淡青手帳

 明治に八十六連敗。まさに悪夢のようだ。一度ぐらいまぐれでも勝てそうなのに、二十一年間負け続けているという。
ここまで来ると何か目に見えない力に左右されていると思えてならない

三日、神宮球場まで出かけていって実際に試合を見てきた。七回までは零対零で互角の試合だった。
ところが八回の表二死一塁から適時三塁打を打たれ、一点をとられ負けてしまったのだ。
終わってみれば安打数は五本づつ、エラーもなしという全く互角の試合だった

そういえばアトランタオリンピックの時、おもしろいエピソードを聞いた。
近代五種競技で優勝したカザフスタンのパリギンの話である。
四種目を終わって彼はロシアのゼフノカについで二位だった。
そして最後の競技ランニングでもやはり二位を走っていた。
ところがゴールが近づいてもう決着が着くというところで突然猛ダッシュ、トップでゴールインして優勝してしまったのだ。
奇跡の大逆転劇である。ところが競技終了後、どこにあのような力があったのかを尋ねると彼はこう答えたという。
「二位を走っていたとき、『神様!銀メダルでも感謝します!』と祈ったら、突然力が湧き出てきた。そして気がついたらトップでゴールしていた」

開幕前、巨人圧倒的有利と言われていたプロ野球も、蓋を開けてみれば飛び出したのはヤクルトだった。
優勝候補の一角と言われていた名古屋グランパスもいまだ勝ち点がない。
やはりスポーツの世界も、実力や運を超える何らかの力に左右されているのだろうか。


1997 東大新報