淡青手帳

第875号(2002年12月5日号)

 現代日本の教育は混迷の中にあり、これから複雑多様化の一途をたどるだろう。「ゆとりの教育」が掲げられ創造性に目が向けられ、また活性化をねらって自由化・競争化の機運がある。

 これらの動向に対し、国内では経済力格差などによる教育機会の不均等が懸念されており、また欧米の教育動向は「厳格化」への風潮が高まっている。とはいえ、なにも教育だけに限ったものでもないが、我が国において創造性の啓発や、自由化、競争化に向けた流れが加速するのは間違いないだろう。

 創造性というときに大切なのは、興味へのきっかけを提供することだ。たとえば歴史の授業で、学校周辺の地域を題材に自らで調べさせ、身近なものから興味へのきっかけをつかませるというのも大いに結構である。その一方で、ひたすら魅力ある歴史の語り部に徹し、そうしてきっかけをつかませるというのも、一見逆説的だが大切なことだろう。

 一つの目標に対して方法論が一つだけ、ということは決してありえない。自由化はその代償として保護を弱体化させるものの、代価として多様性を提供する。そして結果に関して、人間一人一人に委ねられる側面を大きくさせる。従って、教育に限らないが、これからの社会では各人の向上意欲が鍵となる。無気力では駄目だ。

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