淡青手帳

第885号(2003年4月5日号)

 年度末の春休みの期間は、多くの若者が巣立っていった。海外に留学するものもいれば、就職するものも、新しい自分の可能性を求めて、それぞれの道を出発した。同時にこの期間、世界は激動の時がすぎた。米国とイラクの戦争がついに開戦し、謎の伝染病が広まった。中国・広東省と香港から、急速に世界に伝播しつつある肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)だ。

 SARSの正体は完全に解明されていないが、発熱やせき、呼吸困難など風邪の症状が特徴だ。感染ルートがまだはっきりしていないため今は慎重に海外への旅行を自粛すべきだろう。

 しかし、暗いニュースばかりでもない。プロ野球が開幕し、今年は昨年巨人からヤンキースに入団した松井秀喜選手の活躍が毎日のように報道されている。まだ期待のホームランは出ていないが、開幕の第一打席でいきなりタイムリーヒットを放って期待通りの活躍をしている。松井選手のいい所は、実力ももちろんあるのだが、決しておごらないところにあり、とても誠実でまじめなことではないか。

 熾烈な入試戦線を勝ち抜いた新入生を迎えて、我々も東京大学に入った誇りを忘れてはいけないのと同時に、松井選手のように決しておごることなく新しい目的を持って新年度を出発したい。

885号記事一覧へ