■新プロジェクト発表
ロボット用い海底観測
海中工学研究センター
本学生産技術研究所海中工学研究センター(センター長浦環教授)は19日、記者会見を開き、海中ロボットを用いた海底観測計画の概要を発表した。研究は5カ年計画で、前半2年間で観測に用いるロボットの研究開発をし、後半3年間はマリアナ海盆などの熱水地帯において海底面や海底近傍の広域観測を行う予定だという。
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同研究センターでは1984年より自律型無人潜水機の研究開発に着手しており、1998年にはR1ロボットが連続12時間37分の潜航に成功、昨年度は手石海丘調査に成功し実用化段階に入っている。また琵琶湖の湖水環境調査やザトウクジラの追跡実験など、ロボットのさまざまな応用展開も行われている。同研究センターはこれらの成果を踏まえ、本年度から5カ年計画で、マリアナ海域などを観測できるロボットを開発し、それを用いて観測を行う「R2プロジェクト」をスタートさせた。
このプロジェクトでは、まず前半の2年間で自律型海中ロボットR1の後継機となるR2D4の設計、制作を行う。これまでに蓄積された技術とデータをもとに、ロボット自体は短期間で完成させる予定だという。R2D4には可能な限りR1の部品を流用する方針だが、R1からの改良点としては、漁船のような小さな船でも運べるよう小型軽量化するほか、電源を閉鎖式ディーゼルエンジンによる発電からリチウムイオンバッテリーに変更し、最大潜航深度は400mから4000mに強化する方針。またサイドスキャンソナーやインターフェロメトリソナーを搭載するほか、熱流量やpH、磁場や濁度を観測する機器も搭載する予定だ。
後半の3年間は、マリアナ海域海底からの二酸化炭素や熱の放出に関する観測、調査などを行う。全地球的な二酸化炭素や熱の循環を考える際に、海底面におけるそれらの出入りは、これまでデータがないために無視されてきたが、今回の観測により貴重な基礎データが得られる見通しだ。
この計画に対しては、日本学術振興会から5年間で4億円の研究費が投じられる。研究チームは工学系と理学系の合同で構成され、浦環教授がリーダーを務める。
■実利志向高まる
「教養書」よりも「勉学書」
学生生活実態調査
本学は2000年(第50回)学生生活実態調査の結果をまとめ、公表した。これは本学学生生活実態調査委員が毎年行っているもので、今回は学部学生を対象に、生活費や生活時間、読書、教科外学習などに関する調査が行われた。
今回の調査は昨年11月から12月にかけて、学部学生を対象に抽出率8分の1で行われ、回答数は1042(回収率54.4%)であった。
調査結果によると、勉学に費やす時間は、1日平均大学276.1分、自宅・図書館など98.8分、大学以外の教育機関122.0分であり、一昨年(1998年調査に比べ大学以外の教育機関での学習時間が大幅に増えていることがわかった。
また、教科外学習を行っている学生は全体の3割近くで、学んでいる内容としては「法律関係」18.1%、「外国語」14.0%、「音楽・美術」11.7%の順であった。教科外学習を始めた理由としては「資格取得のため」が20.6%であり、次いで「趣味を楽しむため」19.0%、「将来進みたい分野で役に立ちそうだから」14.6%だった。
本学入学までの学習については、学習塾・予備校に通っていた人は小学生時代59.2%、中学生時代49.3%、高校生時代63.1%、高校卒業後83.5%で、家庭教師についていた人に比べ圧倒的に多かった。また、小・中学生が学習塾で勉強することに対して「よい」または「やむを得ない」と答えた人が61.7%おり、大学受験のための勉強が人生にとって「意味がある」と考える人も全体の95.6%に上った。
今回は1989年(第39回)の調査以来、11年ぶりに読書に関する調査が行われた。これによると、2000年4月から12月にかけて読んだ本は平均78.2冊で、その内訳は「マンガ・コミック」が35.8冊と最も多く、次いで「勉学に直接必要な本」19.3冊、小説・文芸書16.8冊であり、教養書は12.0冊であった。1989年の調査ではマンガ・コミックに関する調査が行われていなかったためその分を差し引けば合計冊数に大きな変化はなかったが、個別に見れば「勉学に直接必要な本」は増加、代わりに「教養書」が減少しており、学生の実利志向がより顕著な形となって表れたと言える。
■本学関係者は3人
日本学士院新会員
日本学士院(長倉三郎院長)は12日の総会で、9人を新会員に選定した。これで同院(定員150人)の会員は133人となった。
本学の関係者では、3人の名誉教授が選ばれた。3人の新会員と主な業績は以下の通り(敬称略)。
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荒井 献(あらい・ささぐ) 原始キリスト教史。キリスト教成立当時に、正当とされた初期教団と、異端とされたグノーシス主義との関連を明らかにした。
吉田 民人(よしだ・たみと) 社会学。社会現象をさまざまな観点から分析することで人間の生活行動を解明し、戦後日本の社会学界を先導した。
村上 淳一(むらかみ・じゅんいち) ドイツ法。ドイツ近代法の成立と発展を研究し、日本のドイツ法研究の基礎を築いた。
■キャンパス情報
★生産技術研究所学術講演会「環境問題の視点からこれからの工学研究を考える」
▽日時 平成14年1月22日(火)13時00分〜17時20分
▽場所 生産技術研究所第1会議室(B棟7階)
▽講演
・安井至教授
「ライフサイクルアセスメントで測る持続可能性」
・岸利治助教授
「コンクリート資源の循環利用」
・加藤信介教授
「室内環境汚染」
・加藤千幸助教授
「流体騒音の予測と低減」
・石井勝教授
「LEMP―雷放電に伴う電磁界パルス」
▽問い合わせ 生産技術研究所庶務掛(内線56008、9)
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