959号(2005年10月25日号)

1面主要記事

■「知」への理解深め学ぶ動機高めて

  1・2年生対象に特別講義
  第1回学術俯瞰講義開催

 第1回学術俯瞰講義が17日、本学大学院数理科学研究科大講義室で行われた。学術俯瞰講義は、小宮山宏総長の発案で今年度冬学期から創設された1、2年生向けの新しい講義。第1回は、「物質はどのように創られたのか」という題目で、小柴昌俊本学特別栄誉教授が講義を行った。

 初等・中等教育で、入試をにらんだ効率的な学習を経て本学に入学した学生は、ややもすると学問に対して狭い視野しか持てず、教養学部での勉学の意義を理解しないまま、漠然と学業に取り組む者も多いといわれる。
 「学術俯瞰講義」は、効率的な学習に慣れてきた1、2年生に「知」の大きな体系や構造を見せることで、学んでいる授業科目の意義や位置付けを理解させ、将来への展望を与えることで学びへの動機を高めることを目的としている。
 講義は他の講義課目と同様に一般には公開しないが、本学の教育事業を外部に発信することの重要性から、マスコミ取材等に応じることや、UT OCW(東京大学オープンコースウェア)などを利用して公開することを予定している。
 今年度冬学期講義は、「物質の科学―その起源から応用まで―」というテーマで、私たちの身のまわりのすべての現象・事柄の根源にある「物質」をキーワードとして、物質の起源を探る学問分野、物質の性質を明らかにする学問分野、物質を工学的に利用する学問分野をつないで、「物質の科学」を貫く学術の流れを解説する。小宮山総長ら4人の著名な教授が担当する。第1回は小柴教授、第2回から第5回までは、「物質の生い立ち―素粒子、原子、宇宙―」というテーマで、佐藤勝彦教授(本学大学院理学系研究科)、第6回から第9回までは、「物質の性質」というテーマで家泰弘教授(本学物性研究所)が講義を担当し、最後に第10回から第13回までを小宮山総長が、「物質を作り使う」という題目で講義する。
 開講時限は毎週月曜日6時限(18時〜19時30分)で、数理科学研究科大講義室と教養学部900番教室で開講。単位は2単位。


■新日石と連携開始

  知と技術の流動化目指し
  本学先端研

 本学先端科学技術研究センター(以下本学先端研)と新日本石油株式会社(以下新日本石油)は1日から、双方の総合力を生かした新しい形態の組織連携を開始した。
 本学先端研は、これまでの個別の共同研究を目的とした連携ではなく、「知と技術の流動化」や「研究能力の移転」を目的に、よりゆるやかな「トライアル連携」(※下欄注釈)を提案しており、今回の新日本石油との連携はその第一号となる。連携期間は1日から3年間。資金総額は1億円。
 本学先端研と新日本石油は、エネルギーと環境が調和した持続可能(サステナブル)社会の実現に寄与することを目指す。両者により設置するガバナンス委員会を中心に方針を審議し、講演会や研究室等の相互訪問、個別検討会などを行って共同研究のテーマを創出する。また、本学全学をはじめ、他大学・研究機関の研究・人材のネットワーク構築を図る。さらに、開発・実用化フェーズでは、新日本石油が他企業との共同研究を視野に入れ、従来の個別テーマの共同研究にはない、研究分野融合型の多様な連携を目指していくという。

◇         ◇

トライアル連携
 従来の特許が中心の産学連携とは異なり、トライアル連携は、研究パートナーやテーマの発掘を意図している。先端研の研究者と企業とのディスカッションを重視、提携先企業の状況を考慮しながら始める「ゆるやかな」連携。企業は先端研に希望する連携委託内容(研究テーマ発掘など)を伝え、それを受け、先端研と企業が共同で運営する「共同ガバナンス委員会」が設置される。ここで資金使途についてなども含めたディスカッションが行われ、トライアル連携の内容が決定される。


■神経幹細胞増殖「仕組み」を解明

  本学医科研と慶大

 本学医科学研究所の後藤典子助教授と慶応大学の岡野栄之教授らのグループが共同で、神経のもとになる「神経幹細胞」が増殖する仕組みを解明した。論文が米科学アカデミー紀要の電子版に近く掲載される。
 神経幹細胞は現状では少量しか確保できないが、今回の成果で効率よく増やせる可能性がある。事故などで脊髄が損傷した患者の治療法などにつながると期待される。


■本学の「大学説明会」 全国6ヶ所で順次開催

  少子化時代の学生減少に備え…

 本学の大学説明会が22日、名古屋市中村区の河合塾名古屋校で開かれた。本学が大学説明会を開くのは初めてで、少子化時代を迎え、全国6ヶ所で順番に開催している。
 説明会には、京都大学、名古屋大学、早稲田大学、慶応大学など11大学も参加。入試の選抜方法や授業内容などを説明する大学ごとのコーナーでは、順番待ちの列ができた。


■抗体タンパク質 新たに作成成功

  大学院講師ら

 本学大学院講師らの研究グループが、がん細胞化した白血球を除去する新しい抗体タンパク質を作成した。
 白血病のマウスを使った実験で効果を確認。急性リンパ性白血病などの治療に応用できる。


■農学部教授にいやがらせの手紙

  GMイネ栽培実験中止求め

 本学大学院農学生命科学研究科の西澤直子教授に、遺伝子組み換え(GM)イネの栽培実験中止を迫る嫌がらせのはがきが届いていることが分かった。
 西澤教授によると、内容や差し出し人名、さらに消印が同様のはがきが、先月中旬から研究室に何通も届いているという。西澤教授は実験対象のGMイネを隔離温室で育成し、今年から鳴子町で東北大学と共同研究している。



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