教養学部は6月26日、平成11年(1999)度進学振り分け第1段階進学志望集計結果を発表した。この結果は6月中旬に2年生が提出した進学志望届を集計し、それぞれの進学先ごとの第1段階志望者数と、進学が可能な最低点を(底点)示したもの。今年も人気学科に変動はないが、人気学科はさらに底点を上げ、不人気学科との格差がますます広がった形になった。 |
今年は進振り制度が改正されてから5回目の進振りとなる。以前は6月に志望届けを提出した後、7月の第1回集計結果を見て志望変更届けを出し、9月の第2回集計結果を見た上で最終志望届けを出し内定を待つという方式だった。しかし、この制度だと最終志望届けの結果、志望状況が大きく変動することもあり、"一発勝負"的な傾向が強かった。また、画一的な平均点で判断されることに対する批判も根強く、これらの問題点を改善するために4年前から導入された方式が2段階選抜方式である。
2段階選抜方式では、まず第1段階で従来通り平均点による選抜を行い、定員の7割までを決定させる。その後、第1段階での選抜に漏れた学生に対して第2段階選抜を行うのであるが、第2段階では学科ごとの重率平均点を用いて選抜することによって、画一的な判断を避けようとした。
今回は第1段階の志望集計結果が発表されたが、基本的に例年と大きな変動はなかった。しかし、人気学科の底点はさらに上昇し、ますます不人気学科との格差が広がった形になった。
文系では、最近の世相を受けてか教育学部志望者が増加し、文三から教育学部を志望する学生は昨年より15人増えて85人となった。昨年"底抜け"(定員割れ)した教育学と教育行政学は、今年志望者数を大きく伸ばし、それぞれ76点、72点という"底"をつけた。比較教育社会学も志望者を10人増やしている。
教養学科の人気は変わらず、文3からの進学希望者は昨年より20人増の91人、底点も85点と高く、相変わらずの激戦区となっている。特に表象文化論は、文系のなかでは法学部への傍系進学を除いて最も高い、86点という"底"をつけた。
一方で昨年底点がついた文学部の東洋史学と美術史学は今年"底抜け"し、文学部のインド語インド文学と教育学部の身体教育学はいまのところ志望者なしとなっている。
理系でもこの傾向は変わらず、人気学科である理学部生物科学への進学最低点は、理一88点、理二85点と相変わらず高い。生物学動物学も理一87点、理二86点という高底点になっている。昨年志望者が減少し"底抜け"した工学部化学生命工学は、今年志望者を46人増やし"底"を回復した。
教養学部基礎科学科も、定員が16人減って42人となったにも関わらず志望者は増加。理一からの志望者が18名増えて底点も14点アップした。
昨年新しく設けられた農学部九類・国際開発農学専修は文系からの志望者が増加し、85点(文系)という底点がついた。薬学部は理一、理二共に志望者が増加し、それぞれ底点84点、79点となった。今年は理一から医学部への転部志望者が9人おり、底点は95点。これに対し、医学部健康科学・看護学は今年も"底抜け"している。
今後の日程は、9月3日から9日までに進学志望変更届けを提出。9月24日には第1段階進学内定者と第2段階進学志望集計結果が発表される。
(2面に集計結果)
新領域創成科学研究科の先端生命科学研究系は7月7日、生命科学シンポジウム「生命のかたちとはたらきパート2」を本郷キャンパスの山上会館2階大会議室で開催した。
本学では、来年度から柏キャンパスに移行される新領域創成科学研究科の準備段階として様々な研究会やシンポジウムが開催されている。4月に「パート1」として行われた「生命の構造」に関する研究発表に続き、今回は「生命のはたらき」にテーマをおいて、本学の教授らによる講演などが行われ、生命科学の研究者や新設の研究科を志望する学生らを含め、一般からも多数の参加者が集った。
最新の研究成果について発表する別府輝彦教授 |
講演の部では、講演者はスライドを用いながら熱心に説明していた。また、参加者も講演に対する質問を活発に行うなど、最新の研究発表を興味深く聞き入っていた。
講演の後に、嶋昭紘教授は講演の総括と展望について「生命科学における学融合の必要性」と題して語った。嶋教授は、今回講演を行った研究者が同じ組織に所属することにより、お互いに研究分野を取り入れながら新しい学問分野を生み出して行く「クロストーク」が柏キャンパスにおいて拡がることを期待すると述べた。また、教授が目指す「学問の融合(学融合)」について、かつてシュレディンガーが、量子力学の研究者でありながら「生命とは何か」という研究に取り組んだことを例に挙げた。そして遺伝情報の伝達など、生命科学の分野を量子力学的に解決しようとしたことが「学融合」の先駆けであったことを説明した。さらに新しい研究科においても今後、「クロストーク」を展開して行く中で「学融合」を達成して行きたいと語った。
