肝がん発生のしくみ解明
C型肝炎ウィルスが原因となる肝臓がん発生のメカニズムの一部を、本学医学部第一内科の小池和彦助教授のグループがマウスを使った実験で解明し、1日発行の米医学誌「ネイチャー・メディスン」に掲載された。ウィルスの本体部分「コアたんぱく質」が過剰に脂肪を作り出し、肝組織を脂肪化させるなどして、細胞のがん化と増殖を促進するらしい。 |
小池助教授らが行った実験は、C型肝炎ウィルスの本体部分「コアたんぱく質」を作る遺伝子を入れたマウス73匹と、入れないマウス69匹を、人間で50〜60歳に相当する月齢16〜19か月まで飼育。それぞれの肝細胞を比較した。
その結果、コアたんぱく質遺伝子を入れた群では、13匹が肝臓がんになったのに対し、入れない群はまったく肝臓がんにならなかった。さらに、入れた群では、脂肪が肝細胞の核とエネルギーを作る器官ミトコンドリアにたまっていた。C型肝炎による肝臓がんは、発生の前に脂肪肝ができる。
また、肝臓がんの発症年齢も人とマウスで重なっていた。性別でみても、オスは40匹中11匹が肝臓がんになったのに対し、メスは33匹中2匹しかならなかった。人でも女性より男性の方が肝臓がんになりやすい。
C型肝炎ウィルスはコアたんぱく質のほか、周囲を覆う外被膜たんぱく質、ウィルス遺伝子複製に必要なたんぱく質(酵素)からなっている。同グループはすでに外被膜たんぱく質を作る遺伝子もマウスに入れ、この場合はまったく肝臓がんができないことを確認している。今後は遺伝子複製にかかわる酵素を作る遺伝子の影響も調べる。
研究メンバーの森屋恭璽・同科医師は「遺伝子治療や薬剤などを使い、コアたんぱく質が活動するのを抑制できれば、感染者の発がん予防や、肝臓がん患者の再発予防につながるはず」と話している。
3日午前5時20分ごろ、本学教養学部(駒場キャンパス)構内の旧駒場寮食堂南ホールから火災が発生し、鉄筋コンクリート造り平屋建て同食堂の一部と、中にあった看板類、中古ベッドなどを焼いた。
火災によって旧寮食堂厨房の配電盤より旧寮内建物に引き込まれていたコードが焼き切れ、停電状態になったため、異変に気付いた旧寮内に居残るメンバーが初期消火にあたり、まもなく駆けつけた消防隊によって消しとめられた。消防車11台が目黒消防署から出動し、5時55分に鎮火した。
3日に行われた消防署と警察署の現場検証によると、焼失面積は約40平方mにおよび、放火による疑いが強いという。最近駒場寮周辺では不審火が多発しており、今回の火災も何らかの関連があるものと思われる。
この火災によって旧駒場寮は停電状態になっており、寮内に居残るメンバーは電力の供給回復と建物の補修を要求しているが、学部側は用途廃止になった南ホールの修復のために国費を支出することはできないと、この要求を退けている。寮内に居残るメンバーは、危険防止のため旧寮食堂を封鎖しようとする学部関係者を妨害したり、5日には正門守衛所、6日には学部長、両評議員宅に押しかけて復旧を要求するなど数々の実力行使に出ており、学部側との対立は一層深まったものと思われる。
動脈硬化の原因の一つとされ、「悪玉コレステロール」と呼ばれる酸化したLDL(低比重リポたんぱく)の酸化を防ぎ、善玉コレステロール値を上げる治療薬の開発に、本学先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授(45)らと中外製薬の共同研究グループが4日までに成功した。
動脈硬化になった血管には、コレステロールを大量にためこんだ泡沫細胞がみられる。これは、異物や老廃物を食べるマクロファージと呼ばれる細胞が、酸化したLDLを過剰に取り込んだ結果と考えられる。
児玉教授らが開発した新薬は、このLDLの酸化的変性を防ぎ、泡沫細胞の形成を抑制するもので、「B0653」と呼ばれる。ウサギや高コレステロール食を投与したマウスなどにこの新薬を投与したところ、動脈の内壁を狭めるアテローム病変が抑制され、「善玉コレステロール」と呼ばれ動脈硬化を防ぐHDL(高比重リポたんぱく)レベルは上昇を示した。これまで動脈硬化の代表的な治療薬として使用されてきた抗酸化剤は、アテローム病変を縮小させる一方で、HDLを低下させる難点が知られており、新薬はこれをはじめて克服するものとして注目を集めている。
素粒子ニュートリノの質量発見など、世界的な成果をあげている本学宇宙線研究所の実験施設「スーパーカミオカンデ」(岐阜県神岡町)の実験が来年度も継続できるようになった。同施設は、国立大関係の研究機関の経費削減で施設運営の危機に立たされていたが、文部省の99年度概算要求で予算確保の見通しがたったため、実験の継続が可能になった。
国立大の研究機関の運営経費を賄う国立学校特別会計の不足を補うため、一般会計からの繰入金を増やせることになった。繰込金は、財政改革法により98年度から増額しない方針が決められ、今年度は10〜15%の予算が削減されていた。しかし、99年度については、人件費増の分だけは増やしてもよいことが閣議で了解された。文部省によると、宇宙線研の運営経費は98年度並みが確保できるという。
ただ、特別会計は人件費増などで恒常的に不足しており、根本的な解決にはなっていない。宇宙線研でも2000年以降は未だ見通しが立っていない。
旧駒場寮に居座りを続けるグループが7日正午過ぎ、本学駒場キャンパス101号館に侵入し、長時間にわたって業務を妨害した。さらに同グループは一部の職員を監禁状態に置き、本人の意志に反する「約束」をするように強要したという。
この事態に対し学部側は8日、学内掲示板に告示を貼り出し、同グループを糾弾するとともに、そのような「約束」は無効であると主張した。
「やっぱり」と言ったほうがいいのか、先日の「やせ薬」郵送事件の犯人は中学生だった。しかし、もうそんなことでは驚かない▼確かに、昨年の神戸の小学生連続殺傷事件のときは驚いた。多くの中学生が「酒鬼薔薇少年の気持ちがよくわかる」と共感したことに、さらに驚いた。まわりのクラスメートに「酒鬼薔薇少年の気持ち、理解できる?」と聞きまくってみたが、みんな「全然わからない」と答えた。そのとき、今の中学生は大学生とも全然違うということがわかった。4、5年の学年差がまるで一世代、二世代の違いに感じた▼そういえば、現場の中学教師も教育評論家たちも、中学生がここ数年で急激に変化していると異口同音に言う。一体何が起こっているのだろうか▼最近、名門進学校に通っている中学生がひったくりや恐喝など粗暴な事件を起こすケースが増えているという。ずっと親の期待にこたえて勉強してきた中学生が、成績が悪化して自分の存在を全否定されたように感じることも、原因として多いようだ▼5年後、彼らが東大に入ってきたとき、教養学部長は「万引き」「カンニング」「ゴミのポイ捨て」「シケプリ」を嘆くだけで済むだろうか。来年の入試から理Vで面接が必須になったが、早急に全科類で面接を導入すべきではないか。