Sight & Sound system |
"もっと速くパソコンのキーボードを打つことができたら…" レポートに追われながら、そんなことを考えているキミにピッタリの朗報だ。ブラインドタッチを短時間で本当にマスターできる方法があったのだ。一日体験レッスンを受けてきた様子をここに紹介する。 |
駒場の情報教育棟で毎日パソコンを利用している教養学部生も多いだろう。我が国は欧米に比べてワープロやパソコンが普及するのが随分遅かった。しかし、ようやく十数年前から普及し始め、最近では学校や家庭にも急速に拡がりつつある。本学でも、個人的にパソコンを購入してレポート作成等に利用している人も多いと思う。
ところで、キーボードを打つスピードは十分速いだろうか。ブラインドタッチはできているだろうか。"そこそこ速く打てるからまあいいや"と、入力スピードの重要性まであまり考えが及んでいないかもしれない。
しかし、もし今の3倍のスピードでキーボードを打つことができたらどうだろうか。たとえば、6時間かかって入力していたレポートを2時間で仕上げることができたら…。そんなことが、たった13時間のレッスンで可能になるのが、「サイト&サウンドシステム」なのだ。
昨年本紙で、サイトアンドサウンドカレッジ理事長兼校長の伊達則彦氏(昭和29年本学法学部卒)の寄稿を紹介した。それを読んで、ブラインドタッチの重要性を感じた読者も多かったと思う。そこで、本紙記者が実際にサイトアンドサウンドカレッジを訪ねて、一日体験レッスンを受け、伊達校長から直接話を聞いてきた。
場所は銀座。駒場の語学教室ぐらいの広さの部屋に机が並んでいる。すべての机の上にレッスン用のタイプライターが置いてある。一番右の列の真ん中あたりに座ってみた。
まず驚いたのは、キーボードに文字が書かれていないことだ。アルファベットやひらがなが書かれていないのである。これでは、いやがおうでもブラインドタッチをせざるを得ない。なるほど、よく考えたものだ。
教室の前の黒板には赤、青、黄、緑に色分けされたキーボードの図が映し出されている。ヘッドホンをつけると、「A、NOW、B、NOW、C、NOW…」と、テープから流れる声が聞こえてくる。それと同時にA、B、Cのキーの位置が光る。光と音のリードによる、リズミカルな指のレッスンだ。これなら、無理なくごく自然にキー配列が覚えられる感じがする。
20分ぐらい経ち、少し慣れてきたところでやめた。
「キーボードに文字が書かれていないのは驚きましたが、やってみるとすぐ慣れてきますね」と感想を述べると、伊達校長は「文字がないのは、キーを見ないで打つことを習慣化するためです。ですから、指がキーを完全に覚えるまで自宅練習は禁止です」という。つまり、予習や復習の必要はなく、もちろん宿題もない。また、ワープロやタイプライターを購入する必要もないというのだ。ありがたいではないか。
しかもレッスンは1日たったの60分。スケジュールに合わせて好きな時間帯が選べる。基礎コースは前半7時間、後半6時間の計13時間だ。基礎コースを修了すると、1分間に15〜20Wordsの実力がつくという。
今では、多くの一流企業が社員研修に採用し、大手総合商社では、このサイトアンドサウンドカレッジの卒業証書がなければ入社できないという。さすがに多くの企業が、ブラインドタッチや入力スピードの重要性に気がついているようだ。
このブラインドタッチの訓練法は、今から30年以上前に、英国で開発されたサイトアンドサウンドシステムという方法だ。文字通り光と音のリードによる独特の視聴覚教育方式なのである。欧米でブラインドタッチを完全にマスターするには6カ月かかるというのが通説だった。しかしこのシステムによる教育成果は、世界最大のキーボード教育機関として国際的に認知され、多くの企業、官公庁でも実証済みだと言う。
伊達校長は言う。「そろそろ日本人の半分くらいの人がパソコンを使う時代になります。ひとり1日平均2時間キーボードを使うと、5000万人の2時間で、1日1億時間、つまり1年間に約300億時間で、ある一定の仕事をしているという計算になります。これを人件費に換算して、1時間当たり低めに1000円を乗ずると30兆円になります。
これを、例えばイギリスと比較すると、彼らはこの同じ仕事を間違いなく我々の半分の時間でこなしているでしょう。すると、30兆円の半分、15兆円で同じ仕事を完成していることになり、その差15兆円が、1年間の国家的損失となるはずです。阪神大震災の損害が9兆円と言われていることと比較してもいかに膨大なロスが日本全体で発生しているかがわかります」。
パソコンを使う人がどんどん増え、使う時間もどんどん増えるのは間違いない。だから、このままでいけば、この国家的ロスは今後増えることはあっても減ることはない。
まさに、ブラインドタッチが日本を救うと言っても過言ではないのだ。
「日本の未来のために、本当は東大生全員にやってほしいんです。やがて指導的立場に立つ東大生が、この重要さを認識してほしい」と伊達校長は訴えていた。
(司)