859号(2002年5月5日号)

1面主要記事

■競争力強化へ提言

「動け! 日本」発足
工学部中核の新プロジェクト

 本学工学部を中核機関としたプロジェクト「動け!日本」(委員長・小宮山宏教授)が4月23日に発足した。このプロジェクトはマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授陣が提言し、米国経済再生につながったプロジェクト「メード・イン・アメリカ」の日本版と言えるもので、主に7分野について競争力強化につながる新たな産業構造を提言する。

 日本では90年代以降、景気の停滞や産業の空洞化といったいまだかつてない経済危機が続いている。このプロジェクトはこのような状況に対し、科学技術の産業化と取るべき施策の体系化を行い、また、成功している日本企業の要因・経営の秘訣を明らかにすることを目的として発足した。
 プロジェクトは、日本の科学技術をどのように新産業に結び付けられるか、またそれをどのように実現すべきかを研究する「緊急産官学プロジェクト」と、国内の成功事例を研究する「エクセレント・カンパニー・プロジェクト」の二つからなっている。前者は本学工学部と鞄倦蜻轟、を実施機関とし、経済界や学識経験者などからなるアドバイザーグループがサポートする体制をとり、後者は独立行政法人経済産業研究所が実施機関となる。
 プロジェクトの実施期間は平成14年度末までだが、当面は6月の経済財政諮問会議までに緊急報告をまとめ、経済活性化戦略の策定に指針を与える方針。その後は米国の「メード・イン・アメリカ」を作成したMITの関係者らを招き、討論する場を持つ予定で、一年以内に具体的な政策に発展させる。


■骨粗しょう症治療に道

マウス実験に成功
医学系研究科 谷口教授ら

 本学医学系研究科の谷口維紹教授、高柳広助手らの研究グループは、ウイルス性肝炎などの治療に使われているインターフェロンβが、骨粗しょう症や慢性関節リウマチなどの治療に有効であることを突き止めた。
 骨の中には、骨を作る骨芽細胞と、骨を破壊する破骨細胞があり、この両者がバランスよく働くことで徐々に新しい骨に入れ替わる。しかしホルモンの欠乏などで破骨細胞が異常に増えると、骨粗しょう症などの病気になる。
 谷口教授らは、破骨細胞が分化する機構をマウスを用いて研究した。その結果、インターフェロンβを体内で作る遺伝子が働かないようにしたマウスでは、破骨細胞が異常に増殖することがわかった。さらに骨粗しょう症のマウスにインターフェロンβを与えたところ、破骨細胞の増殖が抑えられ、病状が改善した。
 谷口教授は「マウス実験の成果であるため、人間への応用にはさらに試験が必要だが、骨の病気の新たな治療法につながる結果」だとしている。


■特許など大学帰属に

文科省方針 対価の一部は教官に

 文部科学省は、国立大学教官の研究成果として生まれた特許などの知的財産権を大学に帰属させる方針を固めた。現在は教官個人か国のどちらかに帰属させているが、2004年度までにこれを全面的に改める。
 これは大学教官個人では難しい特許の管理・運用や戦略的出願を大学が担うことで、研究成果を産業に結びつけやすくすることが狙いで、大学が企業などに知的財産権を譲渡するなどして得た対価の一部を教官に支払う規定も整える。同省の検討委員会が10日にまとめる報告書に盛り込む。
 特許の大学への帰属は米国では一般的な形態。大学が特許管理の専門組織を通じて有望な特許を出願する体制が整っており、これが米国の産業競争力を向上させる要因となっている。


■東京大学ユーティリティーカード試験運用開始

駒場で今年度から

 本学は今年度から駒場キャンパスなどで、全学共通のIDカードの試験運用を始めた。
 このIDカードは「ユーティリティカード」と呼ばれ、学生証や図書館入館証、保健手帳などの学内の諸カードを統一し、事務作業の効率化を図るために導入された。試用期間は2年で、今年度は駒場キャンパスの学生と本部庁舎に勤務する職員に配布され、来年度からは全学で導入される予定。生協のCUTEカードとの統合も予定されており、最終的には学内のすべてのサービスをこのカード一枚に一本化することを目指すという。



■他号1面主要記事

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  第842号(10月15日号)

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