淡青手帳

第873号(2002年11月5日号)

 「出る杭は打たれる」とよくいわれるが、金融再生プランをめぐる竹中平蔵氏と自民党議員のやり取りを見ていると、やはり日本はそういう国なんだなあという実感を強くする。

 世論調査の結果を見ても、竹中支持はそれほど低くはない。むしろ高いほどである。にも関わらず、竹中氏がこうも孤立して映るのはどうしてだろうか。

 批判の根拠とされるものの一つにプラン策定プロセスの密室性がある。首相一任のもと自民党有力議員に相談なく民間人と相談して進めたという。しかし、みんなで話し合って事が進むならばそれも良いだろうが、価値観が多様化し、社会が複雑化し、情報伝達速度が高まり、意思決定の速さが重要なファクターとなった今日、話し合いは万能の意思決定手段ではない。事の性質によっては、話し合ってみんなで決めたからみんなの責任だといった連帯責任システムから、責任の所在を明確にし、結果に対する責任追及を厳密に行い、責任者を立てていくスタイルへのパラダイムシフトが求められる。

 打たれても出つづけられる強い「個」を持った杭が必要であり、出た杭を正当に評価できる、素直で公正な判断力を持った「個」が必要である。そのような強い「個」の上に、和を重んじる日本の伝統精神が合わさるならば鬼に金棒だと思うのだが…。

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