遺伝子治療

肝臓がんも承認

 本学医科学研究所付属病院の遺伝子治療臨床研究審査委員会(委員長・黒木登志夫昭和大学教授)は20日、同研究所の武藤徹一郎教授らが申請していた肝臓がんの遺伝子治療の実施を承認した。今後、厚生省、文部省に申請し、審査を受ける。医科学研究所では現在、谷憲三朗助教授らが腎細胞がんの遺伝子治療を進めているが、肝臓がんの遺伝子治療の承認は国内で初めて。
 武藤教授によると、これまでの治療法では効果が期待できず手術もできない肝臓がんで、がん抑制遺伝子p53に異常がある6人の患者が対象となっている。
 p53を組み込んだアデノウイルスを患者の肝動脈から直接投与し、がん細胞の縮小効果を狙う。投与は連続して5回行い、その後4週間で経過を観察する。うまくいけばp53の働きにより、がん組織の増殖抑制や縮小が期待できるという。


本学と環境研

大気の微粒子分布を再現

 焼き畑や砂漠、化石燃料の消費などによって大気中に放出された微粒子について、地球規模での拡散状況を再現するシミュレーションモデルの開発に、本学気候システム研究センターと国立環境研究所の共同チームが成功し、20日から仙台市内で開かれた日本気象学会で発表した。
 共同チームは大気中に放出された微粒子について、各国の石油消費量や森林火災などから想定した発生源と発生量、大気中での滞留時間や化学反応も考慮して数値モデルを作成。これに地表での風速など実際の気象データも取り入れ、動きを予想した。
 その結果、北半球中緯度の工業地帯からは化石燃料の使用などによる炭素粒子や硫酸塩粒子、アフリカのサバンナや南米では焼き畑による炭素粒子、サハラ砂漠やゴビ砂漠からは土壌粒子が広範囲に拡散している状況が再現された。これらの分布状況は、人工衛星からの観測結果ともほぼ一致したという。