淡青手帳

第844号(2001年11月5日号)

 博士課程の休暇を取り、自動車免許の合宿に行ってきた。授業のある今の時期には学生はあまり参加しないそうで、10人の入校生のうち学生は2人だった。メンバーは皆20歳前後だったが、ほとんどが中卒もしくは高卒の社会人。院生という立場はむしろ特殊だった。

 そんな皆と24時間生活を共にする中で、極めて感情むき出しの彼らの内に、情的生き物としての人間の姿を感じずにはいられなかった。日頃研究に没頭している中で忘れかけていた感触だ。一緒になって弾け、お互い素直な感情をぶつけ合った。なりふり構わず不平不満を言う人がいて憎らしく思うこともあったが、風呂場で背中を流したその夜、一緒の布団に入ってきたことが忘れられない。

 あっという間に2週間が過ぎ、別れの時が来た。一人早く日程を終え、皆に見送られ自動車学校を後にした。たった2週間とはいえ、慣れ親しんだ町、お世話になった先生方や食堂のおばちゃん、そして親しくなった仲間たちとの別れはつらく、涙が出てきた。見送ってくれた皆も泣いていた。

 全国から集まった、それまで全く知らなかった者同士が、たった2週間でこれほどまでに慕わしくなるとは思ってもみなかった。「やっぱり人間って素晴らしい」、そう思わずにはいられなかった。

844号記事一覧へ