淡青手帳

第831号(2001年5月15日号)

 ゴールデンウィーク中に帰省し、久々にゆっくりと過ごしてきた。郊外に実家があることもその理由だろうが、思ったのは緑にあふれ、包まれているなと実感したこと。「東京は緑が少ない」という言葉を、二つの地域で住み比べて実感できた。

 改めて考えてみると、膨大な情報量に比べて、体験の絶対量が不足しているとしみじみ。講義や講演会などでも、それらを実際に体験してみて初めてその意味を理解できることが多々ある。逆に言えば、世間でよく聞く「勉強だけしていても…」に行き着く。体験とか経験をもって臨んで初めて、知識や情報の真の価値がわかるのではないだろうか。

 大学に入った当初は理学部にしか関心が行かなかった。しかし、大学一年の時に参加した海外ボランティアは、そのような価値観を一変させた。何もない川に大きな橋を建設する現場を見たのだが、交通量を飛躍的に増大させるであろうその橋を目の当たりにして、技術が社会に貢献する可能性の大きさを見せつけられたのだ。理学部に進んだ今も、工学や社会学の重要性に目覚めたあの時の体験が勉学に向かう動機の一部となっている。

 今は積極的に多くのことに触れるようにしている。そうすればそうするほど、あたらしく出会うことに新鮮な喜びが伴ってくる。

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