■環境整備・改善望む声多く
第54回学生生活実態調査
2005年(第54回)学生生活実態調査の結果が八日、公表された。この調査は本学学生生活実態調査委員が毎年行っているもので、今年は五年ぶりに対象者を大学院生として実施され、昨年同様、法人化前後での学生生活に対する影響についても調査された。今回の調査は、昨年11月下旬から12月下旬にかけて、研究科系統別無作為抽出法で、在籍者の4分の1を抽出した本学の大学院生2539人を対象に行われた。回答数は1031人(回収率40.6%)だった。
|
例年調査される、生活費や学生生活の満足度などに加え、特殊分析として人生観に対する調査も行われた。前回、大学院生を対象とした調査では、大学院重点化の弊害についての分析結果が出されていた。その問題点は、大学院定員の増加により、修了後の就職に過当競争が生じていることや、定員増に対して設備が旧来のままであるため、さまざまな不便が生じているなどだった。今回の調査結果で、就職の見通しは「かなり厳しい」、「見通しが立たない」が36%(前回34%)、研究室に専用または共用の机の有無は「どちらもない」が14%(前回12%)であり、法人化以後も大学院重点化の弊害は改善されないままであることが読みとれた。
また、興味深いこととして、「施設・設備の充実・整備が早急に必要と思うもの」との問いに、託児所の設置を望む回答が12%もあり、少子化に関する具体的課題として注目される。
また、家計を支える親らの年収は前回の5年前の調査と比べてややダウンした。独身の大学院生の場合、1999年の調査で家計の平均年収は993万円だったが、今回は915万円と78万円下がった。不況の影響や、女性を中心に東京以外の地方出身者の割合が高くなったのが影響しているのではないかと分析できる。
昨年同様、法人化後の影響についての質問項目がとりあげられた。その中で、「大学の法人化はあなたの研究環境にどのような影響を与えると思いますか」との問いに、「良い影響を与える」9.2%、「どちらとも言えない」42.4%、「悪い方向に影響を与える」20.1%という結果だった。「どちらとも言えない」が文科系(32.4%)と理科系(46.4%)で高い割合を示す一方、「悪い方向に
影響を与える」は文科系が28.8%、理科系は16.5%で、文科系は理科系に比べ割合が高くなっている。
■「福武ホール」建設へ
最先端のIT教育施設
情報学環 学際情報学府
本学大学院情報学環・学際情報学府は12日、ベネッセコーポレーション代表取締役兼CEOの福武聰一郎氏による16億5千万円の寄附に基づき、「情報学環・福武ホール」を2007年11月の竣工予定で建設すると発表した。2006年7月に着工し、翌年11月に竣工、08年4月から利用を始める予定。
これは本学創立130周年を記念する「東京大学基金」への寄附となり、国立大学法人化後初めて個人からの寄附で本学に建物が建設される。「情報学環・福武ホール」は、海外の大学と遠隔授業が行えるシアター型教室や、タブレット型PCを備えつけた協調学習用のスタジオ型教室などを設置する計画。
最先端のマルチメディア教育設備を備えた高度情報化社会における教育・文化・コミュニケーション研究の世界的な発信拠点として建設される。
ベネッセ・コーポレーションは2004年4月から本学大学院情報学環に「ベネッセ先端教育技術学講座(BEAT)」を寄附している。また本学の福武直名誉教授が福武会長の縁戚にあたるという縁もあり、教育や文化に貢献する活動の一環として寄附を決めたという。
またこのホールは、本学特別栄誉教授の安藤忠雄氏が本学で設計する初めての建築物であり、地上二階、地下二階、延べ床面積は3750平方メートルで、建物の半分以上を地下に埋めるなど、本郷キャンパスの景観や環境に配慮したものになっているという。
■4割が「圧力」経験
建築士対象にアンケート
本学大学院新領域創成科学研究科の神田順教授と構造設計会社シーエスの水野社長らは、建物の構造設計を担当する建築士を対象にアンケートを実施し、約4割が「不当な圧力を経験した」と回答したと発表した。
この調査は耐震強度偽装問題の発覚を受け、神田教授らが企画。アンケートは11月24日から、同社のメーリングリストを利用している構造設計者を対象に実施され、計212人が回答した。
その結果、「構造設計への不当な圧力」については、73人(60%)が「ない」と答えたが、45人(37%)が「ある」とした。構造設計に与えられる時間は、80人(66%)が「あまり十分ではない」と回答した。
■粉末吹きつけ人工骨作製
東大病院と理科研
本学医学部附属病院と理化学研究所などは14日、手術などで失われた骨と同じ形の人工骨を、コンピュータ断層撮影(CT)の画像の情報をもとに、骨の成分の粉末を吹き付けて作製する方法を開発したと発表した。
本学大学院農学生命科学研究科の佐々木伸雄教授らによると、インクジェット式プリンターのようにリン酸カルシウムの粉末が噴出、厚さ0.1ミリメートルの層を積み重ねる仕組みで人工骨を作る。
直径2ミリメートルの穴を備えているのが特徴で、移植後に骨髄や骨の破壊と再生を担う骨細胞が侵入し、本来の骨への置き換えを促す効果があるという。形や厚さを変えることもできる。
|