最後に行われたパネルディスカッションでは、ゲストに文部省学術国際局の田中充氏を迎え、別府輝彦氏、秋山徹氏、西郷和彦氏、河野重行氏、難波成任氏らが参加して「21世紀の生命科学と研究教育」というテーマで意見を交換した。別府教授はディスカッションの中で、微生物から抗癌剤を作る研究を紹介しながら、主に@自然界の生物の探索と(2)人間の持つ知恵による生物の設計の方法があるとし、特に地球上の生物の多様性を理解することに力を入れたいと主張した。
また文部省の田中氏は、21世紀は生命科学の時代だとして、大学の研究者の意見を反映しながら、研究費を投入できるようにしたいと述べた。さらに、来年度から新研究科へ行くことになる西郷氏は、新研究科で学融合を進めるためには、お互いの研究分野同士で言語の統一をする必要があることを訴えた。
今回のシンポジウムは各研究者の様々な意見交換がなされ、今後の生命科学の展望として「学融合」が強調される内容となった。
本学と一橋大学の生活共同組合(生協)は、今秋にも電子マネーによる決済サービスを開始する。これは書籍などの購入代金をICチップが付いたキャッシュカードで支払えるサービスで、同様のサービスはすでに横浜市立大学などで始まっている。
本学が導入するシステムは、学生はまず生協と提携した富士銀行、第一勧業銀行、東京三菱銀行、さくら銀行などの都市銀行に口座を設け、ICカードを発行してもらう。そして大学構内に設置された専用端末で、自分の口座からICチップに電子マネーを入金する。その入金した分だけICカードで買い物ができるというもの。チップに記録された残高が減少すれば、再び端末で入金することができる。
この電子マネーシステムを運営するのは、関東甲信越の大学生協で構成する大学生協東京事業連合。現在4校でサービスを提供しているが、今年中にも東大、一橋大などさらに約15校にシステムを導入する予定。
キャンパス情報 |
★東京大学地震研究所一般公開と公開講座
◎一般公開
▽日時 7月30日(木)、31日(金)10時〜16時30分
▽場所 東京大学地震研究所(文京区弥生1-1-1)
▽展示内容 地震や火山噴火の仕組み、災害の防止等に関する研究について、最新の成果をコンピューター映像やパネル展示でわかりやすく説明する。また、起震車による地震動の体験コーナーや地球科学に関する質問コーナーも開設する予定。
◎公開講座
▽日時 7月30日(木)14時〜17時
▽場所 東京大学大講堂(安田講堂)
▽定員 800名(受講無料)
▽申込方法 往復葉書に住民・氏名・年齢・職業(会社・学校名など)・電話番号を明記し、返信面には返送先を記入のうえ、7月15日までに次の申込先へ。
〒113-0032 文京区弥生1-1-1 東京大学地震研究所庶務掛公開講座担当
▽プログラム
14時 開場
14時30分〜40分 所長挨拶
14時40分〜15時30分 「地震・火山噴火研究のための測地学の道具箱」(大久保修平教授)
15時30分〜40分 質疑
15時40分〜16時 休憩
16時〜16時50分 「大地震の起こり方とその予測可能性」(菊地正幸教授)
16時50分〜17時 質疑
――今、何が必要なのか(8)――
性教育――まず規範教育を |
性教協の後援拒否した愛媛県教委
"人間と性"教育研究協議会(性教協)が愛媛県県民文化会館で来月1日から3日間、全国夏期セミナーを開催する予定である。しかし、愛媛県教育委員会は性教協の後援依頼を拒否したという。性教協が唱える性教育が、「文部省の教育指導要領に合致していない」「淫行・買春処罰に反対している」などと教育界で批判が高まっており、それが理由ではないかと言われている。
性教協が予定している全国夏期セミナーは、模擬授業や意見交流、分科会などで構成され、〈性器〉の哲学・社会学・教育学的考察」と題する山本直英代表幹事の理論講座で締めくくられる。模擬授業では小学校低学年で「性器への偏見を払拭」し、小学校高学年で自慰を、中学校の道徳で同性愛を扱う予定だという。
愛媛県教育委員会は、性教協が出したセミナーの後援申請を窓口段階で却下した。正しい判断といえよう。
性教協の唱える性教育は前号でも見てきたが、そもそも文部省は性教育に関してどのように見ているのだろうか?
性教育を静観してしまった文部省
戦後わが国の文部省は「純潔教育」路線を推進し、49年に「純潔教育基本要項」を発表。「純潔とは男女間の肉体関係が結婚当事者間のみにおいておこなわれること」とした。しかし、70年代以降、社会が豊かになるにつれて、性に関する環境が変化し、「純潔教育」は次第に教育現場から姿を消し、代わりに「性教育」が用いられるようになった。文部省は性教育が実施されるのを静観し続けた。その空白期間に、山本直英氏が性教育の専門家として登場。82年には「"人間と性"教育研究協議会」を設立。83年になると、ようやく文部省は新たな性教育指導書を作成するために動き出すが、指導書作成委員会の協力者19名の中に山本直英氏を選んでしまう。それ以来、山本氏の思想に影響を受けた教育界は、92年にいわゆる「性教育元年」を迎え、今日に至ったのである。
性教育元年から性交教育が過激に
それでは、実際のところ性教育元年以降、性教育はどのように行われてきたのだろうか?
