痴呆症になった母親の介護をめぐり、家族が対立し崩壊していく、すさまじい物語である。家族は千差万別なので、著者の家族特有の話だと見なすこともできるが、同じような状況に陥った時、兄弟がどう振る舞うかを考えると、人ごととは思えなくなる。痴呆老人150万人、10年後には200万人という数字、老人施設や介護制度の貧困、介護をしている人たちの約半数が「虐待したことがある」という事実は、危機の多さと、それに直面した時の人間の弱さを示している。
83歳になる著者の母が、ボケが進んで徘徊するようになったのは平成8年の春。当時、北九州市に住む長女夫婦の家に同居していた。著者は、上に4人の姉がいる末っ子。長姉は60歳で、最初は母の家に住んでいたというから、娘が母を介護する、一般的には好ましいケースだった。他の姉たちも近くに住んでいる。問題は、その長姉の性格である。著者は世間体至上主義と書いているが、愛情からではなく、世間体から母をみていたということ。さらに、その夫がものすごいケチで、母親は身を小さくして暮らしていた。彼らが自分たちの家を建て、引っ越した時から、その傾向は一層激しくなってくる。それが母の病状を深刻化させたと著者は思っている、というかそれ以上に姉を恨んでいる。
母の事態に驚いた著者は、自分が母の介護をする以外にないと決意し、超多忙な仕事の合間をぬって、頻繁に帰省するようになる。九州に帰りやすいようにと、仕事もできるだけ関西にシフトする。それにしてもスケジュールを見ると、よくそれだけ介護できたものだと感心する。反面、著者も告発しているように、日本の公的老人福祉の貧しさを思い知らされる。政治評論家として、著者は身内の恥をさらしながら、制度の改革を訴えているのである。最後には、在宅介護するための家を建て、長姉から母親を取り戻し、母親の症状も穏やかになってきたというのでほっとするが、同じような事態が我が身に降りかかってくるとどうするか、今から考えておかなければと思わせられる。 (T)
(中央公論社、本体1,200円)
健康あれこれ vol.40 |
注意事項遵守で― 特に回復食は厳密に |
門脇 弘(評論家)
赤門クロスNo.86 |
今回はやや難しい問題です。クロスができ上がったら、二重ワクのなかの文字を適当に並べると、最近よく耳にすることばが出てきます。それが今回の答えです。がんばって解いてみてください。(出題S・S)
タテのカギ |
1.今年8月、わが国の――者数が過去最高に達しました
2.新聞は朝刊だけでいい、という声が強まってきています
3.アフリカの赤道直下にある国です。果物などは豊富で飢え死にする人はほとんどいませんが、エイズが深刻な問題となっています。首都はカンパラ
4.――木、主――、中――
5.――庁の不祥事は国民に大きなショックを与えました
7.酒を――、水を――
11.高齢化に伴い、――費も増大しています
15.実行の時日をのばすこと
17.「君が代は ――に八――に さざれ石の……」
18.――沢東
ヨコのカギ |
1.ゲーム理論で「――のジレンマ」という言葉があります
6.駒場まで自転車で――しています
7.――月、――光、――化
8.公共事業の配分・実施に巨大な力をもつ現場の実力者は建設――集団といわれています
9.入試の時は、寒さと緊張で――が来るものです
10.釈迦、孔子、イエス・キリスト、マホメットは――聖人と呼ばれています
12.――鶴、――姫、――子
13.政党内部の保守派
14.――王、――宮、――門
16.駒場では、もうすぐこの木の葉が黄色くなります
19.最近では、民間の会社も国家資格を持つ――士を置いて、独自の予報を公表しています
応募方法 |
誰でも応募できます。答えを「東大新報 赤門クロスワード係」に送って下さい。住所・氏名・電話番号・大学(職業)・学部・学年(年齢)、紙面に対するご意見、ご感想をお書き添えください。
プレゼント |
正解者の中から抽選で10名の皆さんに「東大グッズ」をプレゼントします。当選者の発表は賞品の発送をもって替えさせていただきます。締め切りは10月22日(木)です。どんどんご応募下さい。
「赤門ひろば」はひろく学生、教官、OBの方々からの意見を交換する場です。 政治、経済、大学問題など様々な分野についての自由なご意見をお待ちしています。
◇文章の長さは500字以内▽写真、コント、イラストなどもお待ちしています。 |