――今、何が必要なのか(5)――

女子中高生 「合意」の論理で援助交際

失楽園ブームと不倫の風潮

 「失楽園」という言葉が昨年の日本の新語・流行語大賞として選ばれた。17世紀に英国のミルトンが書いた長篇叙事詩の「失楽園」のことではない。日本経済新聞に連載されていた渡辺淳一氏の小説の題名である。この小説が、映画・テレビドラマ・ラジオドラマ化され、日本の不倫ブームを増長した。
 ストーリーはこうだ。妻子ある中年男性と既婚女性が不倫に陥り、やがて家庭が崩壊していく。最後は旅行先で心中を遂げる。単なるエゴイスティックな愛がテーマだが、「絶対愛」というサブタイトルがついている。
 この失楽園ブームでわかるように、「不倫も場合によっては許される」と考える大人が増えている。そういう大人たちが作り出す無規範化の風潮の中で青少年たちは生きている。「援助交際」という現象が広がってきたのも無理からぬ話である。

女子高生の3分の1がテレクラ利用

 昨年、ベネッセ教育研究所が、東京と埼玉の公立高校の生徒、1726人に対しアンケートを行った結果、「援助交際」を1回でもしたことがある女子高生は4.4%だった。「援助交際をしよう」と「街で男性から声をかけられた」体験のある女子高生は25.2%で、4人に1人もいる。援助交際の相手と知り合うきっかけとなったのは、「テレホンクラブ」が一番多い(96年東京都調査)。このテレクラの増加が問題なのである。
 昨年10月、(財)日本PTA全国協議会が、全国の中学3年生(1778人)を対象に「子どもの社会環境についてのアンケート」を行った結果、「テレホンクラブ」「ツーショットダイヤル」に「かけたことがある」中3生は、男子は6.4%だが、女子は20.7%もあった(図)。
 高校生の場合、テレクラに1回でも電話したことがある比率は、男子10.2%、女子はなんと34.6%であった(ベネッセ教育研究所「モノグラフ・高校生vol.52援助交際」98年1月)。 
 つまり、女子中学生の5人に1人、女子高校生の3人に1人が「テレクラ利用経験あり」なのである。
 さらに、「援助交際をしている人は、誰にも迷惑をかけていないし、本人も相手もいいのだから非難すべきでない」という意見について、「そう思う」は、男女とも六割近くだった(図)。
 これを見ても規範意識がないことがよく分かる。

性行為は「制度」→「愛」→「合意」と変化

 性教育を進めている教師の団体「東京都幼・小・中・高校性教育研究会」の調査(96年)によると、東京都内の高校生3213人を対象に質問したところ、性交経験がある高校3年生は男子で28.6%、女子で34.0%であることが分かった。かなり高い比率だが、ここ数年で急上昇しているという。性倫理がなくなり、性の自由化が恐ろしい勢いで進んでいるのである。
 性倫理の歴史的変遷について、中央大学の矢島正見教授によると、歴史的になされてきた性的行為のコントロールは、「制度」から「愛」、そして「合意」へと変化してきたという。つまり、かつては結婚制度が婚前交渉と婚姻外性関係を抑制してきたが、「結婚前提ならばよい」「結婚前提でなくても、愛し合っていればよい」という制度の無効化がなされるようになった。さらには、「互いに納得した上なら、誰とでもセックスしてもよい」という合意による性関係が肯定されるようになったというのである。
 このような「合意」の論理で女子中高生たちは援助交際も躊躇なく行っているのである。彼女たちは、「欲しいものを手に入れたい。そのためにお金が必要だ。しかし、まじめなバイトはばかばかしい。だから、自分を売って援助してもらおう」と、単純に考え実行しているのだ。
 援助交際という無規範な性行動が自分の将来を台なしにするということが分からずにいるのである。

責任はまず大人たちにあり!

  ほとんどの青少年たちは今を楽しむことしか関心がない。それも、「お金」「モノ」「性」などの欲望を満たすことが第一になっている。享楽主義であり、現在指向である。将来のために努力するという未来指向的な人は少ない。
 しかし、この青少年たちを大人たちは責めることはできない。不倫や離婚が当たり前の日本を作ってしまったのは大人たちなのだから。
 まず、大人たちが自らの性行動を律することが絶対に必要である。