淡青手帳

第901号(2003年10月25日号)

 先日、九十九里浜へ行った。雲ひとつない晴天の下、多くのサーファーたちが波乗りを楽しんでいた。彼らの背景には果てしない地平線があり、波打つ海岸もまた、果てしなく続いているようだった。

 九十九里浜は、平安末期、八幡太郎源義家が陸奥からの帰途、刑部岬から六町一里ごとに矢を立てて里程を計測したところ、矢の数が99本になったことに由来するという。しかし九十九里浜は実際に99里もあるのだろうか

 「一里」は約4qであるため、名前の通りであるならば、その距離は約396qとなる。これは東京−名古屋間の距離に相当する。約52qである九十九里浜は、「十三里浜」という名称が正しいことになる

 ただ九十九里浜という地名は正しいという説もある。「一里」は明治初期に定め直された長さで、それ以前の一里とは約525mだったという。九十九里浜の実際の距離を99で割るとおよそ525mであることから、八幡太郎の計測は正しく、九十九里浜という名称もまた正しいことになる

 夏には多くの海水浴場として賑わう九十九里浜。日本で知らない人はいないほど、その名は広まっている。実際の距離は別にして、やはり「十三里浜」より「九十九里浜」の方が、あの海岸の名称にしっくりくる。

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