淡青手帳

第893号(2003年7月5日号)

 今年も蒸し暑い夏の季節がやってきた。暑さの中いらいらとしてしまうときもあるが、風鈴の音色を聞くと、心が和み、心なしか涼しくなるような気がする。

 風鈴の起源は中国。占風鐸(せんふうたく)と言われ、竹林に下げて風の向き、音の鳴り方で、物事の吉凶を占う道具で、日本には仏教などと共に渡来した。お寺の四隅にかかっている風鐸がそれで、ガランガランと鳴る音が厄除けとして使われ、その音が聞こえる範囲の住民には災いが起きないといわれた。平安、鎌倉時代の貴族の間では縁側に下げて、外から疫病神が屋敷の中にはいるのを防いだと文献(六学集)に記されている。

 江戸風鈴といわれるガラス製の風鈴の出始めは、享保年間(1700年頃)とされている。長崎のガラス職人が広めたのだが、当時は値段のつけようがないほど高価なものとされていて、今のお金に換算すると、200万〜300万円ぐらいしたいわれている。ガラス製品が安くなり、家庭の軒先に飾られるようになったのは、明治20年頃からといわれている。

 暑い夏に一日中部屋を閉め切り、エアコンをかけて暮らしている人もいるのではないだろうか。そんな中、自然の風と風鈴で風情を感じながら、素朴に暮らしてみるのもいいのではないだろうか。

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