今、防災について(19)

帰宅難民のサポートシステム必要

 昨年、東京都防災会議は南関東直下型地震の被害想定を実施している。8月29日8時46分東京湾北部を震源とするM5.1の地震が発生した。これにより震度4を記録した地域が広範囲に点在した。東京を中心として首都圏は大正関東大地震以後地学的には平穏な時代が続いてきたが、1980年代に入り震度5の地震が発生したりしている。1993年以降になると、M4を越える地震の発生が散発するようになってきており、29日の地震はM5代を記録するという事態となった。南関東直下型地震については、昨年8月11日に地震予知連絡会から警告が発せられている。
 南関東直下型地震の被害想定では370万人を超える帰宅難民が発生するとされた。「兵庫県南部地震」では早朝に発生し、家族が殆ど在宅の時であったので帰宅難民という問題は起きなかった。9月5日神奈川県民サポートセンターで神奈川災害ボランティアネットワーク会議が主催し、冬の平日夕方神奈川県西部地震が発生したら、ボランティアはどう動くかというシミュレーションが実施された。この時も震源地小田原及び周辺の湯河原・箱根方面に戻れない帰宅難民が14万6千人、震源地に滞留せざるを得ない難民が1万数千人発生することが想定されていることを知った。
 このように東京から徒歩で帰宅しなければならない事態に遭遇する人達の有志が「帰宅難民の会」を結成し、平成7年より毎年1回程度徒歩の帰宅訓練を行なっている。東京都では「昼間都民対策検討委員会」で、これら帰宅難民のサポートシステムの構築を始めており帰宅ルートにある郵便局を、飲料水やトイレの提供を目的として利用するため郵政省と協定を締結し、既に1回帰宅訓練が試行された。平成7年6月18日に実施された第1回の記録によれば、都庁より各自家まで徒歩の距離は25kmから56kmに及んでいる。所要時間は50kmを超える人は概ね12時間代である。中には女性も含まれている。東京都内通行時には、郵政省との協定がされたが、行政区境界を過ぎると特別サポートのシステムはない。検討中という話も表面的にはない。
 神奈川県西部地震が発生すれば、14万6千人の大部分が徒歩で帰宅することになるのではないだろうか。また箱根・湯河原・小田原から脱出する人も1万数千人になる。通過地区の市町村等で飲料水・トイレ等を提供するという支援計画はできていない。帰宅難民が通過する沿道では飲料水・トイレ・炊き出し提供等の表示をして帰宅難民をサポートする体制を早く構築しておく必要がある。現在ボランティア活動は被災地へ入り、避難場所等において避難民に対して炊き出しや物資の配給をするというボランティア活動が「兵庫県南部地震」で展開されたこともあリ、主流のように考えられている。しかしながら、平日の昼間に大地震が発生すれば、必ず徒歩で帰宅するという難民が発生する。帰宅難民が通る沿道ではさほど被害が大きくなければ、以上のような難民サポ―トが出来るはずである。行政・市民(自治会・町内会・企業・市民・ボランティアグループ)が連携して、首都圏では広範囲に難民サポートボランティア・ネットワークを構築すべきものと考えられる。

<都市防災研究会 代表補佐 大間知倫(おおまちひとし)S33年経卒 TEL045-844-2885>