第907号(2003年12月25日号) |
O.ヘンリーの『賢者の贈り物』という物語がある。物語の中で、妻は夫にクリスマスの贈り物をするために自慢の美しい髪を、夫は妻に贈り物をするために自慢の金時計を売る。そして妻は夫の時計につけられるプラチナの鎖を、夫は妻の髪を梳くための美しい櫛を贈るのだ。自慢の時計と髪を失った二人にとって、お互いの贈り物は役には立たない。けれど、二人は役には立たずとも、何よりもすばらしい贈り物をしあったのだ。 クリスマスはキリストの誕生日としてよく知られているが、本当に12月25日であったかは定かでない。この日にクリスマスが定められたのは、実はミスラ教など、当時の多民族の祭りの日であったからだとか。異教徒との対立や摩擦を生まずにキリスト教が浸透するように、というコンスタンティヌス帝と教会の思惑があったようだ。このようにして互いに異なる宗教と文化を持った人々が同じ日を祝うようになり、クリスマスはいまや世界的な祝祭となったとは、なんとも素敵な話ではないか。 「クリスマス停戦」という言葉がある。毎日がクリスマスなら、戦争は起こらないのだろうか。 クリスマスは多くの人にとって特別な一日。ほんの少し騙されて、魔法にかかってみるのもいいかもしれない。
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