酒井助教授らが考案したのは、ヒト肺胞由来の細胞を気液界面培養する肺胞モデル。このモデルは、ガス中に懸濁されているSPM粒子を肺胞内壁に沈着させるもの。国内で採取されたSPM試料を直接このモデルに曝露したところ、細胞生存率が負荷量に応じて低下したことから、この手法で毒性評価が可能であることがわかった。 しかし実際には、肺胞には障害を与えなくとも、長時間の曝露で徐々に体内に取り込まれたSPMが他の臓器に影響を与えることもある。そのため酒井助教授らは、このモデルを用いて内壁への負荷量に対する体内への取り込みを評価するモデルを考案した。これは、培養した肝臓細胞に含まれる「チトクロームP450」という酵素量によって生体に対する影響を評価する方法で、イルカやクジラに対してはすでに用いられているもの。この酵素量をもとにSPMの体内への透過率を計算したところ、48時間以内に10〜20%の化学物質が体内に取り込まれることがわかった。 さらにこれら一連のモデルを拡張したところ、生涯10%の確率で肺がんになるSPMの大気中濃度が1立方mあたり0.695mg程度であることがわかった。この拡張自体は「ラットとヒトが同様の確率で肺がんになると仮定するなどの強引なもの」(酒井助教授)だが、それでも米国環境保護庁のヒト発がん予測環境濃度の一立方bあたり0.5〜1.0mgなどと比べ、妥当な値が得られている。
■PTSDに脳が関与 治療法開発に突破口 医学部附属病院 加藤 進昌 教授ら 医学部附属病院の加藤進昌教授(精神神経科)らは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になった人はならなかった人に比べ、感情を制御する脳の「前部帯状皮質」という部分の体積が小さいとの調査結果を発表した。 加藤教授らは、95年3月に起きた地下鉄サリン事件の被害者25人の協力を得て、PTSDと診断された九人とそうでない16人の脳を、磁気共鳴断層撮影(MRI)で調べた。その結果、脳の他の部分は差異がないのに対し、PTSDの9人は左脳の「前部帯状皮質」の体積が小さいことが明らかになった。また、症状が重い人ほどこの部分の体積が小さいこともわかった。 前部帯状皮質は幅1cm、長さ3〜4cmの大きさで、恐怖や不安などの感情をコントロールする部分とされている。研究グループは、この部分が小さいと、過去の体験を思い出した時に恐怖などを十分抑えることが難しくなるのでは、との見方を示している。 PTSDについては、これまで記憶に関与する「海馬」と呼ばれる部分が発症に関わっているとの見方もあったが、今回の調査ではこの部分についての差は見られなかった。 PTSDが原因で小さくなったのか、もともと小さかったために発症したのかは現時点では不明だが、これまで実態がわかっていなかったPTSDに脳の組織的変化が関わっていることが示されたことで、診断法や治療法開発の突破口になることが期待されている。 ■科研費を不正流用 国際・産学共同センター教授 国際・産学共同研究センターの教授が、文部科学省から交付された科学研究費補助金(科研費)のうち、本来は研究に携わった大学院生らに支払われるべき「謝金」を回収し、研究室にプールしていた疑いがあることがわかった。本学では内部調査委員会を設け、関係者から事情聴取を始めている。 この教授は、1999年度から2002年度にかけ、文部科学省から科研費約1億470万円を受け取った。この中には大学院生らに払われる謝金580万円も含まれていたが、教授はこの謝金を回収し、研究室の口座にプールしていた。また研究に携わっていない院生らに謝金を振り込ませ、回収していた疑いも持たれている。 科研費を巡っては、先月、医学系研究科の堤治教授が、院生に支払われた謝金を寄付させ教授名義の口座に移す不正流用を行ったとして、停職一カ月の懲戒処分を受けている。 ■空きビルが住居に 再利用システムの実験展示 生産技術研究所 野城 智也 教授ら 生産技術研究所の野城智也教授らは、建物の中身(インフィル)を動産化することにより空きビルを住居として再利用するシステムを考案し、その実験展示を行った。 今回展示されたのは、中央区にある空きビルの二階に、野城教授らが開発した取り付け取り外し可能なキッチンユニット、トイレユニット、バスユニットが取り付けられたもの。配管や配線などはビルが建設された時に決まっているものなので用途変更の上では問題となるが、これらは圧送ポンプを利用するなどして克服した。 このプロジェクトは、バブルの崩壊によって増えてきた利用価値のない空きビルに取り付け取り外し可能なトイレ、キッチンなどのユニットを取り入れることによって、空きビルの利用価値を高めることをねらいとしている。
