「軽い星」の超新星を観測
星の進化理論を裏付け
広島大学宇宙科学センターの川端弘治准教授、本学数物連携宇宙研究機構の前田啓一特任助教、野本憲一特任教授・主任研究員、田中雅臣特任研究員らを中心とする研究グループは、超新星SN2005czを観測した結果、太陽の10倍程度の質量をもって生まれた星が爆発したものであることを突き止めた。この「軽さ」の星の超新星爆発が観測されたのは、世界で初めて。この発見で、現在の星の進化理論が大筋で正しいことが検証された。
星の進化理論によると、太陽のように自ら輝く星は、生まれたときの質量に応じてその生涯が決まってくる。太陽質量の8から10倍より重い星は、最終的に超新星爆発を起こして明るく光り輝くと考えられる。宇宙には軽い星ほど多く存在するため、超新星爆発を起こす星の中では、太陽の10倍程度の質量を持つものが最も多いことになる。
しかし、これまで観測された超新星はみな太陽の12倍以上の質量の星の爆発であり、10倍程度の質量の星の超新星爆発は同定されていなかった。もしこうした星が超新星爆発を起こさないとなると、星の進化理論だけでなく、それを前提に作られた多くの理論が修正を迫られることになる。
前田特任助教らの研究グループは、同グループの一員でありアマチュア天文家の板垣公一氏が発見した超新星SN2005czを、すばる望遠鏡などを用いて観測。結果、重い星の存在しない楕円銀河に現れたこと、通常の5分の1の明るさしかなかったことなど、従来の超新星とは異なる点を発見した。中でも決定的なのは、酸素からの放射が弱く、カルシウムからの放射が非常に強いということで、このことは軽い星の爆発の特徴として理論的に予測されていた。
こうした特徴から、超新星SN2005czは太陽質量の10倍程度の星の爆発であったことが示され、現在の理論の正しさを補強する発見となった。なお、この超新星は非常に暗く、かつ急激に減光しており、そのため同種の超新星がこれまで発見されなかったのではないかと考えられる。
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