万人にものぼると言われる。当時、朝鮮半島は「貞操を奪われそうになったら自分の喉を刺しなさい」とナイフを持たされるほどに貞操観念の強い儒教社会であった。それゆえに、貞操を奪われた彼女たちの精神的打撃は想像を絶するものであった。さらに、そのような社会ゆえに、従軍慰安婦であったことを公言できず、戦後も故郷に帰ることすらできなかったのである。そして、絶望や激しい怒りを胸に秘めたまま、ひっそりと身を隠しながら多くの方々が亡くなっていった。薬害エイズの被害者とも通じる、不遇の生涯である。

責任回避でき ない深刻な罪

 こういった方々の“無念”は、単に土下座し謝罪したからといって晴れるようなものではない。日本人的に「水に流す」ことのできない深刻な“罪”なのである。以前、戦後四十周年にあたり、ドイツのヴァイツゼッカー大統領は次のように演説した。「過去に目を閉ざすものは、結局のところ、現在にも盲目になる」と。敬虔なクリスチャンである大統領は、ナチスの犯した罪を、宗教的な罪の次元で捉えていた。そして、それを心に刻み、深く悔い改めるようなその演説は、世界中に感銘を与えた。

 今回の事件当事者は、憤まんやる方ない憎悪や恨みを二千人分も束ねるほどの“罪”を犯したということを深く自覚せねばなるまい。そして、それを深く悔い改め、二度と同じような過ちを繰り返さない決意を表明し、実行する必要があるだろう。危険性を知りながらも、自分の立場や利益を優先させ、適切な危機回避措置を取らなかった『不作為』。それゆえに、二度と取り戻すことのできない、貴い生命を奪ってしまった事実。決して責任回避して済まされる問題ではない。

(つづく)
(S・S、F・Y)

  

中国社会科学研究会

定例研究会を開催

インフレについて語る

 中国社会科学研究会の定例研究会が二十日、港区赤坂にある国際文化会館別館セミナーC室で行われた。これは中国の留学生や中国から研究にきている人々が参加しているもの。

 この研究会で、本学経済学研究科博士課程三年の潘斌さんが、「現代中国のインフレーション研究」と題し、インフレの仕組み、インフレの解決方法など、中国語で発表を行った。

 発表の中で潘さんは、「まず、インフレーションを通貨価値との関連で捉えるべきことを強調したい」。「インフレーションを『貨幣(人民元)の事実上の価格基準の引き下げに伴う物価水準の持続的上昇』と定義したい。ここで明らかなように、インフレーションを単なる物価の上昇ではなく、持続的つまりある程度の長期性を持つものとして把握することと、しかも貨幣の価値との関連で、価格標準の事実上の切り下げによる貨幣価値の低下を反映すると見なすことにこの定義の特徴がある」と述べた。

 約二時間ほど潘さんの発表があり、約五分ほどの休憩。その後、潘さんの発表に対して、様々に質疑応答、論議が熱く交わされ、予定の九時を三十分ほど過ぎ、定例会が終了した。

大学院研究科を新設

コンピューター科学専門に

 本学は、コンピューター科学専門の大学院研究科を新設する方針だ。理学部情報科、工学部計数工学科など関係学科の大学院を集めて構成する。

 本学の大学院の構成は基本的に学部に沿った形になっており、コンピューター科学も大学院は理学系と工学系に分離し、総合的な取り組みができてこなかった。新たな研究科はこの反省から、計算機の設計や知識処理などコンピューターの研究課題を総合的に扱うという。

 設置場所は関連分野の研究者の多い本郷キャンパス内にする予定。ただ、本学は柏に第三キャンパスの建設を構想しており、新しい研究科を柏に置くことを決めているだけに、コンピューター科学の研究科を例外扱いにすることに反発する声も一部にあるという。

六大学野球開幕

法大に勝ち点を献上

 東京六大学野球秋季リーグが九月十五日、神宮球場で開幕した。本学の初戦の相手は連覇を目指す法大。

 一回戦、東大は真木の前に4安打、13三振、二回戦、3安打、10三振と打線が振るわず、二連敗し、勝ち点を献上した。

一回戦(九月十五日)

   
法大
東大

勝 真木 敗 氏家

 東大は、法大に8盗塁と足を絡めた攻撃で揺さぶられ、効果的に得点を許した。また、東大打線は、法大の真木投手の前に、4安打、13三振と完封された。

二回戦(九月十六日)

   
東大
法大 ×

勝 浜田 敗 遠藤

 東大は一回、法大に先制を許したが、三回に逆転。しかし、五回に法大の三島の適時三塁打など3長打で再逆転された。

 東大打線は、3安打、10三振と、振るわなかった。

先端研が一般公開

立花、野口教授らが講演

 本学先端科学技術研究センターと同気候システム研究センター、同国際産学共同研究センターは十月四、五日、研究所を一般公開する。脳や半導体技術、技術論まで各センターで行われている研究内容を紹介する。教授陣による講演も予定され、立花隆客員教授は「インターネットはグローバルブレイン」、野口悠紀夫教授は「一九四〇年体制について」と題してそれぞれ講演を行う。入場は無料。問い合せは先端研技術研究センター(〇三−三四八一−四四〇〇)まで。

コラム・淡青手帳

 最近、思うようになったことがある。人間の存在は、それ自体が奇跡であると▼理由は二つある。まずは、宇宙論の話である。最新の物理学の知見によると、宇宙の物理定数は、目も眩むばかりの絶妙さで定まっているからこそ、宇宙が現在ある姿に存在し得たという。少しでも定数の値がずれていたら、星など存在せず空虚な空間だけが広がる宇宙か、一瞬にして寿命が尽きてしまう宇宙になっていた。この宇宙が存在していることは、奇跡に等しい▼もう一つは、生命の仕組みの見事さだ。地球の生命は、DNAによる遺伝を行っている。この遺伝は非常に正確で、コピーのエラーが生じる確率は十億の塩基につき一塩基であるという。DNAの複製は分子レベルで見れば、単なる“化学反応”にすぎない。しかし、この巨大分子をこれほどの正確さで複製する現象がこの自然界に存在するということは、驚異であるとしかいいようがない▼ましてや人間は、肉体だけではなく、思考し、創造することのできる知性と、喜怒哀楽を備えた情、決意して何かをなすことのできる意志力をもっている。だから、私たち人間の存在は、考えれば考えるほど奇跡的なことである▼この偉大な事実の前に、人間は謙虚にならざるを得ないだろう。自分の体は自分が作ったものでもないし、この宇宙や地球を作ったのも自分ではない。いくら科学が発達しているといっても、この体を構成している細胞一つを作り出すことさえ、現代の科学はまだできないのだ。それゆえ、この生命の絶妙さを知り、人間がいかに尊い存在かを、誰もが知らなければならないだろう▼大自然から与えられたこの人生。今一度、人生の意義と価値について考え直し、大学生活を真に豊かな実りあるものとするために頑張ろうと思う。

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