淡青手帳

第849号(2001年12月25日号)

 ある授業中、先生が本を一冊紹介してくれた。授業後、図書館でレポートの資料を探していたところ、紹介された本が偶然目に入った。ほんの気分転換のつもりで読み始めたのだが、気づいてみればもう帰る予定の時間。時を忘れて読みふけってしまった。恥ずかしい話だが、これだけ読書に没頭したのは久しぶりだった。

 小学校の頃までは、絵本にはじまって児童文学まで、結構読み漁った。いわゆる文学作品を読まなくなったのは、中学時代に漫画や娯楽小説に傾倒してからだろうか。そして、そのまま大学までなだれ込んだ気がする。現実離れした夢の世界に簡単に入り込むことができるのが、漫画の魅力だった。

 この種の本を読むことも、今ではめっきり少なくなった。興味や喜びを共有できる友人がいなくなったことも原因の一つだったが、自分の頭で考えられるようになったことが大きな理由だろう。漫画に没頭してきたのは現実逃避したいという気持ちの裏返しでもあったからだ。

 少しずつだが、現実を直視しても受け止めて消化できるようになってきたと思う。おのずと必要とする本も変わってきた。たぶん昔のままだったら、先生の紹介してくれた本には興味を持てなかっただろう。このことを通して、数年前と変わりつつある自分自身を発見できたことがうれしかった。

 

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