1094号(2010年10月25日号)

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ノーベル化学賞に根岸英一氏

  本学工学部出身者では初の快挙

 今年のノーベル化学賞に、本学OBの米パデュー大学特別教授、根岸英一氏が選ばれた。スウェーデン王立アカデミーが6日、発表した。業績は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」。

 根岸氏は1935年に満州で生まれ、53年に本学に入学。工学部応用化学科(現在の化学・生命系三学科)に進学し、58年に卒業した。本学工学部・工学系研究科出身者がノーベル賞を受賞するのは今回が初めてとなる。

 卒業後は帝人に入社したが、その後休職し、米ペンシルバニア大学に留学。同大学大学院で理学博士号を取得した。その後は日本の大学で研究を続けようとしたが職場が見つからず、66年に帝人を退職して米パデュー大学の研究員となり、後にノーベル化学賞受賞者となるハーバード・ブラウン教授に師事した。その後米シラキュース大学へ移って研究を続けるが、79年にブラウン教授の招きで再びパデュー大学に移籍し、現在、同教授の後任ポストに就いている。

 今回のノーベル化学賞は三人の共同受賞であり、根岸氏の他に、北海道大学名誉教授の鈴木章氏、米デラウェア大学名誉教授のリチャード・ヘック氏が受賞している。金属のパラジウムを用いて有機物同士を効率よく結合させる方法を確立したことが評価された。まずはヘック氏が、パラジウムを触媒にして有機化合物を合成する方法を開発。次いで根岸氏がこれを、異なる有機化合物の炭素同士をつなぎ合わせる「クロスカップリング反応」に応用した。この「根岸カップリング」を改良し、工業利用できるようにしたのが鈴木氏であった。こうした一連の研究により確立されたカップリング技術は、医薬品や液晶材料など、現在の化学工業を支えるものであるといえる。


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