土井隆雄氏が活動報告会

日本人初 船外活動の体験語る

宇宙での体験を語る土井隆雄氏

 日本人で初めて宇宙での船外活動をした宇宙飛行士の土井隆雄氏の活動報告会が15日、本郷キャンパス法文2号館31番教室で行われた。土井氏は、スペースシャトルの中の様子や宇宙からとった地球の写真などをスライドで紹介しながら、船外活動成功までの経緯や宇宙での生活について報告を行った。当日は将来宇宙飛行士を目指す学生や、工学系の学生多くが集まり、活発な質疑応答がなされた。

 土井隆雄氏は本学大学院工学系研究科航空工学専攻出身で、報告会は航空宇宙工学専攻が主催し、土井氏の母校訪問を機に実現したもの。
 報告会は航空宇宙工学専攻の久保田弘敏教授の司会で始まった。まず専攻長の長島利夫教授が開会のあいさつとして、今回の報告会開催の経緯と、本学OBで現在宇宙開発事業団で訓練中の野口聡一宇宙飛行士のメッセージを紹介した。
 続いて宇宙開発事業団の副理事長・五代富文氏が壇上に上がり、宇宙開発事業団の現状と将来の展望を語った。次に後半の司会を担当する新領域創成科学研究科の河野通方教授が、土井氏のプロフィールを紹介した。
 この後土井氏が登壇し、宇宙での活動の報告を行った。スライドを使って宇宙での生活の様子、クルーの紹介、船外活動でスパルタン衛星を捕獲するまでの経緯を、わかりやすく語った。当日は航空宇宙工学専攻の学生が多く参加していたこともあって、ときおり専門的な数式を交えて、スパルタン衛星へのランデヴーの方法や地球への帰還の方法などを説明した。
 土井氏の報告の後、質疑応答の場が持たれたが、宇宙工学を専攻する学生や一般の参加者から「宇宙から日本が見えたか?」「宇宙の放射線の量は?」「宇宙のゴミに対してはどう対応したのか?」など活発な質問が出された。中には、「宇宙活動の前と後で物の考え方は変化したか? 神の存在を実感したか?」という質問もあった。この質問に対して土井氏は、「特定の宗教を信じているわけではないが、私たちはある目的で存在していると私は信じています」と応対した。また、「宇宙飛行士になるのに一番必要なことは何か?」の問いに対しては、「まず宇宙に行きたい≠ニ思うことです。そして何か得意な分野を作ってそれで一流になることです」と答えた。
 最後は閉会のあいさつとして、森下悦生教授が音頭をとり、土井氏の偉業を称えた万歳三唱を参加者全員が行い、報告会は盛り上がりのうちに幕を閉じた。終了後も希望者は安田講堂前に集まって、土井氏とともに記念撮影を行った。 


第10回オープンハウス開催

駒場先端研で学術講演会

 第10回オープンハウスが今月16、17の両日にわたって、駒場の東京大学先端科学技術研究センター13号館で開催された。先端科学技術研究センターと気候システム研究センター、国際・産学共同研究センターが共同で学術講演会を行い、計7人の教授がそれぞれ1時間ずつ講演した。
 1日目は、まず中島映至(てるゆき)・気候システム研究センター教授が講演した。中島教授のテーマは「大気微粒子と気候」。OHPを使いながら、微粒子が大気中で広範囲にわたって覆っていることなどを衛星画像によって示した。また、エルニーニョや温暖化についてもわかりやすく説明した。
 2人目は満渕邦彦・国際・産学共同研究センター教授。満渕教授は本学医学部と工学部を卒業しており、専門は医用工学で、この日は「神経系マン・マシンインターフェース ―生体と機械系の融合と調和を目指して―」というテーマで講演した。人工心臓について詳しく語り、結論的には「次世代の人工臓器においては、生体と同時に、神経系や液性系の情報を臓器機能に反映しうる制御系の開発は避けて通れない」と話した。
 3人目は、安念潤司・先端科学技術研究センター客員教授。安念教授は弁護士で成蹊大学法学部教授でもある。同教授のテーマは「科学技術研究にとって法律家はいかなる存在か ―サポーターか、邪魔者か、それともただの見物人か―」。法律という一般人には理解しにくい内容についてだったが、軽妙な語り口でユーモラスにスピーチした。同教授は最近の遺伝子組み替えや人工授精・代理母の問題にも言及。法律家の発想・思考法を簡明に説明した。テーマの答として「ほとんどが見物人だが、邪魔者でもあるだろう。また、著作権や特許に関してはサポーターでもある」と結んだ。
 2日目は、4人の教授が講演した。まず、元大蔵事務次官の小川是(ただし)・先端科学技術研究センター・技術アセスメント分野客員教授。小川教授は「取り除こう。日本の明日の妨げを」と題し、「平均社会の実現」「活力の喪失」「妨げを取り除こう」「やる気を取り戻そう」と項目を挙げながら、最後は「激しく変化する社会への対応力や自分で生きる力を養おう」と締めくくった。
 2人目は、工藤徹一・生産技術研究所教授で「ソフト化学の新展開 ―材料創成のソフトパス―」というタイトルで語った。機能材料の合成について研究内容をわかりやすく発表した。
 3番目に大西隆・先端科学技術研究センター教授が登壇し、「歴史の都市、明日の都市」と題して講演した。内容は、都市計画の話を中心にテレワークや今話題のSOHOにまで及んだ。
 最後に講演したのは、橋本和仁・先端科学技術研究センター教授。橋本教授は「未来を拓く光触媒技術」と題し、独自の光触媒研究についてOHPを使いながら語った。光触媒の研究は「植物の光合成を人工的に模倣できないか」という試みから始まったという。同教授は光触媒を「神様が残してくれた宝物ではないか」と思い研究していると語った。今では、空気清浄器やエアコンにも光触媒が使われているという。


キャンパス情報

史料編さん所で史料展覧会の開催
 史料編さん所では、次のとおり第 回史料展覧会を開催する。
▽テーマ 「入来文書」の世界
▽日時  11月13 日(金)、14日(土) 10時30分〜16時 (入場は15時30分まで)
▽場所 史料編さん所大会議室及び中会議室(2階)
▽講演会 「入来文書と薩摩渋谷氏」
 講師 山口隼正(中世史料部教授)
 11月14日午前11時より
 山上会館大会議室


 少し前、テレビで本学の女子学生がこんな話をしていた。どこかの学園祭に行った時、ある慶応生に「ボク慶応だけどキミは?」と話しかけられ、ためらっていた。すると、慶応というのがブランドだと彼は思ったのか、「いいよ、言っちゃいなよ」と催促してきたので、「東大」と答えたところ、目を丸くして、「あっ、そうなんだ」と退散していったのだそうだまたよくあるのは、アルバイト先などで話が盛り上がり、「ところで、学校どこ?」と聞かれると、「一応、東大」と「一応」を入れてしまう。こんな時は、ためらわずに大学名が言える他大生がうらやましくなるしかし、このごろは世間がそれほど東大を特別視していないように思う。某ニュースキャスターが本学入学式で「大学に入って何をしますか?」と質問し、「遊びます」と答えた男子学生に対し、「東大生もなさけないですねえ。女性の方がしっかりしていますよ」と答えたのを覚えている悪しき平等主義になり、出る杭は打たれたのか、天下の東大生の実態は「一応、東大生」になってしまっていたのだ世間の東大を見る目はかなり変わってきたようだが、日本を盛り立てていくという本学の役目は変わっていないと思う。学校名を名乗ることにさえ躊躇を覚える今日このごろだが…。