公開講座 INFORMATION 10月26日分

現代幸福論

「地球環境時代の贅沢」 月尾嘉男 工学系研究科教授

・「持続への道筋」向かう3段階

 現在では、世界を平均すると一人一日二十五万`i程度を消費しているが、問題はエネルギーの源泉が石炭や石油という有限な化石燃料に依存していることである。現在のような傾向で消費していけば、いずれは枯渇する運命にある。また、より深刻な問題は環境問題である。このままいけば地球の気温は十年毎に〇・三度上昇し、二〇二五年までに一度、二〇一〇年までに三度上昇すると予測されている。

 これまでの人類の活動は、【生活水準の向上→経済活動の発展→資源消費の増大→環境問題の拡大】という図式で表現することができる。この構造を継続していけば「破局への道筋」を突進することになるということを人類が実感するような段階に到達しつつある。

 これを解決する単純な方法は、人類の活動方向を逆転させ、【生活水準の低下→経済活動の縮小→資源消費の縮小→環境問題の解決】という構造への転換である。しかしこれは「衰退への道筋」であるとともに、受け入れがたいシナリオである。そこでその困難を打開する方向として【生活水準の向上→経済活動の拡大→資源消費の縮小→環境問題の解決】がある。これは地球もしくは人類にとっての終末を延期できる「持続への道筋」である。

 この転換を成し遂げるために三段の階段を用意する。

 第一の階段は長年の生活や仕事の様式を変更しなくてもいい技術革新によるものである。例えば電子新聞などがある。

 第二の階段は社会の構造自体を変化させていく方法である。従来の都市計画の方向であった職住分離を職住混在に転換すれば、通勤時間の減少によって生活水準は向上するとともに、インナーシティ問題なども解決しながら、エネルギー消費を減少させる一石三鳥の効果が期待される。

第三の階段は生活や仕事の様式も変化させることである。単純な事例は公共交通機関利用の促進と資源のリサイクルであるが、そのためには国民の意識変革や、社会制度の変更による促進政策も必要となる。持続への道筋への精神改革を促進させる社会制度の構築も検討する必要があるだろう。

    (講義要項より)

「美しい自然を楽しむために」 熊谷洋一 農学生命科学研究科教授

・景観計画実行する科学技術を

 日本ではじめて設立される国立公園の内容や指定の方法は、必ずしも定かではなかった。したがって設立に際して当時の専門家の間では風景の保護と利用のどちらに重点をおくかで激論が戦わされた。

 自然風景の保護と利用は観光と深く結びついて展開してきた。国立公園も制定当初は、利用に対する期待が大きく、特に国際観光が意識されていた。制定基準の中には「世界の観光客を誘致する魅力を有するものたること」とあった。

 戦後も敗戦後の景気回復の施策として観光がとりあげられた。風景の利用が推進されたのである。そして急速な自動車利用の増加は全国に観光道路の開設を促した。その結果、しばしば自然風景の保護との矛盾を生じるようになった。さらに高度成長は各地で自然風景の破壊という問題を産み出し、世論は自然保護へ傾斜していった。

 このように日本の風景の利用と保護は、時代、社会情勢のきわめて強い影響を受けてきた。また、風景に対する捉え方が主観的情緒的であったことも否めない。美しい日本の景観を将来にわたって適切に保全し利用していくためには、客観的科学的に捉え、さらに計画的に考えていかなければならない。即ち景観計画を実現する科学と技術が必要である。熊谷教授らは景観の予測手法として景観シュミレーションの開発研究にあたってきた。その課題は、複雑な自然のシュミレーション、人為的行為のシュミレーション、広い地域のシュミレーションの三点にあった。

 課題を解決していくに当たって、コンピュータと画像情報処理技術の進歩が大きく貢献した。景観シュミレーションに欠かせない複雑多量なデータの分析統合と視覚的表示の技術向上を図ることができ、極めてリアルな景観の再現が可能となってきたのである。また東大にある演習林のデータを活用することによって、自然景観のシュミレーションの精度向上が一段と進展し、その技術が将来の美しい自然景観の保全と利用を図る景観計画や景観アセスメントに応用可能となってきた。

