イチョウ精子発見100周年

記念フォーラムを開催

 本学の大講堂(安田講堂)で、「イチョウ精子発見百年記念市民フォーラムが」九日開催された。これは、本学の平瀬五郎助手(当時)が、本学理学部付属植物園の大イチョウで精子があることを初めて発見してから今年で百年をという記念の年を迎えることになり、開かれたもの。岩槻邦夫氏(日本植物学会会長・本学名誉教授)ら四人の識者を迎え、活発な論議が行われた。

 フォーラムにさきがけて、八日には本学山上会館で、国際シンポジウムが開催された。
 九日のフォーラムは、イチョウ精子発見百周年記念事業実行委員会と小石川植物園後援会の主催で行われた。
 花が咲き種子を生じる顕花植物からの精子発見は初めてで、世界の植物学者を驚かせ、日本近代科学の草創期の世界的な貢献に数えられている。このフォーラムで、この偉業をしのぶとともに、市民生活に深くかかわり、医療・健康分野でも注目を集めているイチョウの現代的な意義を追求した。
 まず、筑波大学生物科学系の堀輝三教授が、イチョウ精子の生態について、ビデオ映像を用いて報告。イチョウの精子の美しい遊泳の姿などは、まさに植物の神秘に迫る映像、と述べた。
 続いて、ミュンヘン大学医学部のミヒャエル・ハップス教授が、ヨーロッパにおけるイチョウの研究、特に人間の健康面への貢献について報告。ドイツやフランスでイチョウの葉のエキスの人間に対する効果が、臨床的に認められ、多くの人に支持されている。その薬品としての歴史や成分から、脳機能障害・痴呆症との関係などの理論について、ヨーロッパの現状について述べた。
 さらに、本学名誉教授で、日本植物学会の岩槻邦夫会長が、イチョウと人間の関わりについて報告。
 五年後に迫った新しい世紀の最大課題は環境問題である。激変する人間社会は、経済成長の名のもとに各方面の自然環境を破壊し、人類が生存を続けるための最低条件すら危機にさらされている。このような環境の変化のなかで、いまなぜイチョウが注目されているか。物言わぬ植物たちが、さまざまな警告を人類に伝えている、と述べた。
 最後に、パネルディスカッションが行われ、聴衆とともに、有意義な時間を過ごした。

駒場寮

地裁執行官が視察

駒場寮の周りには警備員が立った
 東京地方裁判所の執行官による駒場寮の現況調査と、占有権移転禁止仮処分の執行が、十日行われた。
 当日は、朝から寮の周りにロープが張り巡らされ、十数人の警備員が立ち並んだ。寮生以外の立ち入りが禁止され、執行補助者とガードマン、教官、寮生が立ち合いながら、柏木茂東京地裁執行官が、駒場寮のすべての部屋を視察。留守の部屋も鍵を外して中をのぞき、居住者の有無を確認した。
 その後、寮内の部屋で、執行官が寮生の代理人(弁護士)への説明を行い、裁判所の職員が、各寮の入口に仮処分の公示書を貼った。公示書の内容の大意は次の通り。
 債権者である国は、債務者である駒場寮生に対し、占有を他に移転したり、占有名義を変更することを禁止する。また、債権者である国は、債務者である駒場寮生の寮の占有を解いて、保管中である。ただし、債務者に限り、使用を許す。
 駒場寮は、今年四月一日に学部が使用を禁止。その後、寮内に居残る学生との対立が続いてきた。六月には寮生が他の建物から電気をコードで引き、学部側がこれを盗電行為として禁止措置を取るなど、トラブルが発生している。今回の調査は、寮生の寮占拠に対し、法的な手段も辞さないという学部側の固い意志を示したものといえよう。

コラム・淡青手帳

 南米において日本人といえば尊敬され、好印象を持たれている。税関も日本人というだけでたいした検査もなく通過できる。ところが近隣のアジア諸国では、日本人の評判は芳しくない。これは日本人がかつてその地域でどのような行動をとったかによっている▼南米にはじめて渡った日本人は現地の人々と協調し、生活の中に溶け込んでいった。ところがアジアの国々に対しては、軍国主義の下で植民化し、圧迫していった歴史をもっている。過去における先祖の行動の違いが、それぞれ異なった日本人観を形成させ、現代にもその影響を与えている。このように良き悪しき、好むと好まざるとに関わらず、過去の先祖の歴史の上に現在の日本が成り立っていることは忘れてはならない重要な事実である。これは今を生きる現代人にとって特に肝に銘ずべき教訓的な内容であろう▼旧約聖書にルツという女性の話がある。彼女は異邦人であるにも関わらず、その信仰によってイスラエル選民の血統に入った。以降彼女の後孫が選民となっていった▼はたして今の日本は後孫にどんな恩恵を残していくことができるだろうか。将来日本という国、そして日本人がどのような評価を受けるだろうか。全世界から尊敬と歓迎を受ける日本としていきたい。

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