今、防災について(13)

恐ろしいスラブ内地震

 「兵庫県南部地震」は活断層が引き起こした地震として脚光を浴びて、「活断層ブーム」が起きたことはご承知の通りである。地震にはプレート型地震と活断層型地震があると説明されることが多い。
 日本列島をのせている陸のプレート(北米プレート・ユーラシアプレート)の下に、日本海溝や南海トラフから太平洋プレートやフィリピン海プレートが潜り込み、斜めに垂れ下がっている部分をスラブと呼んでいる。比較的深い数十kmから百kmの深さでスラブが破壊される地震が注目されている。
 1993年太平洋スラブの深さ110kmのところで発生した釧路沖地震(M7.8)は釧路に震度6の揺れを発生させた。同年グアム島に被害を与えた太平洋スラプ内の地震(M8.1)、94には太平洋スラブ内の深さ60kmで北海道東方沖地震(M8.1)が発生し北方四島に大きな被害が発生した。
 以前原発震災や原子力施設の周辺の防災対策について論じたが、日本の原子力発電所は原子炉冷却のために海水を利用しているため、海辺に殆どが立地している。東海地震対策として大規模地震対策法が施行されたのは、昭和53年(1978)である。同年「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(昭和53年9月策定、昭和56年7月一部改訂)が策定され、審査済の原子力施設は十分耐震性を有すること等、その設計方針が妥当であることが原子力安全委員会の耐震設計安全審査で確認されている。この指針策定前の原子力発電所は28か所あった。この中には東京電力福島原子力発電所の原子炉8基が稼働している。福島原子力発電所の地下には丁度太平洋スラブが存在している。
 「兵庫県南部地震」が発生し平成7年には、「兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」が設けられ、原子力施設の安全性についての結論が同年9月極めて短期間に出されている。地震動の評価方法、鉛直地震力、活断層評価等について検討され、耐震設計指針の妥当性を損なうようなことはないという結論がでたとされている。
 しかし原子力施設稼動後に脚光を浴びたスラブ内地震でM8を超える巨大地震が発生した場合の安全性についての検討がされているのか、或いは原子力施設稼働前の段階で審査した施設は老朽化が進み補修がされてはいるが、一般に施設の耐用年数は30年位ともいわれている。東海発電所は稼働を停止したが、27基の原子炉が20年前に許可が下ろされたもので、内17か所が20年以上稼働しているのである。
 さらに一層の安全性が再検討される必要があるのではなかろうか。
都市防災研究会 代表補佐 大間知倫(おおまちひとし)昭和33年経卒


中国近代政治と儒教文化

  林嘉言著

 本書は、中国の伝統の一つである儒教文化と近代政治との関わりについて、その分析を行っている。構成は、「1、孔子の階級的立場について」「2、『打倒孔家店』の由来―『五四運動』時期を中心として」「3、孔子批判の根底にあるもの―1973年の『批林批孔』運動を中心に」「4、孔子に対する再評価」「5、中国近代化における儒教文化の役割」「6、『大中華経済圏』に見る華僑・華人の『中華意識』と儒教文化」となっている。
 儒教文化は、19世紀以降に批判の対象となり続け、特に「文化大革命」時には、「批林批孔」運動という形で徹底的に批判された。しかし、1980年代以降、その価値は再評価され、その生命力は復活してきている。
 著者によれば、儒教の中心的思想は「仁義」「礼智」「道徳」「修身、斉家、治国、平天下」であり、その内容は一貫したものになっている。「大同世界」の理想には、民族間の対立と紛争の解決にも役立つことが期待される。「天人合一」の思想には、人間と自然が調和共存できる理念が強調されていることを指摘している。
 論語の中には「温故知新」という言葉もあるが、現代を生きるにあたって、私たちが儒教から学ぶべきものは非常に多いものと思われる。本書は、古典と現代を連結せしめるものとして、理想主義と現実問題の溝を埋めるものとして、重要な意義を持つものと思われる。     (Y)

 (東方書店 5700円)


ホームページ紹介 Vol.34

アメリカ研究資料センター(CAS)

 アメリカ研究資料センターは、駒場キャンパス内にある研究施設である。設立は1967年で、社会科学と人文科学の分野における、アメリカ研究に関する文献資料や基礎資料を収集し、それを全国のアメリカ研究者、アメリカ研究を志す学生、およびアメリカに関心を持つ人々の利用に供するというのが、その設立趣旨だ。この施設は、日本におけるアメリカ研究の充実と進展に寄与するという目的のために、所蔵文献・資料を内外に広く公開している。
 1994年5月現在、図書資料約5万1千冊、マイクロ形態資料222タイトル、視聴覚資料669点を所蔵している。逐次刊行物は、学術雑誌を中心に485点所蔵している。歴史的に重要な定期刊行物のバックナンバーも、マイクロフィルム、マイクロフィッシュの形で揃えてあり、歴代大統領の文書も収集している。日米関係に関する出版物、日本人によるアメリカ研究書、アメリカ研究所の邦訳なども積極的に収集しているほか、日本におけるアメリカ研究の先駆者にインタビューを行なって、その成果をオーラル・ヒストリー・シリーズとしてすでに28巻刊行している。
 当センターのホームページでは、所蔵資料の目録をオンラインで閲覧できるほか、アメリカ研究セミナーの案内やアメリカ学会情報が掲載されており、また、アメリカ研究者間の情報交換を目的としたアメリカ研究メーリングリストへの登録手続きも行うことができる。
 なお、開館日は、平日の9時半から17時までで、入館手続きを行えば、館内閲覧や文献複写などのサービスを受けることができる。


赤門クロスNo.80

 いよいよ夏がやってきました。読者の皆さんも暑さに負けないようにがんばって下さい。今回は夏の季語を多く入れてみました。クロスが完成した後、二重マスの文字を並べると、夏に関係するある言葉が出てきます。それが今回の答えです。それほど難しくはないと思いますよ。(出題/S・T)

タテのカギ

1.夏の季語。「百日紅」と書きます
2.夏の季語。「天道虫」と書きます
3.夏の名句。「五月雨をあつめて早し――川」 松尾芭蕉
4.夏の季語。「蝸牛」と書きます
7.釣りをする時に必要です
10.小学生連続殺傷事件が起きた所といえば…
11.識別力、判断力、思考力
14.なぐさめいたわること
16.夏の季語。「蚋」と書きます

ヨコのカギ

1.夏の季語。「仙人掌」と書きます
3.アラビア半島南西部のこの港から輸出されるコーヒー
5.一定の時期に一定の場所で、一定の金額を支払われるべき有価証券
6.遠足などには欠かせないものですね
8.「蜂――」「糖――」「――月」
9.夏の季語。鳰鳥(におどり)の巣のこと。
11.――に合わせて踊りましょう!
13.「牛にひかれて善光寺――」
15.金銭を贈る時、入れるのに用いる袋
17.夏の季語。浜木綿は「はま――」と読む
18.夏の季語。キュウリ・シロウリ・スイカ・カボチャなどの総称

応募方法

 誰でも応募できます。答えを「東大新報 赤門クロスワード係」に送って下さい。住所・氏名・電話番号・大学(職業)・学部・学年(年齢)、紙面に対するご意見、ご感想をお書き添えください。

プレゼント

 正解者の中から抽選で10名の皆さんに「東大グッズ」をプレゼントします。当選者の発表は賞品の発送をもって替えさせていただきます。締め切りは8月5日(水)です。どんどんご応募下さい。