    (講義要項より)

マルチメディア米国の旅(28)

麗澤大学教授 浦山重郎

(8)マルチメディアとゲーム機ソフト

'98年末、次世代ゲーム機戦国時代勃発

 任天堂のソフトに関して重要な事は、「これからは量より質の時代。百人の秀才より、一人の天才が必要なのである」、という山内社長の言葉だ。これもまたソフト販売本数の売上げを見れば、任天堂・エニックス・カプコン・スクウェアの独壇場であることがわかる。

4.世界一のコン   ピュータメーカー

 ところで現在、世界で最も普及したコンピュータは何であるか。NECのPC98でもIBMでもない。一位がファミコンとNES(六千万台以上)で二位がSF(計三千九百三十五万台[国内千五百七十万台、海外二千三百六十五万台])、三位がGB(約二千万台)である。もちろんハードの普及は、任天堂一社だけで達成されたものではないことは、誰の目にも明らかである。ナムコやコナミはファミコンのおかげで現在の自社ビルが建ったと言っても過言ではない。

 任天堂はファミコン時代には、「アタリショックの教訓」を盾に、サードパーティとライセンス契約を結ぶことで、ゲームソフトが市場に氾濫するのを制限してきた。そこで任天堂はサードパーティとロイヤリティ契約を結び、開発したソフトは、全て任天堂にOEM生産を委託しなければならないというシステムを作り上げたことは、前述した通りである。ここに任天堂の寡占化の大部分が隠されている。受託生産だから、仮にそのソフトがヒットせず、売れなくても任天堂はリスクを負わなくてもよい。作られたゲームカセットはソフト会社が全量を買い取ることになっている。

 ファミコンの例を示そう。中に積むROMの種類により異なるが、一本のカセットにつき、ソフト会社は任天堂に原材料費込みで約二八〇〇円を支払う。これに対して、カセットの原価は約一八〇〇円だ。つまり受託加工料はファミコンにとっての粗利に当たる。販売管理費などはほとんどないといってもよいから、大半はそのまま営業利益とみることができる。

任天堂
流通面で力強い基盤
受託生産で高品質を維持

 GBの場合は単価が安いから、任天堂の取り分が三百円から四百円程度となる。SFはGB、ファミコン以上に単価が高いので、取り分はもっと多いであろう。

 ソフトの売れ行きにかかわらず、生産を委託された数量分の手数料は確実に任天堂の懐に入る。任天堂の経常利益は千四百三十億円。この中の経常利益の約七割がソフトの受注生産と言われている。

 このシステムに関しては「任天堂はソフトを食い物にして高利益をあげている」という反発も生まれてくる。しかし、ダビング屋として、リスクなしでソフトを市場に供給できる仕組みがあるからこそ、任天堂の高収益が可能になっている。

 しかしこれが今の任天堂の独り勝ち〜一強皆弱〜の下地を作ってしまったことは否めない。もっとも、だからといってこのような任天堂の商法を批判したりするつもりは毛頭ない。このようなシステムを生み出したこと自体、任天堂の勝利であるといえるからである。ファミコンのライバル機が発売された頃から、ファミコン自体に陰りが見えはじめていた。しかしファミコンの最大のライバルはSFだった。いくらサードパーティをコントロールしても、駄作ソフトが増えはじめていたのだった。

 それを規制する意味でも任天堂はSFを投入し、再度ライセンス契約をすることで、駄作ソフトを作ってきたサードパーティを締め出そうとした。

 任天堂はソフト制作だけでなく流通面でも大きな力を持っている。任天堂の製品の流通を支えているのは、かつて花札やかるたが主力だった頃からの玩具問屋グループである「初心会」のメンバー、約七十社だ。

