淡青手帳

第829号(2001年4月25日号)

 一年間のタイでの留学を終え、久しぶりに日本に帰ってきた。約一年ぶりに東大へ行き、学生たちの表情が随分緊張しているなと感じた。高校生と違い、大学生はすべてにおいて「自己管理」が要求されるので、慣れない一年生などはプレッシャーを感じるのかもしれない。

 それに比べ、タイの学生の表情はもっと子供っぽく、のびのびしていた。社会は大学生のことを「子供たち」と呼び、学生自身も「子供」である自分たちの立場を自覚しているようであった。そこには「すべてを一人でやらねばならない」という気負いは感じられない。

 私の留学した大学では、学生一人に対し「面倒を見てくれる同性の先輩」一人が決まっていた。この「先輩」は「後輩」のさまざまな質問にのったり、時には手紙を書いて励ましてあげたりする。学生が孤独を感じないようにとの配慮から生まれたシステムである。下級生は折に触れ、プレゼントなどを通して「私の先輩」に感謝の意を示す。タイの大学生に求められているのは、こうした気配りや情の絆、そしてそれを受け止める素直さであったと言える。

 確かに、大人になること、自立することは大切である。しかし、円滑な人間関係のない自己管理能力はアンバランスだ。タイ留学を通して、人に頼ることも必要だと気付いた。

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