淡青手帳

第919号(2004年5月25日号)

 今年は5月9日が「母の日」だった。「母の日」は子供が母親に対する感謝の気持ちを捧げる日として、アメリカで始まったと言われている。日本でも「母の日」に際し、お店で母の日ギフトが売られたり、新聞には母親に対する感謝の思いが投稿されたりした。

 一方で、最近日本では凶悪犯罪が後を経たず、親が子を殺し、子が親を殺すようなことも起こっている。また各国の高校生千人を対象にしたアンケートでは、中国で66.2%、米国で46.4%が親の面倒をみると答えているものの、日本は15.8%にすぎず、日本人から親孝行の精神が失われつつあるということが伺える。

 昔から日本では、子が親孝行をすることは伝統的美徳であるとされてきた。明治時代に発布された「教育勅語」には、孝行が国民道徳の根本であることが諭されている。この「教育勅語」は戦後廃止され、平等主義、自主性尊重などが強調されるようになった。しかしその結果、秩序の崩壊やモラルの低下などの問題が生まれ、大切な孝行の精神も失われていった。

 自分のことを生み育ててくれた親に対する感謝と孝行の気持ちが、道徳の根本であることは、いつの時代も変わらない。そのような気持ちを持つところから、円満な家庭、平和な社会が築かれていくことだろう。

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