第895号(2003年8月5日号) |
長崎の幼児殺人事件の犯人は弱冠12歳。日本中が衝撃の渦に巻き込まれた。事件の残虐さゆえに、刑事責任を問えない少年法に対する批判の声も聞こえてくる。 1997年、神戸小学生連続殺人事件の犯人が14歳の若さであったことは記憶に新しい。当時も少年法改正の必要性が叫ばれ、少年法の対象は14歳に引き下げられた。罪を犯した少年が14歳、彼に刑事責任を問えなかったから14歳だったのか。しかしそれによっては今回の事件は防げなかった。では今度は12歳まで引き下げればいいのだろうか。 「殺人で被害者の全ての権利を奪っておいて何が加害者の人権か」という少年法批判の声をよく聞く。しかし「目には目を」的に刑罰を重くする方向に法律を改正したところで、それによって犯罪は減るのだろうか。 「法で裁かれるから」罪を犯さないのは、「怒られるから」掃除をする子供と同じ心理だ。しかし私たちは、怒られなくても誰も見ていなくても一人で掃除をする子供を見て偉いと褒めるではないか。「罪を犯さない」のは法によって裁かれるからではなく、私たち自身の中にある善悪の基準によって罪を犯すべきではないと知っているからであるはずだ。その善悪の基準を正しく育てることのできる家庭、社会であってほしい。
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