881号(2003年2月5日号)

1面主要記事

■補助金を不正流用

5年間に2252万円
医学部 堤教授

 本学は1月31日、医学部の堤治教授の研究室が、国から受け取った科学研究費補助金の一部を不正流用していたと発表した。不正流用や不適切な運用の総額は1998年からの5年間で約2250万円にのぼり、これらは研究室の運営費などにあてられていたという。本学は補助金適正化法などに基づき、堤教授の処分や研究費の返還などを検討する。

 医学部の調査委員会の調べによると、堤教授は、研究を手伝った大学院生らへの「謝金」名目で補助金を請求し、現金支給や振り込みを受けた院生12人から計約1035万円を受け取った。実際には研究を手伝っていない院生による名義貸しもあったという。また助教授や助手ら11人の非常勤職員らへの「賃金」として国から支出された補助金も提供させていた。
 これらの補助金は堤教授の口座に入れてプールしていたほか、院生らの通帳を助手が管理することで本人が自由に使えないようにしていた。これらの補助金の一部は、研究室の改装費や備品の購入などの本来とは異なる目的で処理していた。また約54万円については使途を裏付ける領収書がなかったため、私的流用については確認できなかったという。
 この問題について同日記者会見が行われた。その中で廣渡清吾副学長は「研究費の取り扱いは極めて不適切で、研究費への信頼を失墜させた」と述べた。また「堤教授の責任は重大」であるとし、今後教授会や評議会の場で国家公務員法に基づく懲戒処分や補助金の返還等について検討すると述べた。
 堤教授は委員会を通じて「私的流用はないが、研究費の運用に不適切な点があったことは深くおわびする」とのコメントを発表した。


■新専攻を設立

 情報科学から生命を研究
 新領域創成科学研究科

 新領域創成科学研究科に4月から、情報生命科学専攻が新設される。
 ゲノム研究は膨大な配列情報を産出すると同時に、バイオインフォマティクスという新しい研究分野を創出した。バイオインフォマティクスとは生物学(バイオ)に必要な情報技術を研究する(インフォマティクス)ことを目指す分野だが、この分野が情報科学に大きな影響を与えるほどの重要な学問であると認識されたのは最近のことである。バイオインフォマティクスには、生命科学やバイオ産業の効率化や支援に必要な情報技術を開発するという側面と、情報科学的な手法や考え方を用いて生命を研究するという側面があるが、情報生命科学専攻ではその後者に重点を置き、教育研究を行う。
 情報生命科学専攻は「バイオ情報科学大講座」と「バイオシステム科学大講座」からなる基幹講座と協力講座から構成される。基幹講座は2大講座5分野6研究室から成り、協力講座は2講座4研究室から成る。
 本年度の入試は修士課程、博士課程とも4月9日(火)から11日(木)にかけて行われるが、これに先立ち3月6日(木)には、弥生講堂で入試説明会が行われる。


■インフルエンザの仕組み解明

 医科研・河岡教授ら

 東京大学医科学研究所の河岡義裕教授と広島大学の藤井豊助手らは、人間の体内でインフルエンザウイルスが増殖する仕組みを解明した。インフルエンザには決定的な治療薬がないが、今回の成果を手がかりに効果の高い治療薬やワクチンを開発できる可能性があるとみている。
 研究グループは人間の培養細胞にウイルスの遺伝子であるRNA(リボ核酸)を送り込み、ウイルスがどれだけできるかを調べた。全部で八本あるRNAがひとまとまりになって細胞膜に包まれ、新たなウイルスとなることが分かった。RNAを一本でも減らすと、増殖する量が格段に少なくなった。八本のRNAが細胞膜に取り込まれるには、各RNAのうち、たんぱく質を作る情報を持つ特定部分が欠かせないことも確かめた。


■RNA切断の新技術
 特定部分の切断可能に

 先端科学技術研究センターの小宮山真教授らは、狙ったリボ核酸(RNA)を切断して働きを抑える手法を開発した。
 従来手法では切断できないRNAがあるが、新手法なら原理的には全種類切断できる。がん関連遺伝子を切断できるようにすれば、新しいがん治療薬になる可能性がある。遺伝子の機能解析などにも有望とみられる。
 遺伝子は細胞内でDNA(デオキシリボ核酸)の形で保存され、たんぱく質を作る際にRNAに変わる。細胞内では常時多数のRNAが存在するが、新手法なら、その中の特定種類のRNAの特定部分を切断できる。



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