淡青手帳

第857号(2002年4月15日号)

 天気のいい日は趣味の散歩が楽しい。遠出するのもいいが、普段は歩かない近所の細い道を気の向くままに前進するのも意外な発見があるものだ。子供の頃近所を探検したときの気持ちに戻って散策すれば、自分のテリトリーが下宿の狭い部屋からその地域全体に広がっていくのを感じる。学生時代の一時的な滞在であっても、意外にも簡単にその地域との関係をもつことができてしまう。

友人が何人かを集めて、落書きされた寮の塀を数年ぶりに塗り替えたところ、道行く人や近所の住民の反応が予想以上によかったという。これを機にもっと地域住民と交流をもち、学生という立場を生かして貢献していけるような活動を計画中だそうだ。

大学生がサークルやバイトに力を入れる理由の一つに、居場所や所属を求めてというものがある。確かに特に一人暮らしの場合、しっかりした人間関係を確保できる居場所が身近にあるかどうかは結構重要な問題だ。しかし受け入れてくれるから所属しているという場所だけが居場所だろうか。それ以上に必要とされているから関わりを持っていくという場所をもつことができたら、それこそ本当に意味のある居場所となると思う。いや、実はそれは「場所」というよりも、個人の心の持ちようによるのかもしれないが。

 

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