医学部附属病院の加藤進昌教授(精神神経科)らは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になった人はならなかった人に比べ、感情を制御する脳の「前部帯状皮質」という部分の体積が小さいとの調査結果を発表した。 加藤教授らは、95年3月に起きた地下鉄サリン事件の被害者25人の協力を得て、PTSDと診断された九人とそうでない16人の脳を、磁気共鳴断層撮影(MRI)で調べた。その結果、脳の他の部分は差異がないのに対し、PTSDの9人は左脳の「前部帯状皮質」の体積が小さいことが明らかになった。また、症状が重い人ほどこの部分の体積が小さいこともわかった。 前部帯状皮質は幅1cm、長さ3〜4cmの大きさで、恐怖や不安などの感情をコントロールする部分とされている。研究グループは、この部分が小さいと、過去の体験を思い出した時に恐怖などを十分抑えることが難しくなるのでは、との見方を示している。 PTSDについては、これまで記憶に関与する「海馬」と呼ばれる部分が発症に関わっているとの見方もあったが、今回の調査ではこの部分についての差は見られなかった。 PTSDが原因で小さくなったのか、もともと小さかったために発症したのかは現時点では不明だが、これまで実態がわかっていなかったPTSDに脳の組織的変化が関わっていることが示されたことで、診断法や治療法開発の突破口になることが期待されている。
■科研費を不正流用 国際・産学共同センター教授 国際・産学共同研究センターの教授が、文部科学省から交付された科学研究費補助金(科研費)のうち、本来は研究に携わった大学院生らに支払われるべき「謝金」を回収し、研究室にプールしていた疑いがあることがわかった。本学では内部調査委員会を設け、関係者から事情聴取を始めている。 この教授は、1999年度から2002年度にかけ、文部科学省から科研費約1億470万円を受け取った。この中には大学院生らに払われる謝金580万円も含まれていたが、教授はこの謝金を回収し、研究室の口座にプールしていた。また研究に携わっていない院生らに謝金を振り込ませ、回収していた疑いも持たれている。 科研費を巡っては、先月、医学系研究科の堤治教授が、院生に支払われた謝金を寄付させ教授名義の口座に移す不正流用を行ったとして、停職一カ月の懲戒処分を受けている。 ■空きビルが住居に 再利用システムの実験展示 生産技術研究所 野城 智也 教授ら 生産技術研究所の野城智也教授らは、建物の中身(インフィル)を動産化することにより空きビルを住居として再利用するシステムを考案し、その実験展示を行った。 今回展示されたのは、中央区にある空きビルの二階に、野城教授らが開発した取り付け取り外し可能なキッチンユニット、トイレユニット、バスユニットが取り付けられたもの。配管や配線などはビルが建設された時に決まっているものなので用途変更の上では問題となるが、これらは圧送ポンプを利用するなどして克服した。 このプロジェクトは、バブルの崩壊によって増えてきた利用価値のない空きビルに取り付け取り外し可能なトイレ、キッチンなどのユニットを取り入れることによって、空きビルの利用価値を高めることをねらいとしている。
国際・産学共同研究センターの教授が、文部科学省から交付された科学研究費補助金(科研費)のうち、本来は研究に携わった大学院生らに支払われるべき「謝金」を回収し、研究室にプールしていた疑いがあることがわかった。本学では内部調査委員会を設け、関係者から事情聴取を始めている。 この教授は、1999年度から2002年度にかけ、文部科学省から科研費約1億470万円を受け取った。この中には大学院生らに払われる謝金580万円も含まれていたが、教授はこの謝金を回収し、研究室の口座にプールしていた。また研究に携わっていない院生らに謝金を振り込ませ、回収していた疑いも持たれている。 科研費を巡っては、先月、医学系研究科の堤治教授が、院生に支払われた謝金を寄付させ教授名義の口座に移す不正流用を行ったとして、停職一カ月の懲戒処分を受けている。
■空きビルが住居に 再利用システムの実験展示 生産技術研究所 野城 智也 教授ら 生産技術研究所の野城智也教授らは、建物の中身(インフィル)を動産化することにより空きビルを住居として再利用するシステムを考案し、その実験展示を行った。 今回展示されたのは、中央区にある空きビルの二階に、野城教授らが開発した取り付け取り外し可能なキッチンユニット、トイレユニット、バスユニットが取り付けられたもの。配管や配線などはビルが建設された時に決まっているものなので用途変更の上では問題となるが、これらは圧送ポンプを利用するなどして克服した。 このプロジェクトは、バブルの崩壊によって増えてきた利用価値のない空きビルに取り付け取り外し可能なトイレ、キッチンなどのユニットを取り入れることによって、空きビルの利用価値を高めることをねらいとしている。
生産技術研究所の野城智也教授らは、建物の中身(インフィル)を動産化することにより空きビルを住居として再利用するシステムを考案し、その実験展示を行った。 今回展示されたのは、中央区にある空きビルの二階に、野城教授らが開発した取り付け取り外し可能なキッチンユニット、トイレユニット、バスユニットが取り付けられたもの。配管や配線などはビルが建設された時に決まっているものなので用途変更の上では問題となるが、これらは圧送ポンプを利用するなどして克服した。 このプロジェクトは、バブルの崩壊によって増えてきた利用価値のない空きビルに取り付け取り外し可能なトイレ、キッチンなどのユニットを取り入れることによって、空きビルの利用価値を高めることをねらいとしている。
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■国連・NGO特集
前国連広報担当事務次長 法眼 健作 氏