904号(2003年11月25日号)

1面主要記事

■新しい連携体制探る

  「北東アジアの国家・民俗・移動」シンポ開催
  国立民族学博物館

 国立民族学博物館地域企画交流センター主催、本学社会情報研究所共催の公開シンポジウム「北東アジアの国家・民俗・移動」が20日、本学安田講堂で開催された。本学社会情報研究所の姜尚中教授を始めとする7名の研究者が集い、コリアンネットワークをキーワードとして、パネルディスカッションが行われた。

 このシンポジウムは、北東アジア地域の将来の地域協力の展望を、人口移動とネットワークをキーワードとして、朝鮮半島とその近隣地域の歴史的かつ現実的な関係に焦点をあてて、探求することが目的。またこれまで国家という枠組みで分断されてきた北東アジア地域研究を、国家間の様々な連携やネットワークを通して見直すことも目的の一つとしている。
 最初に、国立民族学博物館地域研究企画交流センター長の押川文子教授が、北東アジア地域について、20世紀は分散と離散の歴史であったが、今新しいネットワークが必要であると今回のシンポジウムの趣旨を述べた。
 本学社会情報研究所の花田達郎所長の挨拶、金大中韓国前大統領からのメッセージがビデオで放映された後、姜尚中氏は、二十世紀の北東アジアは植民地と戦争の歴史だったことに触れ、そのことがこの地域の対話を分断してきた要因の一つであると語った。またこの歴史を清算しない限りこの緊張はとけないのではないかと語った。
 朝鮮半島の分断体制を克服するためには多国間の対話が必要であり、またそれは北東アジアが米国とどう向き合うのかという問題につながると述べた。
 また、地域企画交流センターの李愛俐娥外来研究員は、昨年のW杯で韓日が一体化して、ある程度お互いの文化を理解しようとする動きが見られたことに触れ、コリアンネットワークは民間が中心となって作るべきであると述べた。
 会場は、小雨の降る天気にもかかわらず、多くの聴衆が足を運び、熱いディスカッションの場となった。


■温もり感じる"皮膚"開発

  介護ロボ実現に期待
  生産技術研究所桜井教授ら

ロボット用電子人工皮膚
 本学生産技術研究所の桜井貴康教授らのグループは、有機トランジスタを利用して、ロボット用電子人工皮膚の開発に成功した。
 従来の電子人工皮膚は、基本的にシリコンで作られた集積回路で、これまでは柔軟に曲がる大面積のセンサーはできなかった。またコストが高く、進んだロボットでも数個程度のセンサーが指先などに埋め込まれているだけにすぎなかった。
 今回桜井教授らは、有機トランジスタと電気を通すゴムを組み合せ、柔軟に曲がる電子的な人工皮膚の開発に成功した。これはシリコンに比べて低コストであり、千点以上のセンサーを有する。
 開発者の一人である染谷隆夫助教授は、「この人工皮膚で、ロボットも人間のようにざらざら感やぬくもりなどを認識できるようになる」と述べている。今後、介護ロボットや家庭用ロボットなどの実現につながる可能性がある。


■「新粒子」を発見

  4個のクォークで構成
  理学系研究科相原教授ら

 本学大学院理学系研究科相原博昭教授らのグループや高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの国際共同研究グループは14日、基本粒子クォーク4個から構成される新粒子を発見したと発表した。
 物質中の原子核を構成する陽子や中性子は、さらに微小なクォークから構成されていると考えられている。これまでの研究ではクォークは必ず2個あるいは3個の組み合わせで存在するとされていた。
 相原教授らによると、新粒子はおよそヘリウム原子1個分の重さを持ち、生成後およそ1兆分の1秒の10億分の1ほどの極めて短い時間で他の粒子に崩壊した。
 相原教授らは重さなどから、新粒子はD中間子と呼ばれる粒子2個が分子のように結びついた状態とみている。中間子は、すべてクォーク2個でできており、新粒子は計四個のクォークで構成されていることになる。
 今回の実験は、クォークの性質を吟味する上で大きな手がかりとなった。


■「法学教育」を語る

  2氏迎え開催
  法科大学院開設記念講演

 法科大学院開設を記念した連続講演会「司法制度改革のゆくえ」の第2回が20日法文2号館31番教室で行われた。第2回目となる今回は「法曹養成と法学教育」という副題で、柳田幸男弁護士と京都大学大学院法学研究科田中成明教授がそれぞれ講演を行った。
 まず柳田幸男氏が「国際化時代の法学教育」と題して講演し、その後田中成明教授が「法科大学院時代の法学教育」と題して講演を行った。
 柳田幸男氏は講演の中で、国際化時代に必要な資質を備えた法曹になるためには、学部時代のリベラルアーツ教育で物事の本質を見抜く洞察力を身につけ、法科大学院ではそれを土台として、外国法や国際法の理解力を高めることや、外国の社会や文化などを学んでいくことが大切であると述べた。
 続いて田中成明教授は、目先の司法試験などにとらわれない教育体制が必要であり、そのために学部教育、法科大学院での教育といった教育全体の内容を検討していく必要があると指摘した。また、これから法科大学院に入学する人に対して、法科大学院の将来は自分たちにかかっているという使命感を持ち、どのように学び、学んだ内容をいかに生かしていくのかをよく吟味してほしいと述べた。


■第2回ホームカミングデイ開催

 構内や大学近辺の散策に加え、記念講演、運動会応援部のアトラクションなど、バラエティーに富む内容となった。
(2面に関連記事)



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