入学試験前期日程合格発表

「開成高校が16年連続トップ」

3131人が新たな出発

 平成九年度入学試験前期日程の合格者発表が、十日の正午過ぎ、本郷総合図書館横で行われた。発表された合格者の総数は、昨年より十六人少ない三千百三十一人。出身高校別の合格者数では、開成高校(東京・私立)が昨年より三十人増えて百六十八人で、十六年連続のトップだった。次いで学芸大付属高校(東京・国立)が百人(昨年七十五人)で、昨年の六位から二位へ浮上。続いて灘高校(兵庫・私立)八十九人(昨年九十四人)、筑波大学付属駒場高校(東京・国立)八十五人(昨年九十二人)の順だった。また同日、後期日程の第一段階選抜の合格者千八百六十七人も発表され、十三日、十四日の後期試験に望みをかける受験生の姿も見られた。


 発表予定時刻の午後一時より早い十二時半過ぎ、総合図書館横の広場に設置された特別掲示板に、合格者の氏名が書かれた板が掲げられた。

 開場を仕切るロープが切られると同時に、発表を待っていた多くの受験生およびその父兄が走って押し寄せる姿が見られた。天候は昨年と同様に晴れで、春の暖かな日差しの中での合格発表となった。

 合格を確認した受験生は、「やった」などの歓声をあげ、手を上げて喜びを表したり、両親や友人と抱きあったりする姿を見せた。新たなる出発に対して大きな希望を抱いていたようだ。一方で、自分の名前をみつけることができず、一人静かにその場を立ち去る姿もみられた。

 周辺には受験生を歓迎する運動部の学生たちがたくさんおり、合格して歓喜に浸っている新入生たちを次々と胴上げし、会場を盛り上げていた。また、例年通りサークルの勧誘も行われ、大量の紹介ビラが新入生に手渡されていた。

 今年の合格者は三千百三十一人で、昨年より十六人少なかったが、定員の三千百九人より二十二人多い水増し合格となった。

 合格者を出身高校別に見ると、開成高校が十六年連続のトップ。次いで学芸大付属高校が、昨年の六位から二位に。以下、灘高校、筑波大付属駒場高校、桐蔭学園高校、桜蔭高校と、多少の変動があるが相変わらずの上位陣の顔ぶれは変わらなかった。

 また、前期日程の合格者が発表されている横では、後期日程の第一段階の合格者の氏名も掲示されたが、こちらは静かな発表となった。後期日程には五千九百五十六人が志願していたが、センター試験で合格したのはそのうち千八百六十七人。十三日、十四日に実施される後期試験に望みをかける。

淡青手帳

 今月初め、米オレゴン州の科学者が、クローン猿を誕生させたというニュースが全世界を駆けめぐった。この技術を用いれば、人工的な双子、三つ子を誕生させることができる。だが、猿に応用することができたということは、近縁の動物である人間にも応用することができるということを強く示す

クリントン米大統領は、クローン人間を誕生させるあらゆる実験への、連邦政府の補助金支出を禁じる命令を出した。クローン人間を誕生させることは、「神をもてあそぶ試み」と非難したという

技術的にはクローン人間を誕生させることは十分可能だろう。しかし、自分と同じ遺伝子持つクローン人間を誕生させたとしたら、大問題が起こるだろう。生まれた子供は、いったい誰が親になるのか

クローン人間の誕生は、男と女のペアから子供が生まれるという生命の大原則を壊すことになる。ましてや、人間は“魂”を持つ存在だ。子供は両親の愛情に満たされた家庭の中で育っていくものだが、クローン人間の赤ちゃんには両親が存在しない。つまり、私生児のような立場におかれてしまう

科学技術は目覚ましく発展しているが、それは何でもやっていいということを意味しない。原子力の例を見てもあきらかだが、科学は使う人間の方向性いかんで、善にも悪にもなる。遺伝子を操作する技術も、地球生命の大原則、またその背後にある宇宙の秩序を破壊する方向へ用いられるなら、取り返しのつかない悲惨な問題を起こしてしまうだろう。二十一世紀に向け、人類は真なる価値観を持てるように前進していかなければならないと思う。


1997 東大新報