宇宙科学研究所

火星探査衛星「のぞみ」

一般公開を開催

宇宙科学の最先端展示

 宇宙科学研究所(文部省)による一般公開が8月29日、神奈川県の相模原キャンパスで開かれた。毎年恒例のこの一般公開は、今回は「宇宙との出会い」をテーマに開催され、家族連れから大学生、研究者まで、多くの人が訪れた。
 会場では、太陽観測衛星「ようこう」やM-Vロケットの模型、宇宙環境試験装置、振動試験装置などが公開された。また、月や惑星表面上を移動しながら探査を行う「ローバ」の走行実験や、電磁波で動く宇宙列車(レールガン)の発射実験など、これから活躍が期待される開発も紹介されていた。また、水ロケットの作成と打ち上げなど、宇宙を身近に感じることのできる企画も多く見られた。
 宇宙科学研究所は、科学技術庁の宇宙開発事業団とともに、日本の宇宙開発を担っている文部省の研究所である。天文学、惑星科学といった理学的研究とロケットや人工衛星の開発といった工学的研究の両方を扱っている。1981年に本学工学部の宇宙航空研究所から文部省宇宙科学研究所に改組された。改組は、本学の経済的な理由と宇宙学と航空学の研究領域のずれなどがきっかけであった。これまで、同研究所から24機の衛星が打ち上げられた。昨年の7月には日本初の火星探査機「のぞみ」を打ち上げるなど、本格的な太陽系の惑星探査もはじめている。
 人工衛星を打ち上げるための二段式スペースプレーンや月レース艇など、未来の宇宙開発の様子を知ることのできる内容も多くあった。最新の研究の成果がわかりやすく解説されており、来場者は興味深そうに展示物に目を向けていた。


東京六大学秋季リーグ開幕

今季のみどころ

 投手は、左腕遠藤に続く二番手、三番手投手の出来が鍵を握る。怪我で戦列を離れていた本来のエース氏家が復調すれば、ここ数年にない投手力を発揮することが可能。防御率2点台の実績をもつ左右の両エースを、布施、三ケ尻、梅下らの投手陣がどこまでバックアップすることができるか、注目される。
 打撃は、昨シーズン打率がリーグ5位の須貝、長打力を備えた萩原、済木、横山、攻守走に優れた力をもつ多田らが中心となるが、いずれも3割前後の打率が計算できる強・好打者。これに村野、酒井、「大型新人」の児玉らが加われば、「戦後最高」と言われた95年春のチーム打率2割5分3厘を上回ることも不可能ではない。
 不安材料は守備。昨シーズンも基本的な捕球や送球のミスが決勝点につながるケースが多かった。大幅な向上は難しくとも、不要な判断ミス、連携ミス等なくせば、勝利のチャンスはかなり増えると思われる。
 均衡試合をいかに白星に転じていけるかが、秋季リーグ戦を左右する鍵の一つと言えそうだ。

東京六大学野球秋季リーグ戦日程表
月日第1試合第2試合
第1週9月12日東 大――明 大法 大――早 大
9月13日早 大――法 大明 大――東 大
第2週9月19日東 大――慶 大法 大――立 大
9月20日立 大――法 大慶 大――東 大
第3週9月26日明 大――早 大立 大――慶 大
9月27日慶 大――立 大早 大――明 大
第4週10月3日明 大――法 大東 大――早 大
10月4日早 大――東 大法 大――明 大
第5週10月10日法 大――慶 大立 大――東 大
10月11日東 大――立 大慶 大――法 大
第6週10月17日慶 大――明 大早 大――立 大
10月18日立 大――早 大明 大――慶 大
第7週10月24日立 大――明 大法 大――東 大
10月25日東 大――法 大明 大――立 大
第8週10月31日早 大――慶 大
11月1日慶 大――早 大

※開始時間は2試合の日は12時、1試合は13時、併用日の2試合は11時。
 左側校が3塁側先攻。早慶戦は慶大が3塁側

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夏休み明けて

 長い夏休みも終わり、テスト期間が始まりました。今年は異常なほど涼しい日が続きましたので、比較的勉強もやりやすかったのではないでしょうか。この期間、充実した毎日を過ごせた人もそうでない人も、新しい気持ちで新学期を出発しましょう。
 さて、今年の夏休みに起きた出来事を振り返ってみると、真っ先に思い出されるのが、7月25日に起きた和歌山の毒入りカレー事件です。連日ワイドショーなどで衝撃的に取り挙げられ、未だに解決の糸口がつかめずにいます。また、それに連動するように起きた8月10日の新潟の毒入りポット事件。これも未だに捜査が続いています。そして夏休みも終わりが近づいた26日、今度はやせ薬と偽ってクレゾールを送りつけるという悪質な事件も起こりました。「世界で最も安全な国」と言われた日本も、今ではいつ自分が事件に巻き込まれるかわからない、そんな不安とともに生活しなくてはならない国になってしまいました。
 しかし、そんな悲惨な事件が続く中、唯一心に潤いを与えてくれたのが甲子園のドラマでした。

