第854号(2002年3月5日号) |
「参加することに意義がある」と言われる「平和の祭典」オリンピック。しかし今回のソルトレイクシティ大会は、むしろ「抗議することに意義がある」とでも言うべき大会であったのではないだろうか。 事の発端はフィギュアスケートでの審判の採点不正疑惑。フランスの審判が「ロシアから圧力があった」と認めたため、初めはロシアペアに与えられていた金メダルがカナダペアにも与えられることとなった。 このIOCの異例の措置は北米メディアでは「選手の実力を正当評価した」として拍手喝采で迎えられたが、一方のロシアでは「北米メディアの圧力に屈した」とする批難の声。この事件が「抗議すれば判定が覆る」ことの前例にもなってしまい、他の競技でも各国から判定に対する多くの抗議の声が挙がることとに。その後判定が覆ることはなかったが、一度できた不信感は拭えず、むしろロシアの反米感情を煽る結果に。一時は閉会式のボイコット騒ぎにまで発展した。 一人の審判の不正疑惑がきっかけでこれだけ大きな騒ぎになってしまったことを思うと、人を審判する立場に立つ人には一層の公正さが求められることを痛感させられる。今回の大会を通して突きつけられた課題に対しどう答えるかがこの大会を「平和の祭典」にする一つの鍵だろう。
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