淡青手帳

第917号(2004年5月5日号)

 去る4月25日、プライドグランプリ2004開幕戦において一つの波乱があった。ケビン・ランデルマンが、優勝候補の一人であるミルコ・クロコップを破ったのだ。29日には全日本柔道100キロ超級決勝で、鈴木桂治が井上康生の4連覇を阻んでの初優勝を決めた。どちらも大方の予想に反しての勝利であった。

  試合後のインタビューがいい。ランデルマンにとって「戦うことは学校と同じ」だという。「何度も失敗し、新しいことを学ぶ」。試合の大勢を決めた左フックもまぐれではなかった。スタンドでの打撃は完璧とまで言われたミルコの左ハイキックを読み、パンチを合わせた。先の体重別選手権では、ライバルの井上を意識しすぎ、井上と当たる前に準決勝で敗れ、「自分自身にあきれかえった」とこぼしていた鈴木は、「勝つことよりも楽しむことを一番に考え、上を見ずに一試合一試合、目の前の敵にぶつかっていった」という。左手薬指を痛め、「不安や緊張もあった。でも逃げなかった」そうだ。

 普通ならば、投げ出してしまっていてもおかしくない状況だったと思う。ランデルマンも右上腕筋を痛めていた。ごまかしのきかないスポーツの世界であるからこそ、諦めないことの大切さを感じさせられた。

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