92年度(平成4年度)、学習指導要領の改訂に伴い、小学5年生から「性」についての教育内容がより詳しくなった。新しく登場した「保健」の教科書では、「初経」や「精通」について説明されている。この時の改訂について、文部省は「小学校で『性交』を教えるかどうかは、あくまで現場の教師の判断にゆだねられている」と言っており、「性教育」の導入については曖昧な態度を取っていた。
これに対して、教育現場では事実上の「性教育」のスタートと受け止め、テレビや新聞、雑誌は「性教育元年」と報道。これまで先駆けて性教育に取り組んできた教師の授業や、欧米の性教育教材ビデオ、日本で作られた模擬授業用のビデオを盛んに取り上げた。それらの授業では、小学校の低学年から人形や絵を使って、男女の「性器の仕組み」や「性交の方法」を具体的に教えていた。が、そういう教え方に疑問をもつ教師や親も多かった。
性交教育で取り返しのつかない傷が
実際、次のような事件も起こっている。93年3月、山形県東根市の小学校の教師が、性教育の一環としてクラスの男女を別々に全裸にし、両足を開かせた上で、お互いの性器の写真を撮らせるという事件があった(写真)。事件を起こした教師は、当時保健主事を務めていた。その立場上、小学生用副読本『ひとりで、ふたりで、みんなと』(山本直英氏ら監修・執筆)を所持し、それを性教育を進める上での資料として利用していたという。その副読本には、女の子の性器が描かれ、そこには「上の絵を見ましょう。これをまとめて外性器と呼ぶのです。絵でよくわからない人は自分で鏡で移してみるといいですね」(20頁)と書かれている。同教師は、自分の性器の写真を見て教材と比較するのが一番よいと考えた、と言っている。
この事件は一教師の暴走というより、科学的「性交教育」の必然的結果と言える。一律的な科学的性器・性交教育は、場合によっては教育どころか子どもたちの心身に取り返しのつかない傷を負わせる結果になってしまうということを知っておく必要がある。
山本氏本人も気づかない(?)危険性
このように文部省が性教育観を悠長に模索している間に、性革命思想をもった急進的性教育派に主導権を奪われてしまったのだ。
もちろん、山本直英氏自身は、自分が「性革命家」であることを否定する。
「強いて言えばノンセクトでリベラリストでロマンチストと思っています」「今日、共産主義革命なんてまともに考えている人がいるのでしょうか。また性教育を通してそんな大それたことができると思っているのでしょうか。時代錯誤と時代感覚の欠如の最たるものでしかありません」(『性交その理論と教育実践』山本直英編著、あゆみ出版)。このように、山本氏本人も自身の思想の危険性に気がついていないとすれば、より一層問題である。
まず「規範教育」「心の教育」を!
また、山本氏は「性的自己決定」という言葉をよく使う。中高生といえども「いつ、どこで、誰と」セックスするかは自分の判断で決めることになるから、性的自己決定能力を養わなければならないというのである(『〈性の自己決定〉原論』紀伊國屋書店、55頁)。しかし、「援助交際」(売春)を行っている少女たちは、まさに「性的自己決定」によって売春しているのだ。だから、「自己決定」を強調しすぎると、売春でも何でも自分の勝手ということになる。
青少年の適切な性的自己決定能力を育成するためには、性的なものに関する判断力、および自己コントロール能力の養成がまず必要である。すなわち、「規範教育」や「こころの教育」がまず必要なのである。(つづく)(誠)
W杯が幕を閉じた。今世紀最後の栄冠を手にしたのは、地元フランスだった。決勝では王者ブラジルに3-0で圧勝。いい試合になるとは思ったものの、こんな一方的な試合になるとは予想外だった▼一体フランスの強さの秘密はどこにあったのだろうか。守備の堅さという分析が多いが、それならばイタリアやパラグアイ、そして日本にも当てはまる。フランスのナショナルチームが、他のどのチームにも勝るものとして持っていたのは、実はチームの"一体感"であったと思う▼フランスチームは"多国籍軍"と呼ばれるほど雑多な人種から構成されていた。ディフェンスの要デサイーはガーナ、MFカランブーはニューカレドニア出身で、優勝の立て役者ジダンもアルジェリアの出身である。本来雑多な人種はチームにとってマイナスの要素として働くはずである。ところがフランスにとってはそのような多彩な個性が、逆にプラスの要素として働いたのである。様々な人種から構成されたメンバーが、チームと国のためというより大きな目的を中心として一つになった時、逆に「様々な肌の選手がいることは大きなアドバンテージ」(プラティニ大会組織委員長)になったのである▼地元の声援を受けたフランスにとって、勝利は決して個人の目的とはなり得なかった。それは常に国の目的であり、フランス国民全体の目標であった。そのような精神が人種の差を越えてチームを一つとし、奇跡的な勝利を呼び込んだのである▼クロアチアもチームの全員が祖国のためという思いを持って戦い、「現時点で世界最高のチーム」と称されたオランダを破って3位に入賞した。結局一人一人の能力以上に、チームの一体化、そして目的意識が強く、高かったチームが勝利を呼び込んだ▼次の2002年は日本にとって地元での開催となる。今回のW杯の教訓をぜひ日本代表にも学んでもらいたい。