適性も選考対象に
本学医学部(理科3類、矢崎義雄学部長)は、十一月二十六日までに教授会を開き、筆記試験に偏っている現行の入試方法を抜本的に改革し、受験生全員に面接試験を導入する方針を決めた。オウム事件や薬害エイズ問題などを通じて「医の倫理」を問う声が高まっている中、改革案は医師の適性を厳しく見極め、人間味にあふれた医療人を養成するのが狙い。
医学界の頂点に立つ本学医学部の入試改革は、他大学に与える影響か大きく医学教育を根本から問い直す機会になるとみられる。今後、学内入試委員で検討し、文部省とも協議の上、早ければ平成十一年度の入試から受験生全員に面接試験が必須となる。
本学医学部(理3)は大学受験の最難関で、入試時定員は前期が八十人、後期が十人。このほか、教養学部からの進学時に理2(農学系)から約十人、理1(理工学系)から一人などの入学枠があるが、この学生らにも面接を課すことにしている。
しかし、入学枠が最大の前期試験は筆記試験だけで、「医師となるのに受験学力だけを入学の判定基準にしていいのか」と現行の入試方法を疑問視する声が強かった。このため。学部内に入試検討委員会を七月に設置し、改善索の本格検討をすすめていた。
大学医学部の入試方法については、六月に提出された文部省の「二十一世紀医学・医療懇談会」に第一次報告でも、学力偏重の弊害を指摘。今後の患者中心の医療のために、面接などによって強い動機と目的意識を持つ者を選考するよう求めていた。
本学理3の前期試験の受験者は現在、定員の約四倍に絞られている。改革案でもこの方式は踏襲される見込みで、三百人を超す面接については学力試験とは別に「面接日」を設けて対応する。
全国四十二国立大学医学部のうち、前期試験で面接試験を行っているのは十七校あるが、本学が採用することで、医学部の入試改革が一気に広まると予想される。
起工式 盛大に開催
本学柏新キャンパス起工式が、十一月十八日(月)午前十一時から、柏新キャンパス建設地内(柏市柏の葉五丁目)において、吉川総長をはじめ、鈴木、蓮旨両副学長、安岡物性研究所長、長谷川事務局長、各部局長、関係委員会委員など本学関係者のほか、井上参議院議員(元文部大臣)、桜田、松崎両衆議院議員、文部省の雨宮高等教育局長、勝山文教施設部長等の関係者、大蔵省の篠河理財局国有財産総括課国有財産監査官室長、高木千葉財務事務所長等の関係者及び島崎千葉県副知事、本多柏市長等の地元関係者など来賓約二百十人が出席し、盛大に催された。
起工式では、吉川総長から本学が柏市に新キャンパスを設置するに至った経緯や意義などとともに感謝の挨拶を述べ、引き続き、雨宮文部省高等教育局長から挨拶があった後、工事の安全と建設着工を祝い、本学関係者、来賓の代表による鍬入れが威勢よく行われた。この後、会場を柏市役所隣のプラザヘイアン柏に移し、主催者を代表して吉川総長が挨拶を述べた後、井上元文部大臣、沼田千葉県知事、江崎筑波大学長、本多柏市長からの祝辞があり、続いて、平野元総長、森元総長、有馬前総長を交えた関係者により鏡割りを行い、なごやかに歓談、柏新キャンパスの着工を祝った。
(学内広報11月25日より転載)
旧駒寮へ警告表す
十一月二十八日、教養学部は旧駒場寮への電力の供給を停止した。これは、同旧寮に違法に住み続ける学生が、再三の警告にもかかわらず、盗電行為を止めなかったために、教養学部がやむえを得ず踏み切ったもの。
駒場寮は、今年の四月一日をもって正式に廃止され、電気、ガス、水道などの供給がストップされた。しかし、その後も同寮には数十人の学生が違法に住み続けているうえ、他の建物から電気コードをひいて使用するという盗電行為を続けてきていた。
六月には、旧駒場寮に引き込んだ電気コードのドラムを、教養学部が一時預かりという形で撤去したこともあったが、同旧寮に立てこもる学生は、その後も寮の外から電気を引いて使用していた。
また、九月十日には、東京地方裁判所の執行官による「占有移転禁止の仮処分」が執行された。これは、旧駒場寮建物を占拠する学生が、明け渡しに応じずに入寮勧誘を続けるなど、違法な行為を繰り返してきたために、裁判所による法的な措置に出たものである。
今回の電力供給停止措置は、学部の長期間にわたる説得にもかかわらず、旧寮を不法に占拠し、盗電行為を続ける一部学生たちに対する、学部側の強い警告を表した措置と思われる。
【平成8年11月28日掲示】 旧寮食堂(南ホール)を使用している学生の皆さんへ
東京大学教養学部 再三にわたって警告したにも関わらず、旧駒場寮への盗電が依然として続いています。この盗電は、違法なだけではなく、危険も伴うものですので学部として、このまま放置することはできません。盗電は、主に旧寮食堂(南ホール)から行われています。そこで本日、学部は、やむを得ず旧寮食堂(南ホール)への電力の供給を断ちました。
本日以降、サークル活動などで旧寮食堂(南ホール)を使用予定の学生諸君は、学生課に相談して下さい。
惜しくも決勝進出ならず
十一月十日、東大運動会アメリカンフットボール部は、慶大に圧勝し、初のプレーオフを手にした。
そして、アメリカンフットボール関東大学選手権のプレーオフが二十三日、川崎球場で行われた。東大(B2位)は、6年ぶりの優勝を目指す日大(Aブロック1位)に35−13で破れ、惜しくも決勝進出には届かなかった。
東大は、第1クォーターに10−7とリードしたが、第2クォーター、日大QBの高橋の2TDパスなどで21点を奪われると、第4クォーターにも1TDを追加され、守備に決めてを欠いた東大を振切った。
東西大学王座決定戦(甲子園ボウル)出場を懸けた決勝は、十二月一日、同球場で行われる。
準決勝 日大 35−13 東大
近い将来、本学医学部入試に面接試験が導入されるそうだ。
このところオウム事件や薬害エイズ問題など、同学部OBの不祥事が立て続く中、危機感の表れであろう。
医師の適正を厳しく見極め、人間味あふれた医療人を養成するのが狙いだそうだ
医師に必要なものは単なる医学的知識だけではないはず。
人間は精神的な生き物で、この精神のありかたが微妙に肉体の健康にも影響を与える。
大ベストセラーになった『脳内革命』の書を見ても明らかだ。
そのような人間を扱う医師が、単なる医学的知識しかもっていないというのでは、
病院に行くのが何となく恐くなってくる。
人間を精神と肉体の統合体としてとらえ、精神面にもアプローチすることができる
知識と人格が備えられていてこそ名医と呼べるのではないだろうか。
そういう意味で、今回の改革は期待するするところが大きい。
しかし、いくつかの疑問が残る
医師の適性とは果たして何だろうか。その基準がはっきりしていなければ、
面接試験も自己満足に終わってしまう可能性は否めない。
それに今回の事件に関与した人たちも、入学当初から不純なる動機を抱いていたのだろうか。
いや、はじめは純粋で高尚な動機と目的をもって医師を志していたが、
いつしか権力や名誉、財物といった物質的な欲望の渦に巻き込まれ、
善悪の明確な判断が麻痺してしまったのではないだろうか
もしそうだとすれば、現代社会に蔓延している物質偏重主義こそ元凶であって、
その解決が先のような気もする。善悪を正しく見極め、
自らが定めた崇高な動機と目的を失わない意志力が必要な時で、
そのためにも、善悪を区別する学校教育こそが必要なのではないだろうか。