淡青手帳

第916号(2004年4月25日号)

 4月9日、三人の日本人がイラクで人質にされたという事件が、各紙の一面を占拠した。連日連夜、死傷者の絶えないイラクが日常の出来事になっていた日本国民にとっては、まさに寝耳に水だったのではないだろうか。7日後、政府の必死の努力もあって、三人の解放が確認されるに至った。

 ホッと胸をなでおろしたのも束の間、今度は保護された被害者側の言動に虚を突かれた。「イラクでの活動を継続したい」…。自己責任という名の下でなら、自分勝手が通用するとでも思っていたのだろうか。しかし、人はどこまでも社会の中に存在しており、どこにも所属しない完全な独立というのはありえない。一人の人が生きるのにどれだけの支えがあるのか計り知れないのだ。今回の事件は、「自由」が社会的な責任や原理原則を守って初めて成立するものだということを再認識させてくれた。

 新年度、大学生としての第一歩を踏み出した新入生のなかには、受験勉強を乗り越えて解放感を味わっている人も多いのではないだろうか。しかし、「自由」を履き違えれば、周囲に迷惑をかけることにつながるのは明らかだ。新入生には、大学への所属意識や自分の置かれた立場、責任を忘れることなく、大学生活を思いっきりエンジョイしていってほしい。

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