891号(2003年6月15日号)

1面主要記事

■公共政策大学院 説明会を開催

政策形成に携わる人を育成

 来年4月に新設予定の「公共政策大学院」についての説明会が5月29日、法学部25番教室で行われた。この大学院は、公務員をはじめとする政策の形成、実施、評価の専門家を養成する大学院修士課程として、法学政治学研究科と経済学研究科が創設する専門職大学院で、同時期に創設される法科大学院が法曹の専門家養成を目指すのに対し、公共政策大学院では政策プロフェッショナルの養成を目指す。

 法学部、経済学部では、これまでも多数の公務員をはじめとする公共政策の形成や実施に携わる人材を輩出してきた。これらの人々は、これまでは採用の後、仕事をこなしながら長い年月をかけて技量を身につけ、実務家へと育て上げられてきた。しかし、産業構造の変化や少子高齢化、国際化など社会情勢が目まぐるしく変わる現在においては、政策形成に携わる人々は次々と新しい現実に対処しなくてはならない現状にあり、これまでの人材養成方法では通用しなくなってきている。そのため、法学政治学研究科と経済学研究科は、一官庁、業界の枠を越えた「公共」の立場から物事を判断できるスペシャリスト養成のための「公共政策大学院」の設置を決めた。
 公共政策大学院では、@時代が直面している課題を的確に捉え、対応策を作り上げる能力、A政策を政治・法・経済の諸側面から分析し評価する能力、B広く社会にそれらを伝え、合意を築き上げる能力、などの知識を応用しながら課題を解決、政策を立案する能力を持った人材の育成を目指す。修業年限は2年で、修了者には「公共政策学修士(専門職)」の学位が認定される。授業は法学政治学研究科、経済学研究科の教授陣にとどまらず、外部から実務家教員を招いての授業も行われる予定。定員は100人で、法政策、公共管理、国際公共政策、経済政策の4コースが設けられる。
 入学者選抜は、願書審査、語学試験(英語はTOEFL)、専門試験、面接による総合評価で行われる。実施時期は12月が予定されているが、詳細については決定し次第発表される。また、職業人や外国人向けの試験も実施される。


■堤教授に停職1カ月

 不正流用は2252万円

 医学系研究科の堤治教授が国から支給された補助金を不正流用した問題で、本学は3日の評議会で、堤教授に停職1カ月の懲戒処分とすることを決めた。
 医学部の調査委員会によると、堤教授は1998年から2002年の5年間に、研究費補助金として支払われたうちの約2252万円について、個人口座にプールするなどの不正流用があったことが明らかになった。そのため調査委員会では2日までに堤教授に対し、停職が相当との懲戒処分案をまとめ評議会に報告、3日の評議会で了承された。
 また2250万円の内訳について調べたところ、架空の賃金支払いなど明らかな不正が650万円に上った。そのため、この650万円に利子を加えた800万円と、未使用の680万円などを国庫に返納することとなった。
 公務員の懲戒指針では、公金の不適切な処理に対しては通常減給または戒告を科しているが、今回は金額が高額に上るなどの事の重大さに鑑み、処分を一段階上の停職に引き上げた。また、当時監督責任のあった桐野高明前医学部長を厳重注意、一部の研究費に関わった武谷雄二教授を注意とする処分も発表された。
 この件について堤教授は、医学部の調査委員会を通じ、「私的流用はないが、不適切な処理をしたことを深く反省しています」とのコメントを発表した。


■ソフトウェアの研究発表

 加藤千幸教授ら

 生産技術研究所は5月29日、記者会見を行い、今月初旬に一般公開した最先端シミュレーションソフトウェアの研究のうち三つのソフトウェアについての発表を行った。
 この「戦略的基盤ソフトウェアの開発」プロジェクトは、昨年度から5カ年計画でスタートしたものであり、本学生産技術研究所計算科学技術研究センター長の加藤千幸教授が開発拠点となり、本学大学院工学系研究科、国立医薬品食品衛生研究所、独立行政法人物質・材料研究機構、高度情報科学技術研究機構、アドバンスソフト株式会社などとの産学官連携により、@次世代量子化学計算、Aタンパク質・化学物質相互作用解析、Bナノシミュレーション、C次世代流体解析、D次世代構造解析の五つの物理化学シミュレーションソフトウェアと、それらの大規模計算を将来のコンピュータ・ネットワーク環境で効果的に運用するための基盤情報技術として、E統合プラットフォーム、FHPC(スーパーコンピュータなどの超高速計算機を使ったシミュレーションを指す)ミドルウェアの実証開発を進めている。昨年度開発を完了した部分について、ソフトウェアのソードコースを一般公開した。
 その中で、アドバンスソフト株式会社主事研究員の谷森奏一郎氏は、タンパク質−化学物資相互作用解析システム「ABINIT-MP BioStation」の中核である分子間相互作用解析プログラム(ABINIT-MP)および解析・表示プログラム(BioStation Viewer)を公開した。これらのプログラムを利用することで、タンパク質が分子を認識するメカニズムの解明に役立つだけでなく、医薬品などの開発にも有用な情報を得ることが期待でき、またABINIT-MPを用いて、SARSウイルスのタンパク質分解酵素阻害剤のスクリーニングを行っていると発表した。
 加藤教授はこのプロジェクトについて、「産学官連携の全く新しい試み」だと語っている。



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