■増倍管が多数破損
修復には1年以上の見通し
岐阜県神岡町 スーパーカミオカンデ
岐阜県神岡町にある本学宇宙線研究所の宇宙素粒子観測装置「スーパーカミオカンデ」で12日午前、ニュートリノの検出に使われる光電子増倍管が衝撃音とともに多数破損した。宇宙線研究所が被害確認を行ったところ、1万1千本余りの増倍管の過半数が壊れている可能性があり、修復を終え観測を再開するには1年以上かかる見通しだ。 |
スーパーカミオカンデは、神岡鉱山の地下約1,000mの深さにある直径39.3m、高さ41.4mの水槽で、内壁に11,146本の光電子増倍管を設置。150本のセンサーで作った輪を上下に51段積み重ねる要領で壁面を構成しており、水槽内にニュートリノが飛び込んだ際に発生する特有の青白い光を増倍管が検出する仕組みになっている。
宇宙線研究所では7月半ばから、観測精度を上げるために増倍管の交換を実施。事故が起きたのは再び水を満たしている途中だった。突然数秒間にわたる激しい衝撃音が発生し、職員が水中カメラで確認したところ、水につかった部分のうち上5段を除く大部分の増倍管が破損していた。さらに水槽内の水の水位が3時間に1cmの割合で下がっており、コンクリート製の水槽の壁面や底面に亀裂が入って水漏れしている可能性もあるという。被害総額は15億円を越える見通しだ。
事故を受け本学では、事故対策委員会などを設置。13日に記者会見を行った事故原因究明委員長の吉村太彦宇宙線研究所長は、「何らかの原因で衝撃波が起き、増倍管が連鎖的に割れたのではないか」との見方を示したが、衝撃波が起きた原因は不明だという。
スーパーカミオカンデは、ニュートリノの質量観測に成功するなど世界的に高い評価を得ており、遠山敦子文部科学相も「研究成果を世界中が注目している中でのこのような事故は誠に残念」と述べ、原因究明とともに観測が速やかに再開できるよう指示した。また、観測体制立て直しのための財政支援に応じる姿勢を示した。
■柏キャンパス公開
小学生でも楽しめる企画多数
本学柏キャンパスの一般公開が2、3日に行われた。今回は、物性研究所、宇宙線研究所、新領域創成科学研究科が公開された。
物性研究所では、昨年ノーベル化学賞を受賞した白川英樹氏(筑波大学名誉教授)の特別講演をはじめ、小学生から理工系大学生まで楽しめる多様な企画が催されていた。新領域創成科学研究科では、フロンティアサイエンス(FS)フォーラム=u生き物はすごい!―先端生命科学から見た生物―」と題した講演会や研究関連展示「生き物は面白い!―先端生命科学に触れよう―」が催された。見学後は、アンケートや質問コーナーが設けられるなど、それぞれの研究所で見学者の意見を集めていた。
3日の土曜日は、雨が降りしきる中だったが、予定の時間を超えて多くの人が見学に訪れ、展示物などに見入っていた。
■情報革命後の世界予測
本学俯瞰工学研究プロジェクト主催 俯瞰工学シンポジウム
本学俯瞰工学研究プロジェクト主催のシンポジウム「情報革命の先にある世界―企業・社会・政治の新パラダイム―」が8日、午後1時より本郷キャンパス法文2号館31号教室で行われた。
学問の専門化、細分化が進む中、工学部では専門領域間の関係を構築する「工学知の構造化」を重要な課題として掲げている。俯瞰工学研究プロジェクトは、その一環として、企業や社会、政治など技術以外の観点から、細分化された工学を横断的、総合的に捉えることで工学領域間の関係を明らかにしようとする試みである。
シンポジウムの冒頭で挨拶に立った小宮山宏工学部長は、20世紀後半に専門分野の深化と細分化が急速に行われてきたことに言及。この細分化は必要なものであったとしながらも、そのために工学の全体像が把握できなくなり、将来の見通しを立てることが難しくなったと指摘した。同学部長はその上で「今後は専門分野の研究とともに、工学各分野の関係にとどまらず、他の分野、産業との関係を再構築していく必要がある」と俯瞰工学研究プロジェクトの意義を述べた。
その後、マサチューセッツ工科大学メディアラボのウォルター・ベンダー所長が、メディアラボで現在行われている研究内容や今後の見通しなどについて講演を行い、続いて玄場公規助教授が俯瞰工学プロジェクトの必要性や研究内容についての紹介を行った。(3面に関連記事)
休憩をはさんで、「情報革命の先にある世界」と題したパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションは松島克守教授の司会で進められ、情報革命の後に企業や政治がどうなるかについて議論が交わされた。情報革命後の企業についてトランス・コスモス鰍フ曽山明彦氏は「消費者のニーズを的確に捉え、商品に付加価値を付けられる企業が生き残る」との見通しを示したのに対し、藤末健三助教授は「21世紀はNPO(非営利組織)が発展するだろう」との考えを述べた。「そのような社会はいつ頃訪れるのか」という会場からの質問に対して、松島教授は携帯電話の普及を例に挙げながら短期間で人の生活は変わると答えたのに対し、曽山氏は「人や組織の体質が抜本的に変化するには10年近くかかるだろう」との見解を示した。
会場には学内のみならず企業関係者など約200人が集まり、活発な議論に耳を傾けていた。
■キャンパス情報
★史料編纂所史料集発刊百周年記念特別展「時を超えて語るもの―史料と美術の名宝―」
▽会期 12月11日(火)〜1月27日(日)
▽休館日 月曜日(12月24日と1月14日を除く)、12月25日〜1月3日、1月15日
▽開館時間 午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
▽観覧料 一般1000円、高校・大学生600円、小・中学生300円
▽主催 史料編纂所、東京国立博物館
▽展示内容
第一部…史料・美術展示
第二部…東京大学史料編纂所のあゆみ
第三部…歴史学のデジタル・ミュージアム
■駒場祭まもなく開催
第52回駒場祭が23日(金)から25日(日)にかけて、本学駒場キャンパスで開催される。今回のテーマは「喝」。
今回は特別企画として、「今すぐ始める『地球のために』―野口健×川口順子対談―」と平田オリザ氏講演会の二つが企画されている。(4面に関連記事)
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