淡青手帳

第883号(2003年3月5日号)

 先日、卒業論文の発表会があった。これは1年間の研究成果を発表する場であると同時に、大学生活の締めくくりとなるものでもある。

 持ち時間は発表10分と質疑応答5分の計15分であった。10分という時間は1年の研究成果を発表するには短すぎるのだが、その時間内でそれぞれが工夫を凝らした発表を行った。緊張を隠せずに手が震えている者もいれば、何度も発表を行ったのだろう、やけに慣れた雰囲気の者もいた。しかし彼らは皆、いつもの「友人」ではなく、たどたどしくはあるが、その姿はまさしく「研究者」であった。そしてその目はいつになく輝いていた。

 卒業論文は、院に進学する者にとってはその練習・準備段階として、全てが良き経験となる。また大学院に進学しない者にとっても、あるひとつのテーマを絞り、それを徹底的に調査すること、自らの意見を主張するために論理的に文章を書くことなど、社会に出てから生かされるものでもある。

 しかし何よりも大きいのは、卒業論文を書き終えた達成感とそれに伴う自信ではないだろうか。皆がやけに大人びて見えたのは、見慣れないスーツを着ていたからだけではない。卒論を通した様々な経験によって精神的に一回りも二回りも成長したが故であったのだろう。

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