850号(2002年1月15日号)

1面主要記事

■「寛容な精神必要」

サンギネッティ氏講演会開催
学士会館分館

 本紙は11月27日午後5時半より、学士会館分館6号室において、フリオ・マリア・サンギネッティウルグアイ前大統領を招いて講演会を開催した。講演会には学生ら百人以上が集まり、会場は立見が出るほどの盛況だった。(6、7面に関連記事)

 講演に先立ち、来賓の今井圭子上智大教授が挨拶を行った。南米の政治経済学が専門の今井教授は、ウルグアイの紹介を行いながら、サンギネッティ氏を「民主化を推進し、経済を立て直した、南アメリカを代表する大統領」と紹介した。またウルグアイが親日的な国であり、サンギネッティ氏がウルグアイの大統領経験者としては初めて訪日したことに触れ、今回の訪日の意義を説明した。
 続いて、サンギネッティ氏が講演を行った。その中で同氏は、昨年9月11日のアメリカでの同時多発テロをドグマや原理主義同士の衝突であるとし、これからはさまざまな思想が共存できるような社会を構築する必要があると述べた。そのような社会を構築するためには寛容な精神を持つ必要があるとした上で、「これは一つの結論ではなく提案である。学生にはこうしたことをもう一度考えてほしい」と訴えた。
 最後に質疑応答の時間が持たれ、講演会は幕を閉じた。
 講演会終了後はサンギネッティ氏や来賓を囲んだ晩餐会が行われ、交流の場が持たれた。
 講演会に参加した学生からは、「一国の元首を務めただけあって、その言葉に重みを感じた」などの感想が聞かれた。


■マイクロチップ開発

 医薬創薬分野への応用期待
生産技術研究所藤井助教授ら

 本学生産技術研究所の藤井輝夫助教授らの研究グループは、シリコーンゴムを材料としたマイクロチップを開発し、それを用いたDNAの電気泳動分析などに成功した。従来のマイクロチップはマイクロ流路構造を持つのみだったが、今回シリコーンゴムとガラスとのハイブリッド構造を採用することで、温度制御や電気泳動のための電圧印加が行えるようになり、さらに低コスト化も可能だ。
 藤井助教授らの研究グループでは、半導体微細加工技術を応用して製作したマイクロチップを用いる反応分析技術の開発を行ってきた。この技術は従来の化学実験で用いられてきたビーカーやフラスコ、試験管等の反応容器を、マイクロチップ上に形成した微小構造に置き換えて、反応や分析を行おうとするもの。
 半導体加工技術は一般にはシリコンを材料とするが、藤井助教授らはPDMSと呼ばれるシリコーンゴムを用いてマイクロチップの製作を行った。PDMSチップはフラットな表面に対する自己接着性があるため、大きな内圧を必要としない用途の場合には、貼り付けるだけで微小な構造を十分にシールすることができる。
 このPDMSチップとガラス基板からなるハイブリッド構造を製作し、DNAの電気泳動分析を行ったところ、従来のスラブゲルを用いる方法に比べ、10倍以上の高速化に成功した。PDMSとガラス基板とのハイブリッド構造を用いた場合、PDMSチップのみの交換が可能な上、ガラス基板については繰り返し使用することができるため、実験を安価かつ迅速に行うことが可能だ。
 藤井助教授らはPDMSチップを用いた生体外蛋白質合成反応なども成功させており、今後医療や創薬などの分野での応用が期待される。


■増倍管に微細な傷

 スーパーカミオカンデ事故

 本学宇宙線研究所の観測施設「スーパーカミオカンデ」で光電子増倍管が約6800本破損した事故で、事故調査委員会(委員長・吉村太彦宇宙線研究所長)は、保守点検の作業ミスなどで増倍管に残されたごくわずかな傷が事故の原因であるとの見解を示した。
 同委員会が破損を免れた増倍管を調べたところ、ガラスの付け根の電極付近に物をぶつけたような傷があり、ひびが入って壊れやすくなったものが見つかった。最初に破損したと見られる観測装置の水槽底面にあった2本の増倍管にも同様の傷があり、さらに余分な力がかかったことで壊れやすくなった可能性が高いと判断した。
 同委員会では、今後防止策に重点を置いて年内の観測再開を目指す。防止策としては、衝撃波による連鎖反応を防止するという観点から、すべての増倍管に透明のアクリルカバーを装着することなどを検討している。


■不審火相次ぐ

 工学部・豊島寮

 昨年12月下旬に、本学工学部と豊島寮で不審火が相次いだ。
 12月20日午後3時過ぎ、工学部5号館6階の男子トイレ内にあったトイレットペーパーが燃えているのを学生が発見した。その後も2、3、5、7階の男子トイレのトイレットペーパー、2階学生控室のごみ箱、6階階段踊り場の新聞紙が焼けているのが見つかったが、いずれも学生らが消し止め、けが人はなかった。
 25日未明には、豊島区西巣鴨の本学豊島学寮東棟から出火、木造二階建て約300平方メートルを半焼した。出火した東棟は近く取り壊す予定で空家になっており、けが人はなかった。
 いずれも火の気のない所から出火しており、警視庁は不審火と見て調べている。


■本紙代表顧問 湯浅明名誉教授死去

 湯浅明氏(ゆあさ・あきら=本紙代表顧問、本学名誉教授)5日、心筋梗塞のため死去、94歳。
 1907年、長野県に生まれ、32年本学理学部植物学科卒業。37年理学部大学院博士課程修了、49年より本学教授となる。33年より日記を欠かさず書き続け、植物観察の記録をまとめた書物を多数出版しており、東大新報出版会からも「花だより」を出版。



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