日本中を感動で包んだ高校野球

 「21世紀に向けて多くの人に生きる勇気と希望を与えることができるように全力でプレーすることを誓います」。
 この選手宣誓で始まった第80回全国高校野球選手権大会は、その通り多くの人に勇気と希望を与える記念すべき大会となりました。特に準々決勝、準決勝と苦しい状況に追い込まれながら、奇跡的な勝利を重ね、見事春夏連覇を成し遂げた横浜高校の活躍は、日本中を感動で包み込みました。優勝の立て役者松坂君が語った言葉―「どんなにきつくても、耐えればいい結果が出ることを知った。今までで一番うれしい」―この言葉に勇気づけられた人は多いのではないでしょうか。
 延長17回、250球の死闘を忍耐して投げ抜いた末に手にした優勝旗。8回の時点で6点差をつけられ、一時はあきらめかけた優勝旗。そんな数々の苦難を乗り越えて勝ち取った優勝旗であるからこそ、生涯忘れることのできない、輝くような価値のあるものとなったのです。きっと今回の大会での経験が、今後の松坂君の人生において大きなプラスの影響をもたらすことになるでしょう。これからの人生において何か大きな苦難にぶち当たった時。信じられないような悲しい事件に見舞われた時。そんな時、この甲子園でつかんだ勝利の記憶が生きている限り、彼は決して負けることなく乗り越えて、やがて大きな幸福と歓喜の時に迎えられるようになるでしょう。

味わった者だけが知る勝利の喜び

 今大会で松坂君がつかんだ勝利の喜びは、過去に苦労を経験したことのない人にはわからない喜びです。いつも苦労を避け、できるだけ楽をしようと生きてきた人にとっては、苦労の後の勝利がいかに充実したものであるかを理解することは不可能です。それは味わったものだけが知る至高の美酒なのです。
 思えば、私たちもそのような体験をしたことがありました。本郷キャンパス三四郎池沿いの道に掲げられた掲示板に自分の名前を発見した時、私たちは松坂君と同じような至福の一時を味わったのです。それは3年以上に及ぶ長い努力が報われた瞬間でした。この瞬間、私たちが酔うような歓喜と充実感に身を浸すことができたのは、その前に長く険しい苦労と忍耐の時期があったからでした。

苦労して得た勝利こそ価値がある

 私たちは東大合格という勝利を通して、努力は必ず報われるということを実感したはずです。そして苦労や努力を通過して手に入れた勝利こそ、味わい深く、真に価値あるものだということを悟ったはずです。ところが、今の私たちにその体験は生きているでしょうか。ともすれば楽をしようと、努力をしないで成功を収めようと考えてはいないでしょうか。
 「私が、追放したいと日頃から考えている三つの悪事と一つの悪習について、まず指摘しておきたいと思います。三つの悪事とは『万引き』『カンニング』『ゴミのポイ捨て』であり、一つの悪習とは『シケプリ』のことです」(※『シケプリ』とは試験対策プリントのこと)。大森教養学部長が指摘した三つの悪事と一つの悪習は、まさに努力をしないで不当な成果を得ようとする行為の最たるものではないでしょうか。
 一代で財を築いたアメリカの実業家カーネギーの言葉を借りれば、「最上の地位というものは、最も多く努力する者に与えられるもの」なのです。たとえ努力なくしてある程度の成功を収めたとしても、そのような成功には何の価値もなく、時の流れとともに消え去ってしまうのです。不当な利益を貪り続けた汚職官僚や企業が、立て続けに審判を受けている事実が何よりも雄弁にそのことを物語っています。

正しい伝統を後輩たちに!

 今回の高校野球で多くの高校球児たちが見せてくれた、勝利に対する真摯な姿勢は、私たちの眠った勝利の記憶を甦らせてくれました。東大という最高学府に合格した私たちは、受験戦争に敗れ、涙を呑んでいった多くの友たちのためにも、この東大という場所を最大限に活かし、自らの才能を開化させなくてはならないのです。横浜高校のメンバーが「PLのためにも負けるわけにはいかない」と奮起して、準決勝で奇跡の逆転劇を演じたように。
 今からでも遅くはありません。勝利の美酒に酔ったあの瞬間をもう一度思い起こし、新しく再出発をしようではありませんか。本学の先輩たちが立ててきた正しい伝統を受け継ぎ、正当な努力と苦労によって勝利した体験を、これから入学する後輩たちに伝えていきましょう!
              (A・Y)