木材のミクロ構造形成を解明
理・生物 福田教授ら
本学大学院理学系研究科生物科学専攻の福田裕穂教授、小田祥久特任研究員らのグループは18日、木のミクロ構造が作り出されるメカニズムを世界で初めて解明したと発表した。これによって木のミクロ構造を人為的に制御することが可能となり、木材の改良や新たな木質素材の開発に寄与すると期待されている。当研究成果は、米科学雑誌Current Biology誌オンライン版に同日掲載された。
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木材は人類にとって欠かせない素材であり、柔軟かつ丈夫であるという特性を持っている。木材は木質細胞が作り出す細胞壁が幾層にも積み重なって形成されているが、この細胞壁には無数の微小な孔が空いている。こうした細胞壁の複雑な構造が木材に丈夫で柔軟な性質をもたらしているのであるが、その形成メカニズムについてはこれまで明らかにされていなかった。
福田教授らのグループはがん細胞のように限りなく増殖するシロイヌナズナの培養細胞に、木質細胞の分化を制御する特殊な転写因子(遺伝子の発現を制御するタンパク質)を導入することで、木質細胞を好きなときに、好きなだけ作り出す技術を開発していた。この技術では入れる遺伝子を変えることにより違った細胞壁パターンの木質細胞を作ることができる。
同グループはこの技術を利用して、木質細胞で働く遺伝子群の働きを網羅的に調査。その結果、木質細胞の細胞壁パターンを作り出す上で必須となる遺伝子を発見し、MIDD1と名付けた。このMIDD1が生み出すMIDD1タンパク質の分布の違いで、細胞壁の構造パターンが変わるのだという。
あらゆる細胞には細胞膜と呼ばれる外膜が存在し、木質細胞においてはその周りを細胞壁が覆っている。細胞膜の下には微小管と呼ばれる繊維状の構造が発達しており、細胞壁主成分のセルロース微繊維はこれら微小管に沿って合成される。MIDD1はこの微小管に結合し、近辺の微小管を破壊する性質を持っている。この破壊された部分が、細胞壁形成時に孔となって現れるわけだ。
当研究は、MIDD1を人為的に操作することで、細胞壁のパターンを変化させ、木材のミクロ構造を変化させることができるということを示している。このことは今後の植物科学の発展に大きな影響を与えると共に、木材の新たな可能性を引き出すものとして注目されている。
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