853号(2002年2月25日号)

1面主要記事

■芸術と科学が融合

芸術と科学の共通点探る
「アート+テクノロジ+ブレイン」シンポ開催

 芸術と科学の出会いが生み出す創造性を探るシンポジウム「アート+テクノロジ+ブレイン」が10日、本学安田講堂で開かれた。養老孟司・北里大教授ほか多彩な分野の専門家が、科学を芸術でどう表現するか、脳は音声や画像をどう認識するかなどを討論した。続いて、音楽の核心をどう捉えるべきかを聴衆らに体感してもらうため、古典曲から現代曲までが、読売日本交響楽団によって演奏された。

 最初に、コンピューターグラフィックス(CG)作家として世界的に知られる河口洋一郎本学大学院情報学環教授が多彩な模様が音楽とともに揺らめき変化するCGをステージ上の大スクリーンに映し出し、「技術が生み出す芸術が本物の生物以上になることを目指す」という自身の思想を体現した。
 これを受けて「芸術と科学の絡み合い」をテーマに、第一部の討論が行われた。「芸術、技術の双方における創造性の共通点を探ってみたい」という司会の松島克守本学工学部教授の問いかけに、養老孟司教授は、「レオナルド・ダ・ビンチは人体を解剖した」というエピソードをあげ、ルネサンス時代には芸術のために人体構造を解明することが前提で、芸術と科学は、ある意味で一体だったと指摘した。また視覚心理学を専攻する佐藤隆夫人文社会系研究科教授は、モノを見る時に脳がどう働いているのかという観点から、芸術論を展開した。日本音響学会の副会長で、音声情報処理学を専門とする東倉洋一NTT先端技術総合研究所長は、聴覚と脳の仕組みを、実験を交えながら紹介し、「音は脳で作られ、目で音を聞くこともある」と解説した。旧郵政省でマルチメディア政策に携わった中村伊知哉MITメディアラボ客員教授は、「デジタルやインターネットの力は、産業革命というよりルネサンス。我々の価値観や美意識をも塗り替える」と語り、インターネットが生み出す新たな芸術の可能性を展望した。中村教授は、「インターネットは情報ハイウエーとも言われるが、『道』というよりは、いろんな人が自分の考えを主張し、参加できる『広場』である点に意味がある」と強調。そうした新しい表現やコミュニケーションを支えるのは「今の子供たち以降の世代」であるとし、メディアと子供に関する研究所の設立をメディアラボが現在計画していることを明らかにした。
 解説付きのコンサートとなった第二部「音楽とテクノロジのアラベスク」では、長木誠司総合文化研究科助教授を案内役に、音楽と科学、技術の出会いを、読売日本交響楽団による演奏で、聴衆が実体験した。
 開演前から行列ができ、会場の安田講堂は立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。


■医療ミスで患者死亡

 気管に栄養チューブ挿管

 本学医学部附属病院は20日、胃に入れるべき栄養チューブを誤って気管に挿管し栄養剤を注入したため、患者が肺炎などを起こして死亡する医療ミスがあったことを明らかにした。
 患者は50歳代の男性で、がんの治療のため昨年10月に入院した。12月末に男性が食べ物をうまく飲み下せなくなったために鼻から栄養チューブを入れる方法で栄養剤を胃に直接投与することになり、医師と研修医が挿管作業を行った。この際医師らは、聴診器で胃までチューブが到達したことを確認したという。
 しかし、間もなく患者が栄養剤をもどし、呼吸困難を訴えるなどしたため、内視鏡で調べたところ、栄養チューブが気管内に入っていたことがわかった。その後、患者の容体は悪化し、肺炎や敗血症などを発症、12日に死亡したという。
 病院側は挿入ミスが発覚した直後、家族に説明し謝罪したという。また患者の死後、調査委員会を設置して、事故原因を究明する一方で、本富士暑に届け出、司法解剖を依頼している。


■平成14年度前期入試

 文三は足切りなし

 平成14年度本学入学試験(前期日程)の第一段階選抜の結果が12日に発表された。その結果、志願者9375人に対し、第一段階選抜に合格したのは8534人で、足切りを受けたのは841人だった。また文科三類は、第一段階選抜の予告倍率を越えなかったため、足切りは行われなかった。第一段階選抜合格者は25日から27日(27日は理科三類のみ)に行われる二次試験に臨むことになる。
 合格者の科類別成績は、最高点としては理科三類の771点が最も高く、最低点としては事実上第一段階選抜が行われなかった文科三類の185点が最も低かった。また平均点は文科一類と文科三類が昨年に比べ約20点低かったほかは、ほぼ昨年同様だった。


■「スーパーカミオカンデ」10月に観測再開
 本学宇宙線研究所の観測施設「スーパーカミオカンデ」の光電子増倍管破損事故を調査していた事故原因等究明委員会は、増倍管をアクリル製ケースで覆うなどの再発防止策を講じた上で10月に観測を再開することを決めた。

■小児がんへの遺伝子治療を事実上承認
 本学医科学研究所附属病院が計画している小児がんの一種である神経芽種に対する遺伝子治療の臨床実験について、厚生労働省と文部科学省の合同の審査会は、試験計画に明らかな問題はないとして事実上承認した。

■「テント村」の学生らに立ち退きの警告
 本学教養学部は6日、キャンパスプラザ前の広場の「テント村」で生活している学生らに対し、24日までに自主的に退去し、原状回復することを命ずる警告を告示した。学生らがこの警告に従わない場合には広場に置かれているすべての物品を撤去し、状況によっては法的措置の発動もあり得るとしている。

■堺屋太一氏、先端研客員教授に
 本学は、元経済企画庁長官で作家の堺屋太一氏が4月1日付で先端科学技術研究センター客員教授に就任すると発表した。任期は1年で、「知価社会論」をテーマに週1回、教養学部で講義を行う。



■他号1面主要記事

 第861号(5月25日号)
 第860号(5月15日号)
 第859号(5月5日号)
 第853号(2月25日号)
 第852号(2月5日号)
 第851号(1月25日号)
 第850号(1月15日号)
 第849号(12月25日号)
 第848号(12月15日号)
 第847号(12月5日号)
 第846号(11月25日号)
 第845号(11月15日号)
 第844号(11月5日号)
 第843号(10月25日号)
 第842号(10月15日号)
 第841号(10月5日号)
 第840号(9月15日号)
 第839号(9月5日号)
 第838号(8月25日号)
 第837号(8月5日号)
 第836号(7月15日号)
 第835号(7月5日号)
 第834号(6月25日号)
 第833号(6月15日号)
 第832号(5月25日号)
 第831号(5月15日号)
 第830号(5月5日号)
 第829号(4月25日号)
 第828号(4月15日号)


■特集記事link

 学部長メッセージ

 研究所紹介

 知の肖像

 淡青手帳

 Soccer新世紀

 東京六大学野球


■編集部企画

 こころの教育

 今、純潔がトレンディー

 東大野球部DUGOUT

 東大OBの偉人伝


■主 張

 世界的・長期的な意識を
  第850号(1月15日号)

 東大の誇りを持ち行動を
  第849号(12月25日号)

 共同で「開かれたアジア」を
  第842号(10月15日号)

 大学改革に活発な議論を
  第836号(7月15日号)

 新入生へのアドバイス
  第828号(4月15日号)

 年頭所感
  第821号(1月15日号)


■Best Selection

2001 冬のリゾート案内

2001 夏のリゾート案内


■国連・NGO特集

前国連広報担当事務次長
 法眼 健作 氏