860号(2002年5月15日号)

1面主要記事

■高強度X線に新手法

エネルギー変換効率向上
本学原子力工学研究施設等研究グループ

 本学原子力工学研究施設の上坂充教授と日本原子力研究所(理事長・村上健一氏)の光量子科学研究センターとの研究グループは、超短パルスのペタ(1ペタは1000兆)ワット級レーザーをガスや固体に集中照射することによってエネルギーの3分の1以上がX線に変換され、ペタワット級の高強度極短パルスX線が発生する現象を新しいシミュレーション技術を使って発見した。物質を原子スケールで解析するための高強度X線源などへの利用が期待できる。

 高強度のレーザーをガスや固体に照射することでX線が発生することは既に知られている。しかし、電磁場中での複雑な電子の運動を利用する高強度X線発生法ではX線強度が最大でも入射レーザー強度の1000分の1程度にしかならないことが理論的に示されている。研究グループが実証したのは、極短パルスのペタワットレーザーを直径数マイクロ(1マイクロは100万分の1)メートルに集光し、固体に照射する方法。高エネルギー電子が自ら生み出す電磁力効果を考慮した「ディラック・ローレンツ方程式」に基づく粒子シミュレーションを行った。
 電子やイオンのように電荷を持った粒子は、自ら発生する電磁波によって影響を受けるが通常は無視できる。しかし、密度の非常に高いプラズマ中で、レーザー光の強度が一平方マイクロメートル当たり100兆ワットを超えるとこの効果が重要になってくる。ペタワットレーザーによって、このような超高強度の状態が実現可能になってきている。シミュレーションでは、同500兆ワットを超える強度になると、レーザーエネルギーの2分の1以上がプラズマに吸収され、そのうちの2割以上がX線に変換される。さらに同1000兆(1ペタ)ワットになるとレーザーエネルギーの3分の1以上がX線に変換し、そのX線の光子エネルギーは100キロ電子ボルト程度と評価された。
 高エネルギーの超短パルスX線源の可能性が見出されたことで、核異性体励起によるγ線生成、原子スケールでの構造観察、原子の内殻励起や中空原子生成による短波長X線レーザー発振などへの応用が期待できるという。


■リース化で産廃削減

 リフォームに新提案
本学生産技術研究所野城教授

 本学生産技術研究所の野城智也教授は8日、記者会見を行い、建築の骨組みや構造体(スケルトン)を残し、内装・設備(インフィル)部分のみを交換するSI(スケルトン・インフィル)工法に、インフィル部分のリースを組み合わせた新しいビジネスモデルを発表した。
 日本の建築物は、構造体が寿命に達する前に、設備が古くなり、使い勝手が悪いなどの理由で壊され、大量の建設廃棄物を出している。日本の鉄筋コンクリート(RC)造の建物は寿命が約40年で、米国の約100年に比べ半分以下と短く、資源を無駄にしている。このような現状に対し、野城教授は、インフィルをリースで使いまわす新たなビジネスモデルを提案している。骨組みを残し内装だけを変えるインフィル方式そのものは、20年前から存在する技法ではあるが、今一歩普及してこなかった。その理由として、野城教授は新築をターゲットにした販売戦略に問題があったと指摘、インフィルを既存の建物にも適用できるようにガスや水道などの配管関係をコンポーネント化すると共に、インフィルのリース化によって、取り壊しによる資源の無駄を抑えたいとしている。
 同プロジェクトは文部科学省からの補助を受け、(1)契約モデル(2)情報ツール(3)インフィル部品の三つの観点から研究を進めている。
 契約モデルについては従来の不動産業界で一般的な売り切り型に対して、設備などを提供して対価を得る「サービス・プロバイダー」を基本コンセプトに、業務の手順などを具体化している。今後さらにリース契約条件の細部をつめ、顧客管理などの情報システム開発を進める。
 ハード面では、住宅設備の業界団体、リビングアメニティ協会の協力を得て、人工物工学研究センターの建物内に二重床の構造を作り、システムキッチンやユニットバス、トイレなどの配管が取り外しやすいインフィルシステムを試作した。キッチンやトイレなどの基幹配管を一カ所に集中して水栓の着脱だけで取り外せるようにして工夫し、リサイクルをしやすくしている。すでにビジネスモデル特許を出願しており、開発が終了する2003年度以降、出資者を募って実際の事業展開に移行したいと考えている。


■全都新入生歓迎フェスティバル開催

 全都新入生歓迎フェスティバルが12日、本学駒場キャンパスを会場に開催された。東京都学生自治会連合会が主催するこの祭典は、新フェスの通称で知られており、1977年にはじめて開催されて以来今年で26回目を迎える。都内の大学の新入生らがクラスごとに模擬店等を出し、親睦を深めるもの。会場確保等の事情から今年は開催が危ぶまれていたが、最終的には7年ぶりに本学駒場キャンパスで開催されることになり、本学からの61クラスを含め計70クラスが模擬店を出店、昨年を上回る規模での開催となった。参加した学生らはそれぞれ趣向を凝らしてデザインしたTシャツなどをそろえ、賑わいを見せた。なお学術・文化企画は日時、会場をかえて、一橋大学で19日に開催される。そこでは有事法制や、狂牛病、ジェンダーをテーマにした分科会と、元HIV訴訟原告の川田龍平氏を迎えてのパネルディスカッションが行われる予定。



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