淡青手帳

第843号(2001年10月25日号)

 先日、機会あってOBの先輩にお会いした。先輩といっても今年で80歳を迎える大$謾y。年齢的にはちょうど祖父と孫といったところだろう。

 先輩はおもむろに色あせた古い国旗を取り出し、目の前に広げてみせた。多くの人からのメッセージらしきものが書かれたその国旗は、先輩が学徒動員で友人らに送り出される際に受け取ったものだという。多くのメッセージが連なるその中には、内田祥三第14代総長の名前も見つけ出すことができた。

 「学生時代」を送ったのは1年足らず。学生生活に慣れたかどうかという頃、出征の日はやってきた。「当時はそれが当然のような感覚だった」というが、それでも就職のこと、将来の夢、家族のこと…、その胸にはさまざまな思いが去来したに違いない。

 目の前で友人が死んでいく有り様など、戦争の生々しい話もうかがった。もちろん、書物を通して知識として知っていたことではあるが、体験者の口から聞くその話は実にリアルで、映像として脳裏に焼き付くほどだった。今のキャンパスの雰囲気からは想像だにできるものではなかった。

 歴史を生き抜いてきた先輩から直接話をうかがう機会は、今後ますます少なくなるだろう。それだけに、年代を越えた交わりの重要さを感じさせられたひと時であった。

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