 古い付き合いの問屋グループだから、任天堂とはぴったり息があっている。この日本的流通システムによって、支配力は生産者である任天堂が持ち、その意を暗黙のうちに体現して初心会が流通制作を長い間代行していた。

 この問屋グループの大きさが、他のゲーム機の進出を遅らせたもう一つの要因であるといえる。このように任天堂は流通の面でも力強い基盤を持っていたのである。

 任天堂の経営戦略を要約すると次のごとくである、

@テレビゲーム専用機としての特化・“玩具”としての認識
Aハードは出来るだけ安く、ソフトで儲ける
B少なくとも一年間は、他者が絶対に真似のできないハード
Cゲームソフトを作るソフトの技術者に評価してもらえるようなハード
Dゲーム機メーカーがソフトの品質を維持し、粗製乱造をチェックする仕組みを作る “アタリショック回避のため”
Eサードパーティとロイヤリティ契約を結び、開発したソフトは、全て任天堂にOEM生産を委託しなければならないというシステム作り
F初心会による強力な流通の力

 以上のような要因のもとで任天堂がゲーム機の覇権を握っていたといえる。では九四年末に発売された、任天堂にとって今までの最大のライバルである、セガとSCEはどのようにしてこの大きな競争相手に立ち向かっているのであろうか。

       (つづく)

     (S32・法卒)

(註)

OEM:(Original equipment Manufacturing)生産・相手先商標生産。ここでは任天堂がソフトメーカーからカセットの製造注文を受けて、相手先ブランドで供給する方式。

初心会:任天堂が組織した玩具流通会社の集合体。一次卸売業者。任天堂の主力商品が花札、トランプだった頃の「ダイヤ会」がもとになっている。現在七十二の問屋からなる。任天堂と直接取引を行い、二次卸売業者(現金問屋を含む)→中小小売店という構造のもと、消費者の手へと渡っていく。

ナムコ:本社は東京・大田区。ビデオゲームのパイオニア。現在は業務用ビデオゲーム機器と娯楽施設収入、家庭用ゲームソフトが三本柱。コンピュータ・グラフィック、ゲームソフト開発力の強さで収益は安定している。にっかつを再建中。

コナミ:本社は東京・港区。神戸にも大きなビルを持っている。業務用ゲームから出発し、ファミコンブームの波に乗る。任天堂、セガ、SCE、NEC−HE向けにゲームソフトを開発・販売。子会社での大型ゲーム施設の展開など統合アミューズメントを指向。商業用LSI開発も展開。パチンコ用液晶ゲーム機が急拡大中。

赤門クロスワード NO.29

 今回はヒントが難しいかな? 頑張って挑戦してみて下さい。クロスが完成したら、二重マスメの文字をABCDEFGの順に並べると、あるイベントの名前が出てきます。それが今回の答です。(出題/O・D)

タテのカギ
1.新進党のキャッチフレーズ「日本を――から変える」
2.「猶太人」と書いて、何て読む?
3.旧石器時代末葉の人類。新人に分類され、洞穴絵画を残した
4.首領
5.昔は、ビザンチウム・コンスタンティノポリス・コンスタンチノープルとも言われた都市
8.最近は、――シート方式のテストも多いです
11.――相愛の仲
12.日本人は――と建前を使い分ける
13.古い床は――が多い、ギーギー
16.イギリスはロンドン、フランスは――

ヨコのカギ
1.民主党のキャッチフレーズ「市民が――」
4.社民党の党首、――たか子
6.「管」の訓読み
7.二年くらい前、「――の神様」という曲が流行りました
9.昔のビルマ
10.アメリカの第三十七代大統領。七四年、ウォーターゲート事件の責任を追及され、辞任した
12.巨人は東京、中日は名古屋
14.生まれた赤ちゃんが最初に入るのは――湯
15.「同情」を英語でいうと?
17.最近のねこは獲らなくなった

出題者のコメント:皆さんの考えた問題を応募して下さい。
掲載された方には、豪華賞品を差し上げます!


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