842号(2001年10月15日号)

1面主要記事

■目標達成へ早急な対応を

京都議定書シンポ開催
本学弥生講堂

 京都議定書シンポジウム「京都議定書をめぐる日本の技術的対応」が4日、本学弥生講堂で開催された。当日はワールドウォッチ研究所長のフレイヴィン氏が米国テロ事件の影響で参加することができず、その基調報告が中止になるなど予定の変更もあったが、代わりに主催者の河野通方新領域創成科学研究科長があいさつを行い、同研究科と柏キャンパスの紹介などを行った。

 河野研究科長に続いて、同研究科の柳沢幸雄教授が「日本のエネルギー・オプション」と題して講演を行った。講演の中で柳沢教授は、現在確実に温暖化の傾向にあることをさまざまなデータを用いながら説明。その上で最近50年間の温暖化は人間活動によるものであるとし、21世紀においても気温の上昇が続くのは避けられないとの見通しを示した。これに伴う現象としてはいろいろなことが考えられるが、実際にどのような危険性があるのかについては未だ明らかになっていない。柳沢教授は我々が直面している課題として、温暖化の原因として産業界だけでなく民生、運輸自動車部門に起因するものも増えてきていることを指摘しながら、京都議定書の目標達成の厳しさの認識、国民の努力と負担の必要性、早急な対策への着手と更なる検討の必要性などを政府・国民に広く呼びかけた。  続いて、「CO2固定装置としての植物」と題してアジア生物資源環境研究センター長の飯山賢治教授が講演。植物が地球環境に及ぼしてきた影響について述べた。
 最後に林良博農学生命科学研究科長があいさつをしてシンポジウムを締めくくった。シンポジウムには大学という枠を越えて社会で活躍している人などさまざまな立場の人が集まり、講演内容に興味深そうに耳を傾けていた。


■たんぱく質を合成

難病克服の貢献期待
理学系研究科 横山教授ら

 本学大学院理学系研究科の横山茂之教授らは人工塩基を開発し、たんぱく質を合成することに成功した。これはs、yと命名した2種類の塩基物質で、互いに結合する性質を持つ。実際に試験管内で大腸菌のデオキシリボ核酸(DNA)にsを組み込んだところ、yを高効率で取り込むことが確認できた。さらにs-y塩基対から、天然には存在しないアミノ酸を含むたんぱく質を合成する実験手法も確立した。今回の研究成果はがんや糖尿病など難病を克服する新薬や遺伝子治療法の開発に貢献しそうだ。
 地球上のあらゆる生物はアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)という四種類の塩基物質から成り立つ。AはTと、GはCと互いに結び付く性質を持つため、遺伝情報を保持することができる。
 そこで横山教授らは天然の四種類の塩基以外に新たな二種類の塩基を開発し、合計六種類の塩基で塩基対形成ルールを規定する研究に着手した。
 研究ではまず、既存の塩基対が水素結合していることから、異なる様式で水素結合する塩基対を新たにデザインした。だが水素結合の様式を変えただけでは、既存の塩基と間違った塩基対を形成するケースも多かった。
 このため水素結合に加え、天然塩基とは異なる原子を新規塩基に導入し、立体的に天然塩基を排除する設計を試みた。その結果、安定的に互いが結合するs、y塩基をつくることができた。
 大腸菌を活用した試験管内のたんぱく質合成実験では、s-y塩基対を組み込んだDNAから非天然型アミノ酸を含むたんぱく質を合成できた。あらかじめ非天然型アミノ酸を運搬リボ核酸(tRNA)につけると同時に配列も新規塩基を含むように調整。DNA配列も新規塩基を含む配列にし、塩基配列の転写からたんぱく質の翻訳を実現した。
 合成したたんぱく質を解析したところ、目的とする部分に非天然型アミノ酸の存在を確認できたという。


■児矢野好投見せる

 惜しくも逆転で連敗
 東京六大学野球秋季リーグ戦

 東京六大学野球秋季リーグ戦第四週の対戦が行われ、東大は今季開幕4連勝中の慶大と対戦した。
 一回戦、東大は4回に入山、児玉、増山の3連打で1点を先制。先発の児矢野も6回と3分の1を3失点に抑える好投を見せたが、打線が追加点を挙げられずに惜敗。二回戦も東大が増山の二試合連続となるタイムリーで先制したが、中盤で投手陣が慶大打線に捕まり大量失点、二試合連続の逆転負けを喫した。

◇一回戦
東大
 000100000 1
 00000120× 3
慶大
 勝 長田(2勝)
 敗 児矢野(3敗)

◇二回戦
慶大
 001261000 10
 010000000 1
東大
 勝 清見(3勝)
 敗 浅岡(2敗)


■キャンパス情報

★第1回東京大学東洋文化研究所公開講座「アジアの藝」
▽日時 12月1日(土)、2日(日) 13時〜16時30分
▽会場 東洋文化研究所・大会議室
▽講義日程
◎12月1日 画藝「ヨーロッパでも、日本でも、インドでもない、中国の絵画とは?」
 講師:小川裕充(東アジア第二研究部門教授)
工藝「絢爛たるイスラーム建築」
 講師:羽田正(西アジア研究部門教授)
◎12月2日
陶藝「焼き物の魚、アジアを泳ぐ―工藝と美の人類学・ことはじめ」
 講師:松井健(汎アジア研究部門教授)
文藝「中国小説に学ぶ知恵」
 講師:大木康(東アジア第二研究部門助教授)
▽聴講料 無料
▽受講資格 高校生以上(定員50名、応募者多数の場合は抽選)
▽応募方法 ハガキまたはEメールで(住所、氏名、電話番号、1日のみの場合は希望の受講日を記入、10月31日必着)
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学東洋文化研究所研究協力掛
E-mail:koza@ioc.u-tokyo.ac.jp



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 専務理事
 黒田 瑞夫 氏

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財団法人オイスカ
 事務局次長
 亀山 近幸 氏